不器用な彼
私達の<よろずや>は、実は
これは、私達が
何しろ
もっとも、それさえ、ロボットがいれば十分に代わりができてしまう程度の能力なので、どうしても必要な人材というわけでもないんですよね。
だからもしかすると、こういう、人間としては特異な能力をもってしまった彼を管理下に置いて制御するために敢えて軍に引き入れたのかもしれないとも思えます。
まあそれはいいとして、伍長は食べたらすぐにまた横になって寝てしまったので、私は少佐と一緒にゆっくりとお茶にしました。
今日はお客も来なかったので、のんびりと。
「ビアンカは、ここでの生活は慣れたかい?」
穏やかな表情で少佐が問い掛けてくれます。
「はい。私は心身共に良好です。だって、少佐と一緒にいられますから。少佐と一緒なら、どこだって私にとっては天国です♡」
それが私の正直な気持ちでした。少佐と一緒でなかったら、もし、伍長と二人きりだったら、私はきっと、一人で別のところに行っていたでしょう。
私も軍人の端くれですから生きるだけなら一人でも生きていけると思います。でも、ここで一人で生きていくのは、とても虚しかったかもしれません。
獣人達は親切にしてくれたとしても、彼らは決して少佐ではありませんから……
『少佐と一緒なら、どこだって私にとっては天国です♡』
私のその言葉に、少佐も、少し照れくさそうに微笑みながら、
「ありがとう。そう言ってくれると僕も励みになるよ」
って。
もっとも、私の本音としては、そんな言葉より、
『愛してる』
の一言が欲しいんですけどね。
<データヒューマン>として前の世界にいた時に、
『あの朴念仁をとっとと観念させなさい! 見てて歯痒いったらありゃしない!!』
『私達はあんたの味方だからね!』
『なんでお前ら結婚しないんだ? バカじゃないのか?』
などと皆に言ってもらえるくらい、私と少佐の関係は近いものになっていたはずですから。
だけど改めてここに来たことで、少佐は自分の責任として私や伍長のことを守らなければと思ってくれてるみたいです。
『もう軍人じゃない』と言っていた少佐自身が誰よりも軍人としての責任感に縛られているんです。
でも、私は、そういう不器用な彼のことが好きなんですよね。
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