女子高生ゆうか(仮)の嘘日記
四葉くらめ
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『嘘日記を書くといいよ』
そういったアドバイスをくれたのは小学校の先生だったか、それとも近所の少し年上のお兄さんだったか、それはもう覚えていない。ただ、小説はどうやったら書けるようになるのかというわたしの問いに、優しい声色でこのように返してくれたことは覚えている。
そんな幼き子供の頃に教えてもらったことをどうして今ごろ実践しようとしているのかと言われるともちろんきちんとした理由はあるのだが、それを喋るのは面倒だし、ここには書き記さないことにする。
まあ、そもそも嘘日記の中でどれだけ真実っぽいことを言ったとしても、それが本当である保証なんてないんだけどね。
とはいえ、せっかく誰にも見せない秘した日記帳という媒体ではなく、誰でも見ることができるWebという媒体で書いているのだし、わたしのちょっとしたプロフィールぐらいは書いておいた方が読む方としても少しは面白みのあるものになるだろう。
わたしの名前は――そうだなぁ、とりあえず『ゆうか(仮)』とでも名乗るとする。いちおう女子高生というくくりに入る立場ではあるが、自分がそんなきゃぴきゃぴした生物であるかと言われると頭をぶんぶんを振らなければならなくなる。JKとかもってのほか。うん、無理。
顔は地味。髪もぼさぼさ。もし、わたしの人生が美少女漫画で、わたしがその主人公だったりしたのであれば、なんらかの拍子にきゃぴきゃぴ系のクラスメイトにコーディネイトしてもらう機会が訪れて、『これがわたし……?』とか言うことになるのは確実、というぐらいには地味な風貌をしている。
別に容姿が酷いということは(少なくともわたしの美的感覚的には)ないので服装や髪型、化粧、姿勢等もろもろに変革を起こせば美少女とまではいかないまでも、あるていど見られるレベルにはなると思うのだが、別に見られたいとかないし、っていうか寧ろ見られたくない……。
なんか嘘日記でこんなに地味な少女を謳っていると本当のわたしが実は超絶美少女だと誤解されてしまうような気がするので、とりあえずわたしのプロフィールについはこの辺りでいったん切り上げておく。あんまり長々と書いても今日あったことを書く気が失せるし。
今日、今日……。今日ってなにあったっけか。なんかぼーっとしてたら貴重な日曜日が終わったような気が? いやいや、もちろんそんなことはない。確かに現実の誰かはもしかしてひょっとするとそんな生産性もなければ幸福感も少ない一日を送っていたかもしれないが、それはあくまで誰かであり、この紙面における『ゆうか(仮)』ではない。えーっと、『ゆうか(仮)』は何をやっていたのかなー? 嘘日記とか書いたことがないからパッと嘘が思いつかないよ? わたし結構正直者なんじゃないの?
えーっと、今日は、うん! 世界を救った! 異世界に転生してなんか凄い能力を神様から授かったり、悪役令嬢になったり仲間に裏切られたり、いろいろあったけど、なんやかんやあってすべて丸く収まって先ほど帰ってきたところである。
……嘘日記、思った以上に難しいな。嘘とかそんなぽんぽん思いつかないんだけど?
しかもそんなこんなしてるうちに結構な時間になっちゃってるし……。
ああ、もう! いいや!
今日はこれでおしまい! 今日は異世界を救った! 以上!
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