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「世の中って変わるんだよなぁ」

 今日は両親が仕事の用事で家におらず、わたしは近所に住む大学生の兄ちゃんの家に遊びに来ていた。

 わたしの両親は共働きで、しかもふたりして深夜に家を空けることの多い職種で働いている。そして、ふたりが家を空けるときは昔からこうして兄ちゃんの家にお泊まりしているのだ。

 兄ちゃんの家で夕飯を頂き、今は兄ちゃんの部屋で一緒にテレビで動画配信サイトの動画を見ていた。

「どしたのいきなり?」

「いやな、今って当たり前のようにテレビで動画とか見れるじゃんか。でも10年前とかはそもそもLANケーブルの差し込み口なんてなかったし、変わったよなぁって」

 ああ、確かに。子供の頃はテレビで動画なんて見てなかったもんなぁ。

「昔はブラウン管にカセットテープだったもんねぇ。ビデオデッキの中でテープが絡まって上手く出てこなかったり……懐かしいなぁ」

「お前はその世代じゃないよなぁ!? っていうか俺だってカセットテープなんて使ったことねぇよ!」

 はっ! なぜかわたしより10歳ぐらい年上の思考が振ってきた!?

 わたしは女子高生だからカセットテープなんて知らないなぁ!

「まあ、それは置いとくとしてもさ、じゃあ10年後はどうなってるんだろうなって思うわけよ」

 なるほど、10年後。

 今はネットに繋がったわけだけど、10年後のテレビはどんなことができるようになっているのだろうか。

 うーん、テレビになってほしいこと……。そうだ!

「合体する!」

「どうしてそうなった!?」

「え、合体して欲しくない? 実践での成功確率ほぼ0%っていう状況で合体ボタン押したくない?」

「どこのロボットだよ。合体してどうなるんだ?」

「画面が大きくなる。32型のテレビが5枚合体して70型ぐらいのテレビになるとか」

 もうわたしの頭の中には、5枚のテレビの各フレームが開口し、1枚のテレビを中心に残り4枚のテレビと接合し、繋がった瞬間に接合部からは希望の光が漏れ出る合体シーンが鮮明に思い浮かんでいる。

 そう、いわゆる変身バンクというやつである。

 そして、最後にテレビの上部からは今まで存在していたリーダーの顔を覆うように新たな顔が出現するのだ!

「元々テレビに顔なんてないからな!? あと5枚って切り悪いだろ! 絶対4枚の方が合体しやすいだろ!?」

「兄ちゃんバカなの!? 合体と言ったら5枚は必須でしょうが!?」

「ま、まあ……確かに……」

 兄ちゃんの同意も得られたことだし、これは商品化待ったなしだろう。

 ああ、十年後のテレビが楽しみだなぁ。

 わたしは未来のテレビに思いを馳せながら、ニコニコとロボットの合体シーン集という動画を見始めるのだった。

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