第5話 花荒らしと命の危機
さて、ギルドから数分程度歩き、目的地に着いた。
"フラワーショップふわっふわ"、いい名前だ。
「ごめん、遅れたわ」
レオンも少し遅れてやってくる……背中にパンパンの革袋を背負って。
カランカラン
木製のノスタルジックなドアを押し開け、中へと入る。
色とりどりの花が私たちを出迎える。
しかし、少し数が少ない……荒らされて少なくなっているのだろうか。
「依頼で来ましたー!すいませーん」
店の奥に向かって声を掛ける。
しばらくするとひょろりとした体格の猫背の男が現れる。
「あぁ、どうも。どうぞ……こちらへ」
男は暗い顔をしており、眼の下には隈もできている。
思ってた以上に深刻なのかもしれないな。
私たちは男の案内で会計カウンターの奥の座敷に通される。居住スペースらしい。
既に座布団が用意されており、座るよう促される。
「えっと……お水で大丈夫ですか?」
「あっいえ、すぐに向かうので大丈夫です!」
「あ、そうですか」
男は取りに行こうとするのをやめ、私たちと机を介して反対側に座る。
「それで、詳しい依頼内容を教えてくれないか?」
「あ、あと出来れば荒らしている生物についても教えてほしいです」
「つい先月からでしょうか、羊のような生物が一匹だけ、うちの花畑に来ることに味を占めたようで」
「羊?」
なんだ、羊なら簡単じゃん。
「羊は羊といっても家畜のような羊ではないのです。野生で、狂暴で、大きくて」
「いつもは少し離れた草原にいるのですが、時々こっちに来ては私が育てた花をほとんど食べてしまうのです」
「追い払おうとして妻はその生物の毛皮に跳ね返されて転倒、骨を折って今治療を受けています。お願いします、今経営が赤字で火の車なんです」
他人の話とはいえ、つらいな。冒険者はみんなこういうことも依頼人から聞いているのかな。
「承知しました、羊のような生物を退治します!」
「つらかったなおっちゃん。今度花買いに来るよ」
「うぅ、ありがとうございます!」
涙ながらに笑みを浮かべるおじさんは私たちのことが見えなくなるまで見送ってくれた。
気合を入れなきゃ。この人の人生も私たちにかかっているんだ。
__
____
「とりあえず花を見に来たけど……」
「こりゃひどいな」
踏みつぶされたり、ちぎられたり、歯形がついていたりと、もしこれが人間だったらとんでもない凄惨な事件レベルの荒らされ方をしている。
「足跡的にやっぱり向こうの草原の方からきているみたいだね」
向こうの草原、名前はヌアリ草原。雄大な自然を楽しめる冒険者御用達の休憩スポット。勿論、冒険者以外から見ると脅威となる生物が多くの生息しているので近寄りがたい場所だ。
「とりあえず草原に行こう」
「相手に見つかっていきなり戦うのは不利だ。隠れていこう」
「じゃあイノーが先陣を切って偵察に行ってもらおう。イノー、近くに羊みたいなやつがいたら地面の草を食べて知らせて」
イノーはやる気に満ちた顔で勢いよく飛び出していった。
「私たちは後ろから隠れながらついていこう」
ズササ ズササ ズズ ピチョン
「え?」
背後から水音がする。どこかでこの音聞いたことある気が――
「ヒカリ!スライムがいる!ヒカリの後ろだ!」
レオンの声が聞こえたかと思ったら突如として世界が青くなる。
顔面がスライムに包まれたようだ。
息が苦しい。水の中にいるみたいだ。
「ガボガボガガボ」
ダメだ、喋らない方がいい。
なんでかわからないけどテイムができない、唱えていないからか?対象と自分が被っているからか?そんなことを考えている暇はない。
レオンのプランテーションは……顔に木を生やすわけにもいかない。
どうすればいい?私はなすすべもなく死んでしまうのか?
◇◇
◇◇◇◇
「ヒカリ!ヒカリ!!」
くそ、どうすればいいんだ。
眼前でヒカリの顔面に青い物体が張り付いていた。
スライムは主成分が水だからか、掴むことはできない。
何かスライムを何とかして引っぺがすことのできるものはないだろうか。
ん?水?そうだ――
引っぺがすんじゃなくて、拭き取ればいいのか!
「おいヒカリ!これ使え!タオルだ!」
やっぱり持ってきておいて正解だった。
◇◇
◇◇◇◇
ゴシゴシ
「プハーやっと息ができる!」
レオンの差し出したタオルで顔を拭くと、青かった視界は元の色彩へと戻った。
こういう時、レオンは頼りになる。いてくれてよかった。
顔を拭いたタオルからぷくりと水の塊、スライムが顔を出す。
何かするわけではなく、ただこちらを見つめている。
こう見たら可愛いんだけどなぁ。
「なぁヒカリ、そいつテイムしないのか?」
「あっ忘れてた【テイム】……そして【フェロー】」
/////
〔名付けをしてください〕
種類︰ブルースライム
特技︰顔はりつき・潜伏
心︰2%
/////
「よし、この子の名前はプルブルちゃんで。プルプルしてるから」
「相変わらず安直だな」
仲間にすると愛着わくなぁ。よろしくね!プルブルちゃん。
「なぁヒカリ」
青ざめたような顔でレオンが呼んでくる。
何かあったんだろうか。
「どうしたの?」
「忘れてたけどさ、イノー……草食べてないか?」
「え?」
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