第117話 戦え、カツヨリ

 カツヨリはグーリーの両耳を見て考えている。そして、考えた末


「四天王って前に聞いたのがギーリーで、あなたがグーリー。で、死んだ仲間のドワーフがゴーリーなんだけど残りの2人はガーリーとゲーリーなんて事はないよね?」


 グーリーはずっこけた。


「オホン。最初の質問がそれとは本当にカツヨリという名前の者はムカつく奴しかいないのだな。ゴーリーという者はしらんが、四天王はガーリー、ギーリー、グーリー、ゲーリーの4人だ。私の耳を見ていたようだから教えてやる。私は元エルフだよ。エルフだって死ねばアンデッドになる事もある。今はそうだな、エルダーエルフリッチというところか」


 エルダーエルフリッチ。なんか強そうだぞ。しかしガギグゲゴとは芸の無い名前だな。ゴーリーが続いたのが偶然とは思えないけどもう死んじゃったしな。さて、どう戦うかだけどダンジョンコアからエネルギー供給されてたら絶対に黒の領域は途切れない、てことは負けるじゃんね。どうしましょう?悩んでいるとリコは空気を読まない、いや多分読めない。いきなり突っかける。


「ホーリーアロー乱れ撃ち」


 得意の聖なる矢の連射だ。ところがグーリーの手前で矢はかき消されてしまう。領域以外に結界のようなバリアーがあるようだ。それを見たムサシがならばと身体能力強化を使い加速して斬りかかる。やはり手前で剣が弾かれる。君達、少しは頭を使いたまえよ。


「ムサシ、下がれ。リコ、この部屋なら大丈夫だ。炎を思いっきりぶつけてやれ」


「エクスファイヤーストームの魔力練ったバージョン」


 リコの火系上級魔法が炸裂した。物凄い炎の竜巻がグーリーを襲う。さらに、


「ウィンドカッター乱れ撃ち」


 リリィとの合体魔法を一人で実現するリコ。まさしく天才である。竜巻の中にウィンドカッターが巻き込まれて加速される。カツヨリは魔法の行く末をじっくりと見ている。竜巻はバリアーと激突し静電気ではないだろうが稲妻が飛びかう。そこに加速された炎を浴びたウィンドカッターが続けて襲いさらにバチバチいっているがバリアーを破れなかったようだ。凄い威力の魔法だったがグーリーのバリアーが勝った。


「なあるほどね。俺のピンポイントバリアのでかい版か。でかいだけに穴もあるってか」


 カツヨリはムサシにアイコンタクトしてからバリアーが一番ダメージを受けた箇所に新技をぶちかました。


「奥義、神滅打突」


 要は突きである。剣の先端に魔力を集中して切る事よりも貫く事に重点をおいた力技だ。スキル加速、身体能力強化を使い最大限の力を込めた一撃がバリアーの弱くなったところに炸裂した。


 バリアーは消滅した。それをみたムサシは連撃を喰らわせるがグーリーにダメージを与えられない。攻撃がすり抜けてしまうのだ。


「奇怪な。霊体か?」


 ムサシはいくら斬っても手応えがないので一度退いた。すかさずリコの聖魔法がグーリーを攻撃する。


「ホーリービーム!」


 聖魔法も身体を突き抜けてしまう。カツヨリはそれを見て居合に構える。


「奥義 神滅閃」


 前世で神をも斬った見えない物を斬る究極奥義だ。剣はグーリーの首を刎ねた。首は空中に浮かんだまま3人を見ている。


「話の途中ではなかったのか。せっかちな奴らだ。全くカツヨリという奴は落ち着きがない」


 3人はさっきのキングスケルトンの時に首だけで動くアンデッドには免疫があったので驚く事は無かったが、気持ちが悪いのには変わりはない。


「すまない。仲間が暴走した、ちなみに暴走したのはこいつらで俺、カツヨリではないのでそこんとこよろしく」


「………、しかし今の私に攻撃ができるとは驚いた。あやつですら攻撃出来ないと思ったのだが甘かったか。いや、思い出したぞ、今の技。貴様やっぱりカツヨリの」


神滅閃を知ってる?


「勇者カツヨリの、なんだ?」


「うーむ、お前をあやつと会わせてみたい気もするが、ここで殺しておかないと面倒くさい事になりそうだ。マーリー、頼む」


 マーリーはダンジョンコアを操作した。するとグーリーの首は元に戻り再び結界が張られる。あれ?また始めからか。攻撃をするが再び結界に防がれ、結界を壊すと霊体のようなグーリーには攻撃が当たらない。このままではと、リコは何かいい手はないかと考えている。


「聖魔法が効かないなんてことあるの?アンデッドには超有効だと思うんだけど」


 カツヨリもそう思う。何かトリックがある。疑問はもう一つ、グーリーからの攻撃がない。俺達を殺すと言ったのに。そうなのだ、グーリーはこっそり詠唱をしていた。エルダーエルフリッチは闇の最上級魔導士だ、直接攻撃よりも精神攻撃や魔法攻撃が得意なのだ。何度か精神攻撃を仕掛けたがこの3人には効かないようなので、魔法攻撃に切り替えた。実際はリコの聖なる光が精神攻撃を浄化しているのだがそれには気付かない。この世界には聖魔法はないのだからグーリーが気付かないのも仕方がない。準備ができた。グーリーは3人に向かって話しかける。


「貴様らの攻撃はなかなかだが全く効いてないぞ。そろそろこちらから攻撃させてもらうこととしよう」


 グーリーの話が終わると地面が、壁が、天井が震えた。

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