第19話 読モな美少女とのデート(一ヶ月ぶり二度目)

 メイとレモンのデート第二弾……もとい、イメチェンの為の修行が始まった。


 場所は前回行ったショッピングモールとは違って、近所で一番栄えている駅の周辺にあるショップ街だ。

 いわば陽キャ御用達のオシャレストリートである。


 今日は梅雨の貴重な晴れの休日、絶好のデート日和だ。高校生から社会人まで幅広い年齢層のカップルが、それぞれのパートナーと仲良く手を組みながら、イチャイチャと通りを歩いている。



「やっぱり場違いじゃないかな、俺って……」

「そんなことないよ!! ほら、私たちも腕、組も?」


 陰キャ代表、コミュニケーション大嫌い高校生のメイ。

 彼の隣りで歩いているのは勿論、前回のデートで今日着ているファッションをコーディネートしてくれたレモンだ。


 積極的にくっつこうとしているレモンとは対照的に、未だに女子との接し方で戸惑っているメイは口をヒクつかせながら素直に左腕を差し出した。



 本当は別に好きな人が居るメイだが、今回もデートの修行ということでレモンを彼女に見立てさせてもらっている。


 ちなみにメイ本人は、どうして他人であるレモンがこんな自分に協力してくれているのか分かっていない。


 そもそもレモンはファッション雑誌の読者モデルや役者のタマゴをやっていたりと、学校でも指折りのアイドルなのだ。そんな勝ち組の頂点を行く彼女が、ダサい自分なんかと歩いていていいのだろうか。


 今もメイの腕に胸をギュウギュウと押し付けて、嬉しそうにはにかんでいるレモンの顔を見て首をかしげていた。



 その理由は簡単なモノだ。

 本人は自覚はしていないが、メイは生まれて初めてのモテ期が来ていた。ただそれだけなのである。


 これだけ聞いたら周囲の男子から反感が来そうだが、これには理由がある。

 一途な彼にとっては本命に好かれないのは不本意かもしれないが、この世界の神がチートを授けたことに加えて元々の隠させていたスペックが開花した。


 それによって、彼の周囲に居た美少女たちがメイのことを気になり始めたのだ。



 人気というのは怖いもので、誰かが「○○ってイイよね~」というと、それが伝染する。メイに好意を寄せる人物は、クラスのみならず学年や学校全体に広がりつつあった。



 いや、もともと彼のことが大好きだった存在も居たには居たのだ。

 そして、その人物は今も彼のすぐ側に居た。



「ああっ、レモンちゃん!! おっぱいを押し付けるのは狡いんじゃないかなぁ!? くっ、今すぐにでもあの腕を外しに行きたい……!!」



 ――言わずもがな、メイの幼馴染であるアカネである。

 物心がついて十年近く経つが、未だに彼に告白出来ないでいるヘタレ女子が彼女だ。



 周りから見たら学年でトップクラスの美少女なのに、メイを好きになってしまったばかりにロクな男性経験を得られず、ここまで拗らせ続けてしまっている可哀想な存在である。


 つい先日も能力の実験と称してベッドに押し倒すも不発に(?)終わった彼女は、想い人が友達とデートするというのが気になった故に、こうしてコソコソと二人をストーキングしていた。



 血涙を流しそうな勢いで物陰からブツブツと呪詛じゅそを吐いているアカネ。


 そんな怪しさマックスな彼女に、背後から近寄る人物が居た。



「……なにしてるの、アカネさん」

「ひうっ!? ……ミ、ミカちゃん!? び、びっくりしたぁ~」

「……やっほ。たまたま知ってる顔を見掛けたから、声掛けてみた」

「偶然……って。何でミカちゃんはここに!?」


 悪戯成功とばかりに口角だけ上げて、ダブルピースをしている背の小さな女の子。

 彼女は相変わらずぬぼ~っと眠そうな表情をしているミカだった。



 大人しい彼女は意外にもこのオシャレフィルターに掛けられそうなこの通りにいても恥ずかしくないようなファッションをしていた。

 ミカも系統は違えど、アカネやレモンに負けず劣らずの美少女だ。



「家に居るとムラムラしちゃうから……外出てきた」

「え……あぁ、そうなんだ……」


 実家がラブホテルを経営しているミカは、エッチなことに興味があり過ぎてメイに相談し、MAYクラブに入部した経緯がある子だ。

 ちょっと他の人とは感性がおかし……変わっているが、良い子ではある。


 取り敢えずミカがここに居ることに関してはこれ以上触れるのは止めておくことにしたアカネは……


「ねぇ、ミカちゃん! 今日! これから時間ある!?」


 目の前の暇人をストーキングに巻き込むことを企み始めていた。


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