第23話 勇者パーティの崩壊 その7
「「「ガルルオオオオオオオオオォォ!」」」
ケルベロスの吠え声が、ダンジョン内に響き渡る。
「クソッ! 結局こうなるのかよッ!」
「いやぁぁぁ!」
転移魔法によって飛ばされたエルネスト、シリル、エイラの三人は、不運にも再びケルベロスと遭遇してしまい、追いかけまわされていた。
「ここが何階層なのかもわからない……おまけに、このまま逃げ続けていたら行き止まりに突き当たるかもしれない。なるほど、かなり
「お、おいリーダー、なんとかならねーのかよぉ!?」
「少しは自分で考えたらどうだ? 思考しなければ、人間の脳は腐っていくぞ?」
「そんなわけねーだろ!」
「……まったく、これだから向上心のない愚か者は困る。ただ文句を言いながら待っていれば、天から解決策が降りてくるとでも思っているのか?」
「なんだと……ッ!」
追い詰められ、不穏な空気が漂い始める三人。
「やめなさいよ! 意識高いこと言ってる場合じゃないでしょ!」
「……意識高い……だと……?」
ただでさえ硬いエルネストの表情が、さらにこわばる。
「そうよ! 御託はいいから早くなんとかしなさいよぉ! このままじゃ私たち全員あいつに食べられちゃうわよッ!」
「――――わかった、ではプランBで行く」
「ぷらん……びー……?」
エルネストは、シリルとエイラの方へ交互に目配せした後言った。
「――囮になれ、シリル、エイラ。その間に俺はやつから逃げる。俺の命を大事にしつつ、貴様らはガンガン行け」
「は……? 本気かよリーダー……?」
「あんた、それ正気で言ってんの?」
他人を顧みないエルネストの指示に、異議を申し立てるシリルとエイラ。
「さすがにそれは人としてどうかと思うぜ……?」
「そ、そうよ! ふざけたこと言ってる場合じゃないでしょ!」
二人に避難されるエルネスト。その顔つきが、段々と険しくなっていく。
「貴様らと……」
「え? 何か言ったかよリーダー?」
次の瞬間、エルネストはいつになく大きな声で叫んだ。
「貴様らと俺では人間としての価値がはるかに違うんだよおおおおおおおおおおッ!」
「な、なによ急に」
「ただの冒険者である貴様らの代わりはいくらでもいるが、勇者である俺の変わりはいないッ! 不満ばかりで何一つ解決できない無能の分際で人間扱いされると思うな! 己惚れるのも大概にしろクソ野郎どもがあああああああああああああああああああああああッ!」
「う、うわ……」「マジかよ……」
「いいかよく聞け! 脳みその詰まっていない女に、下半身に脳みそが付いてるマザーファッカーッ! 俺は貴様らのようなゴミどもが遊び惚けていた時も当然のように努力していた! 努力すらまともにできず、俺がいなければ結果一つ残せないような能無しどもが一丁前に不満だけ垂れるなあああああああああああッ!」
「「「ガルルオオオオオオオオオォォ!」」」
エルネストとケルベロスの咆哮が共鳴する。
「そこまで言わなくてよくない……? ゴルドムみたいになってるわよ」
「……なんてゆーか、今までごめんなリーダー(笑)」
「貴様らのその適当な態度が気にくわないと言ってるんだああああッ! つべこべ言わずに俺のために死ねえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!」
――刹那、シリルの突き出した槍がエルネストの右腕に突き刺さった。
「ぐふぅっ! どういうつもりだ貴様あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!」
「…………悪いなリーダー。これ以上あんたのたわ言には付き合ってられねーぜ!」
シリルは、手に持った槍をくるくると回し構え直した後、続ける。
「囮になるのはあんたの方だ」
「そ、そうよ! やっちゃってシリル!」
「おうよ! くらええええええええええええええええええ!」
前方を走るエルネストへ、速度を上げて突撃するシリル。
エルネストは即座に剣を引き抜き地面へ突き刺した。
「サンダーボルトォッ!」
そして呪文を唱え、電撃を剣から地面へ流す。
「きゃあっ!」「ぐおぉっ!」
走っている時に足が痺れたせいで、勢い余って地面へ倒れ込むシリルとエイラ。
「そんな……うそっ……! 動けないっ……!」
「てめぇ……そんな技を……ッ!」
「――プランB、成功だ。お前達の尊い犠牲は無駄にしないぞ」
エルネストはそう言い残し、走り去る。
「待ちやがれクソがあああああああ!!!!!!」
「いやだっ! 死にたくない死にたくない死にたくないッ!」
「「「ガルルオオオオオオオオオォォ!」」」
動けなくなった二人の背後で、ケルベロスの鳴き声が響く。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!」
「ぐわああああああああああああああああああああああああ!」
こうして、シリルとエイラはケルベロスに食われて死んだ。
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