3、ノンフィクション(5)
テントの残骸と共に、DVDの破片がたくさん落ちているのに気付いた。聞くと安藤は今日僕の家に寄ったらしい。母親が偶然帰っていたらしく部屋で待っていたのだが僕の机の鍵を勝手に開けてDVDを鑑賞、当時の自分の姿を見て、あまりの恥ずかしさに自分が預かってやろうと勝手に持ち出したらしい。そしてなかなか帰ってこない僕に異変を感じ、今の今までずっと探していたというのだ。
『青春の残滓』は燃えてなくなった。そして過去に撮ったDVDも割れてなくなってしまった。過去に僕がしたことは全部消えてなくなってしまった。なんだか清々しかった。青春に惨めったらしくしがみついてついていたのは、誰よりも僕だったのかもしれない。それがなくなった今、僕の胸につっかえていたものは全てなくなっていた。
僕と安藤は暗い夜道を並んで歩いた。
僕はこうして生きている。安藤と一緒に。
こうしてまた、この世界を歩いている。
「なぁ、安藤」
僕は決意した。一度そうしようとして失敗した。だからずっとそうできないでいた。でもやっぱりそうしたかった。今しかない、やるなら。変わるなら。
僕が変わるのは今しかない。
「なんだよ」
「あのさ、俺……ちょっと頑張ってみるわ」
「……は?」
安藤は鼻で笑っていた。
「俺ってなんだよ、マジでダサいな」
「いいだろ別に」
「もう昔の俺は死んだから」
「生きてんじゃん、死にそうだったけど」
「いいや死んだから。もう昔の俺はいないから。僕……俺は変わるんだ」
ふわりと風が吹いた。空を見上げると、何かの燃えカスが宙を舞っていた。
「そうかよ、わかった。昔の清嶋は死んだ。それでいいな」
次の日、僕は髪を金色に染めて体育祭に出場した。が、早朝直ぐに校長に呼び出しを食らって、こっぴどく怒られたのは言うまでもない。でも、言ってやったんだ。僕に怒鳴りつける校長に向かって。
僕は大きな声でこう言った。
「うるせぇな、もういいだろ」
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