第51話 リタ
「マルクっ!」
「きゃああああああああああっ!?」
リタに襲われ、悲鳴を上げるマルク。
「――そこまでよ」
その時、リタの首をつまんで止めに入ったのはカーミラだった。
「な、なに!? 邪魔しないでほしいなっ!」
マルクから引き離されたリタは、カーミラに抗議する。
「だめよ、マルクちゃんのおち●ち●はアタシが先に予約してるの」
「してませんッ!」
「いきなり何を言い出すのですかこの破廉恥サキュバスッ! 反省なさいッ!」
マルクとクラリスから一斉に批判されたカーミラは、咳ばらいをした後続けた。
「…………とにかく、こんな大勢の前でマルクちゃんを襲おうだなんて、許されるワケがないでしょう? 少し落ち着いたらどうかしら」
「はぁ……はぁ……確かに、ボク少しだけ暴走してたかも……!」
カーミラに諭され、リタはしょんぼりとする。
「あなた、噂通りの<狂犬>っぷりね」
「えっ……!? ボクのことを知ってるの?」
自身の通り名を言い当てられ、驚いた様子のリタ。
「まあ……悪名は聞いているわ。なんでも、今まで所属したパーティが全部崩壊しただとか……なんとか」
「ぼ、ボクは悪くないもん! ただ、どこのパーティもクズみたいな奴しか居なかったから、怒って抜けただけ!」
「つまり単純に運が悪くて、今まで良いパーティに巡り会えなかったということかしら?」
「そういうこと。……でも、もういいんだ。だってマルクに出会えたから!」
そう言いながら、リタはマルクに熱い視線を送った。
「そうだったんですか。知りませんでした」
「マルクを追放したエルネスト達もぼこぼこにしたよ!」
「…………僕の周りにまともな人はいないんでしょうか……?」
リタの言葉に対して、ぼそりと呟くマルク。
「そんなことない! ライムちゃんがいる!」
「……そうですね、ライムは比較的まともでした」
「ライムちゃん……もしかしてバカにされてる……?」
マルクの言葉に違和感を覚えたライムは、不服そうな表情をした。
「わ、ワタクシもいますよマルクさん?!」
「あなた、アタシと一緒にマルクちゃんのお風呂に突撃したじゃない。同罪よ」
「なんと?! おお、神よ! 愚かなワタクシをお許しください……!」
「こんな時ばっかり頼られて、神様も大変ね」
カーミラは、クラリスをからかいクスクスと笑う。
「安心してください、クラリスさん。みんなまともじゃないけど、僕はすごく感謝してますから!」
「うぅ……まともじゃないとは思われていたんですねぇ……っ」
マルクの何気ない一言にとどめをさされ、クラリスは撃沈した。
「あの……マルク……? ボクのこと、放置しないで……?」
「リタお姉ちゃんは少し反省してください。……いくらあれが、リタお姉ちゃんの住んでいた村の挨拶だからって、いきなりされたらびっくりしちゃいます!」
「あぁ……うん、ごめんね……」
気まずそうに目を逸らしながら、リタは謝る。
――実際のところ、リタの生まれ育った村にそのような風習は存在しない。それは、リタが勇者パーティに所属していた時代に、マルクを合法的に舐め回すためについた嘘である。
「その……他の人が見てない時とかは……してもいいですから……」
「う、うん…………」
マルクの配慮に、リタは内心罪悪感で一杯だった。
「……えっとそれで、どうしてリタお姉ちゃんが居るんですか? 今日は他の人と…………エルネストさん達と一緒じゃないみたいですけど……」
マルクは、少しためらいながらその名前を口に出して問いかける。
「そ、それはね、ボクが勇者パーティを抜けたからだよ!」
「え……? 抜けちゃったんですか? どうして?」
「当然だよ! マルクがいない勇者パーティなんて、クズの集まりだし、いる意味ないもん!」
「そ、そんな言い方したら流石に可哀想です……! 確かに、ゴルドムさんは最低でしたけど……」
「可哀想なのはマルクだよ……。ごめんね、ボクがもっと早くあいつらのクズさに気づいてれば……!」
リタは、マルクのことを抱きしめた。
「リタお姉ちゃん……」
少し懐かしい感じがして、マルクの気持ちが安らいでいく。
「マルクが大変ってことは……噂で聞いてた。でも、どこに居るのかも分からないし、どうしたらいいのかも分からなかったから、ずっとギルドで待ってたんだ。ルドガー――キミの、師匠と一緒に」
「え……? 師匠がこの町に来てるんですか?」
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