第3話 えちえち女教師の誘惑。
ゴールデンウイーク明けの眠たい授業から解放された生徒たちは、級友たちと昼食を摂りながら何気ない日常の会話に花を咲かせている。
しかし2年B組の教室の隅っこに、楽しそうなクラスメイトたちの輪に入ることができない男子生徒がいた。
窓から入り込む暖かな春の風を浴びながら、自分の机に頭を伏せてスヤスヤと気持ち良さそうに惰眠を貪っている。クラス替えがあったとはいえ、五月に入ったこの頃に独りでいるなんて――もはやボッチ街道をまっしぐらである。
「むにゃ……また育成失敗したぁ……」
とはいえ彼――
なぜならメイにとって学校とは、徹夜でゲームするために睡眠をとる場所程度にしか思っていないからだ。
彼はこの国立
別に誰かにイジメられている、というわけでもない。……のだが、メイもクラスメイトも、お互い積極的に接触しようとすることも無かったのである。
だがそれも例の法案がニュッポンにて施行された今日――5月9日に限っては、少々違っていたようだ。
今もムニャムニャと夢の中でもゲームしている彼の背後から、ニタァと不気味な笑みを浮かべた人影が近付いていたのである。
「ヘイ!! そこの少年っ!!」
「……んにゅ? ふわぁ~。なに……? もう授業、始まるの……?」
気持ち良く寝ていたのに、テンションの高い女性に突然声を掛けられて起こされてしまった。
寝痕がついたままの顔を机からむくりと上げるメイ。
「なんだ、まだお昼休みじゃんか。誰だよ、もう……」
寝ぼけ眼をゴシゴシと擦りながら、メイは若干不機嫌そうに声のした方を振り向く。
するとそこには、
――ビシッとノリのついた汚れひとつない白衣。
――インテリそうなメガネにバッチリとしたキレイ系メイク。
いかにもデキる女といったオーラを放つ女性が、ニッコリとした笑顔をメイに向けて立っていたのである。
彼女はメイの不機嫌な様子なぞ微塵も気にしていない様子で、それを見た彼の方が逆に戸惑ってしまっている。
「んふふふ……君は噂通りのピュアボーイだな。いいね、実にいいよ」
「ふぁっあ!? な、なんですか急に!?」
寝起きで涎のついたままの顔を見ると、彼女は笑みをさらに深める。
そして真っ赤な
「ちょっとね……キミにはだぁいじなお願いがあるんだぁ」
「お、お願い……ですか?」
さらには追撃だとばかりに、ルージュと同じ赤いジェルネイルのマニキュアが塗られた爪で、メイの白いワイシャツをツツゥーと引っ掻くようになぞられた。
それは返事の為に出てきた言葉が、ビブラートのように震えてしまったほどだ。
普段からアカネ以外の女子と接しないし、近寄られもしないメイ。
つまり女性に対する免疫なんて、
それなのに
ノーガードだった脳を耳と鼻から犯され、身体の弱点まで把握されてしまったせいで、メイの精神状態は既にもう崩壊する寸前だ。
――それなのに、この女性はトドメとなる言葉をメイに叩き込んだ。
「キミに、私たちと……メイクラブして欲しいんだっ!」
「はぁっ!? ゴフッ、ゴホゴホッ!! め、
そう、この女性、将門 極――生徒からは親しみを込めてキワミちゃんと呼ばれている――はこの2年B組の担任教師であり、齢20という若さで海外の有名大学を卒業した天才なのである。
今年の新学期から赴任してきたとは思えないほどに、すでに多くの生徒や教員たちから信頼されている。とてもじゃないが、あの淫猥な発言をその口から出てきたとは到底思えない。
……巨大な双丘を強調されたニットに、下着が見えてしまいそうなミニスカートを着ているせいで、思春期真っ只中の少年たちにとって目の毒過ぎる気がしないでもないが。
「まぁまぁ、いいからいいから。とにかく……今から私と一緒に来てくれ!!」
「えっ、ちょおっ!? まって、待ってってば!!」
その細腕のどこにそんな力があるのか?
キワミがメイの腕をガシッと掴むと、そのまま教室からグイグイと引っ張って行ってしまった。
途中から二人のやり取りを見ていたクラスメイトも、突然のことに口を開けてポカーンとしている。
というより、エリートで美人の女性教師が男子生徒を性行為に誘って何処かへと消えたのだ。ビックリしない方がおかしい。
否、ある者だけはいち早く硬直から抜け出し、二人を追って教室から飛び出していった。
「メイが……私のメイなのに……私の、わたしの、ワタシノ……」
「ちょっと、アカネっ!? どこ行くのッ!?」
大事なひとを救うため、走り出すアカネ。
何かが起きてしまってからでは遅いのだ。
せめて、最初は――。
こうしてとある部屋へと連れ込まれていったメイ。
彼の初めてを自分以外で散らせてなるものかと、鼻息荒く突入するアカネ。
そこで彼女が見た光景とは――!?
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