ミジンコの誇り

広瀬

第1話 日常

キーンコーンカーンコーン



「「さようならーー!!」」



いつものチャイム、いつもの挨拶、いつもの学校終わりだ。


一日って早くね……


毎日この時間になると、航はそう思う。


クラスの皆が鞄をしょい始め、教室から出ていく。一人で帰るもの、複数人で帰るもの、様々だ。


「おーい、航!今日映画行かね?」

放課後はいつも行動を航と友にする駿が声をかけた。


映画かー。最近公開された恋愛映画、見たいけど見るなら一人がいいなー


なんて航が頭の中で考えていると、


「宮間航さーん、放課後の面接宮間さんからスタートだからね!」


担任の先生が帰りの準備でざわついている教室で声を大きめにして、言った。


「はい。」


「そういうことだから駿。今回はパスで」


はいはいと落ち込み気味の駿は一人で教室を出ていった。


あいつ、俺と映画が見なかったら帰って何すんだろうなー、


あの映画一人で見たいから面談っていう言い訳ができてラッキーか。


って面談だ!!!


航は面談のことをすっかり忘れていた。不安が段々と顔に滲み出て来る。



――「大学志望ね、将来の夢とかはあるの?」


「と、特にありません。」

航の顔に汗が浮かび上がる。将来の夢がないことは恥ずかしいことではない。が、少なくともこの面談では、恥ずかしい。


「大学で学びたいことは決めておいた方がいいわよ。部活も終わったんだから、じっくり考えてみるのがいいんじゃない?」


担任の先生が気持ち悪いくらい優しく航に問いかけた。


「はい……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ミジンコの誇り 広瀬 @haruking1211

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ