最強の壁と聞いて手に入れたバリアは、誰も他寄れない(頼れない)コミュ障ツールでした

りゅう

第1話 転生

 俺は普通の高校生だった。少なくとも自分ではそう思っていた。普通に起きて、普通に寝て、普通に学校に行っての高校生。なのに。


「どうしてこんなことになってんるんだよーーー!!!」


☆☆☆


「おーい、守! 聞いたか、あの話!」


 俺は佐野守。17歳の普通の高校生だ。そしてこいつは宮崎攻太。この攻を使った名前は珍しいと思う。多分。


「あの話って何?」


「あれだよ、事故で亡くなった人が突然消えたって話! あれ絶対異世界転生だろ!」


「そんな話、まだ信じてるのか? お前ってほんと、子供だよな! お前もそう思うだろ、清水?」


「うん、わたしもそう思う。攻太は、ほんとに子供」


 清水の本名は、清水梨花という。普段は静かであまり自分から喋ることはないが、今のように話題を振るとしっかりと返してくれる。


「いーや! これは絶対異世界転生だって!」


 攻太はまだ言っている。自論をまくしたてる攻太を横目に俺は教室を出た。


「にしても、異世界転生ねえ」


 もちろん興味はある。アニメやラノベは好きだし、転生系の作品も数多く見てきた。だが同時に、そんなものは存在しないとも思っていた。そもそも異世界なんてないと思っている。あいつは多分、現実と二次元の境を間違えた哀れな奴なんだろう。あとで弔っておこう。


「はあ、信号また赤かよ…ツイてないな」


 これで4つ連続赤信号である。学校でてから全部の信号に引っかかって、既にだいぶ時間を取られている。クソ、今日は俺の誕生日だから早く帰りたいのに。


「ふう、ようやく青信号に変わった、早く帰ろっと」


 早く帰ることしか考えてなかった俺は、信号が変わっても突っ込んでくるトラックに気が付けなかった。


 衝撃。骨が何本もきしみ、折れる音が聞こえる。吹っ飛ばされ、体のあちこちが地面にぶつかる。多分血も出ているのだろう、体が軽くなっていく感覚すらする。周りの人が騒ぎ立て、サイレンの音もどこか聞こえてきたような気がしたが、意識が闇に落ちていく。


「だめだ…これ…死んだ」


 俺は最後にそんな言葉を遺して。攻太の言ったことが本当なら…そう思って。


☆☆☆


 死んだ、はずだった。


「おや、気が付きましたね。随分と早かったですね、ほかの同じケースの人と比べて半分もたってないですよ」


 誰だか知らない女が目の前にいる。俺が今いる空間も、真っ白で現実味はない。


「そうですね、簡潔に言います。佐野守さん、あなたは下校中にトラックにひかれて死にました。それであなたは今、異世界に青年として転生する直前の状態です」


 え?今、なんて?転生?


「そうです、転生です。あなたは今から、異世界で17歳の青年として暮らすことになります。でも突然異世界に送られても混乱することでしょうから、あなたに1つだけ特別な能力を授けましょう。何がいいですか?」


 そっか、俺は、死んで。それで異世界に行くのにあたり1つ特別な能力を。


 これは勝ったのではなかろうか!なんでも好きな能力を貰えるんでしょ?何を取ろうかな、すべてをなぎ倒す圧倒的な怪力?誰もが惚れるような完璧な剣術?大魔導士並みの魔法?どうせ異世界転生するならできるだけチート能力が欲しい。


 ふと、トラックにひかれたことを思い出した。圧倒的な質量、強い衝撃、激しい痛み。正直もうトラウマのようになっている痛みだ、異世界ならもしかしたらそれ相当の攻撃を受けることになるかもしれない。もう痛い思いはしたくない。


「じゃあ、攻撃を絶対通さない鉄壁のバリアが欲しいです」


「わかりました」


 女は俺の願いを聞くと、何やらぶつぶつと唱え始める。周りに何かもやができて、次第に俺のほうにももやが出始めた。


 そして詠唱が終わると、何か体のつくりが変わったような、そんな不思議な感覚がした。


「終わりましたよ、それでは異世界に転送します。今度は寿命を全うできるよう、頑張って生きてくださいね」


 なんだろう、なんだか女神さまのように見えてきた。これは生きる生きれる気がする!


 そして光が俺を包み意識がぷつんと切れるその直前、


「あ、その能力最初とっても苦労すると思うのでせいぜい頑張ってくださいね(笑)」


 やっぱさっきのなしで。


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新作です!

これから不定期で、フラグ回収屋と並行で書いていきたいと思うのでこれからも読んでいただけると幸いです。


次回から異世界での生活が始まります!

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