　ガッキー山から飛来したのはガーゴイル３匹だった。なんでこの２人には気配がわかって俺にはわからないのか？なんか悔しいと思っていたら、

「ホーリービーム」

　リコの指先からレーザーのような光がガーゴイルを襲い、一瞬で一匹の顔がなくなった。えっ、確かガーゴイルってBランクだよね、しかも魔族の部類。なんと一撃ですか！！！残りの２匹が口からファイヤーボールのような火の玉を吐いた、しかも連弾だ。ムサシに火の玉連弾が襲いかかった。それだけでなく火の玉を吐きながら猛スピードで剣を持ってムサシにぶつかろうとしている。ムサシは、

「利光、政宗。頼むぞ」

　といつものように剣に話しかけながら火の玉を切り、跳ね返した。一つの火の玉がガーゴイルに跳ね返り１匹がつんのめった。もう１匹は剣でムサシに襲いかかったがムサシは剣でその攻撃を受け流し、そのまま胴体を切りつけるがガーゴイルの皮膚が硬く弾かれてしまう。よーく見るとガーゴイルは身体能力強化を使って防御力を上げている。ムサシはそれを見て剣に魔力を纏わせ始めた。だんだんと剣戟の威力が増しているのがわかる。そこにつんのめっていたガーゴイルが戦線復帰しムサシに襲いかかる、２対１だ。Bランクの魔物２匹相手はきついかなと応援しようかと思い、近づくそぶりを見せたら、

「手助け無用。この程度倒せなくて救世主パーティーは務まらん！」

　ムサシに怒られたのでリコと２人で高みの見物にしゃれこんだ。怒んなくてもいいじゃんね。ホントムサシってね、などと話しながら見ているとムサシは利光、政宗に魔力を纏わせてさらに身体能力強化も使っている。ガーゴイルは右手に片手剣だが、左手の爪、口から火炎も混ぜて攻撃している。互角に見えていた戦況に変化が現れた。２匹のガーゴイルが連携を始めたのだ。最初は好き勝手に攻撃していたのだが、１匹が剣で切り掛けもう１匹が火炎を吐く、ムサシの防御を惑わせるようなコンビネーション攻撃をしてきてムサシがだんだんと劣勢になっていく。

「あれ、これって不味くないっすかリコさん」

「そうですねえ。ムサシーーー！助けようか？」

　リコの呼び声に、

「姫様、まだやれますゆえ待っていて、イタッ。このくそ鳥めが。仕方がない、あれを使う。魔法剣、烈火の型」

　ムサシの持つ両方の剣から炎の龍が現れガーゴイルに襲いかかる。ガーゴイルが龍にまとわりつかれて、もがいている隙に、

「真魔陰流奥義風雅斬」

　今度は剣に風魔法のトルネードを纏わせ風の威力で剣速をあげたムサシの必殺奥義がガーゴイルの首を連続で跳ねた。

「おお、お見事」

　カツヨリは拍手してムサシを讃えた。そうか、ああいう風になるのか。戦うよりも横から見たほうが凄さがよくわかる。魔法剣は魔力を纏わす攻撃より明らかに強い。だが剣との相性もありそうだ。魔力付与だっけ？鑑定がなきゃわからんかったね。女神にもらったルーペ実に使える。

　ムサシが剣を鞘に入れて息をゼーゼーいいながら、カツヨリに話しかけた。

「どうだ。わしの腕は。ちょっとてこずったが本気を出せばこんなもんよ」

「ムサシ。見事だよ。魔法剣かあ、早く覚えたいなあ」

「魔法が使えん奴には無理だ」

　そんな事はわかってる。だが魔力がこんなにあるのに魔法が使えないのにはきっとわけがある。それさえなんとかすれば神獣にだって……、それは無理かも。

「お兄ちゃん。ガーゴイルが出てきたって事はそういう事だよね」

　リコが思い出したようにつぶやく。そうしながらムサシに回復魔法をかけているから我が妹ながらたいしたもんだ。そうなのだ。ガーゴイルあるところに魔族あり。つまりガッキー山には魔族がいる。

　ガッキー山。ドワーフの古里だ。ここにはいくつかの集落があり、それぞれが独特の工作技術を持っている。平和になり強い武器の需要が減り、低ランク向けの武器が売れる世の中だが、ここには腕の良いガンコな職人が残っている。その集落の一つ、族長マーリーが率いるマーリー村のすぐ裏手にダンジョンが出来ていた。ドワーフは戦闘能力も高い。鍛治には力がいるから大体が力持ちでハンマー系の武器を使う者が多い。マーリーは息子のエッサにダンジョン捜索を命じた。集落ではリーダー格のエッサは配下の者達を連れて集団でダンジョンに入っていった。

「またスケルトンか。スケルトンは頭蓋骨を砕くんだ。叩いてバラバラにするだけだと復活するぞ」

「おう。しかしアンテッド系しか出ないのか、このダンジョンは。魔石もアイテムも落とさないし美味しいところがねえな」

　山で暮らすドワーフは魔物退治の経験を積んでいる。魔物は食料にもなるし魔石や素材は売れる。それに対してこのダンジョンの魔物は何も残さないので戦っている者達から不満が出始めた。結構な頻度でスケルトンが出てくるので身入りがないのがつまらないのだ。エッサは、

「先に進めばドロップアイテムが出るかも知れんぞ。まだ２階層なんだし、こんな弱い魔物で美味しいわけねえだろ。先へ進むぞ！」

　３階層まで進んだところである男と出会った。いや、どうやら待っていたようだ。

「ダンジョンへようこそ。話がしたいのだが可能かな？」