第22話 勇者パーティの崩壊 その6

「F**k! こんな時に……ッ!」


 ゴルドムは、ケルベロスに向かって武器を構える。


「な、ナイスタイミング!」

「テメェはどっちの味方なんだF**king B**ch!」

「それは当然私に酷いことしないほ――ぐっ!??」


 調子に乗るあまり周りが見えていなかったルドガーは、ケルベロスに薙ぎ払われ壁に叩きつけられた。


「ごふぅっ!?」


 血へどを吐いて地面に倒れ込むルドガー。


「ガッハッハ! ざまあ見ろMotherf**ker!」


 ゴルドムは、その醜態を嘲笑う。


「……こっ、ここには敵しかいないのか!」

「that's right!」

「大丈夫ルドガー?!」


 リタはボロボロになったルドガーに慌てて駆け寄った。


「リタ……私の味方は……君だけのようだよ……!」


 ルドガーは目を潤ませながら、リタに差し出された手を硬く握る。


「そんなに優しくされたら……す「バカなこと言ってないで早く逃げないと!」


 リタはルドガーのことを助け起こしながらそう言った。


「退却だ! アズスーンアズポッシブル可及的速やかにッ!」

「Sh*t!」

「一度下の階層へ降りてやり過ごすぞ!」


 エルネストの呼びかけに応じ、皆が部屋にある階段へ向かって走る。


 こうして一行は、ケルベロスから逃げるために十一階層へ続く階段を降り始めたのだった。


 階段は螺旋状になっていて、かなり下の方まで続いている。


「はぁ……はぁ……あいつは……どうなったのよっ!?」


 しばらくして、一番体力のないエイラが息を切らしながらそう問いかけた。


「……ちっ、まだ追ってきてるみたいだぜ!」


 それに対して一瞬だけ背後を振り返ってケルベロスの姿を確認し、そう答えるシリル。


「もういやぁっ!」

「マルクが居れば、私の魔力が一瞬で回復してあんな奴イチコロだったんだけどね☆」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! あのガキを追い出したことなら謝るから、なんとかしなさいよぉっ!」

「今さら謝ってももう遅い! マルクはここに居ないんだから助けてくれないよ☆ せいぜい泣き喚くがいい、やーいやーい☆」


 ルドガーは、自分の置かれた状況を棚に上げて、走りながらエイラのことをからかう。


「Shut up !!!! F**k yourself!!!!!!!!」

「ごめんなさい反省してます」


 しかし、ゴルドムに凄まれて高速で謝罪すると、少し大人しくなった。


「おいリーダー! 下にはまだつかねーのか? このままじゃ追いつかれちまうぜ」

「ああ、まだずっと先まで階段が続いている」


 しばらく逃げ続けていたが一向に十一階層へ辿り着けず、勇者パーティは絶体絶命の状況に追い込まれる。


 その時、ルドガーはふと階段の内側の壁に文字が刻まれていることに気づいた。


「これは……ルーン文字……?」


 ルーン文字とは、かつて魔法を発動するために使用されていたとされる、古代文明の文字である。


 ルドガーは好奇心から、手を伸ばしてそれに触れたその時、突如としていくつもの魔法陣が螺旋階段の内部に展開され始めた。


「今度は何が起こったの……!?」

「もう……次から次へと……いい加減にしなさいよぉ……!


 突然のことに困惑するパーティメンバー達。


「――しまった! これは罠だ! 階段自体が転移魔法を発動させる巨大な装置になっていたんだよ!」


 唐突に、そのことに気づいたルドガーが皆へ向けてそう叫んだ。しかし、一度発動してしまった魔法は、もうどうすることもできない。


「うわああああああああああ!」

「きゃああああああああああ!」

「ぐおおおおおおおおおおお!」

「やめてくれえええええええ!」


 こうして、勇者パーティは転移魔法によって全員ばらばらの場所に飛ばされてしまったのだった。



「……おい、起きろ」

「う……ん……?」


 それからしばらく経って、ルドガーが目を覚ますと、そこにはゴルドムの顔があった。


「………………あ」

「Good morning! どうやら俺たちはダンジョンの小部屋に飛ばされたらしいぜ」

「私と……君の二人っきりで……?」

「そう、俺のことを川に突き落としやがったお前と二人っきりだ。ほら、笑えよ、ガッハッハ!」

「は、ははは……」


 引きつった笑いを浮かべるルドガー。


「そそそ、そんなことより、私はどうして縄で縛られて――」


 次の瞬間、ゴルドムの拳が彼女の頬を掠めた。


「ひぃっ……!」

「お前が縛り付けられてる理由について、何も心当たりはねぇのか?」

「さ、ささささあ? ぜんぜんわからないなー」


 再び、ゴルドムの拳がルドガーの頬を掠めた。


「い、今のは少しちびった……☆」

「覚悟しやがれ……! テメェの(自主規制)ぴー(自主規制)ぴー増やしてF**kしてやるよこの(自主規制)ぴーがッ!」

「そ、それは流石に引く……ドン引きだよ……そんなことしちゃだめだよ…………暴力反対……☆」


 しかし、何を言ってもゴルドムの顔つきが恐ろしいことになっていくだけだった。


「F**k!!!!!!!」

「お、おたすけぇ……」

「F**k you!!!!!!!!!!!!」

「それ……シャレになってないよ……」

「 F**k yourself!!!!!!!!!!!!!!!!」

「ふえぇぇ……だれかたしゅけてぇ……!」

 

 はたして、ルドガーの運命やいかに。

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