リステルの隠し事
キロの森大規模調査から帰ってきた次の日の朝。
私達は早速、冒険者ギルドに顔を出した。
アミールさんとスティレスさんが、他の調査隊のメンバーはまだ来てないと言うので、先に確保しておいた、魔物の死体の査定をしてもらうことにした。
一応、キロの森の中にどんな魔物がいたのか、確認もしてもらわないといけないからだ。
そうこうしている内に、他のメンバーも集まった。
心なしかみんな顔色が悪い。
女性陣に挨拶をし、どうしたのかと聞いてみると、二日酔いだそうだ。
「アミールさんとスティレスさんはケロッとしてるが、あの二人が一番飲んでたよ……」
っと、軽装の女性が話してくれた。
あの二人、私の料理を食べに来た時に、お酒も一緒に持ってきたことがあったけど、そんなに強かったのね……。
そして、職員のお姉さんに、広い応接室に案内された。
そこには、ガレーナさんとセレンさんが待っていた。
私達に着席を促した後、
「この度は、私共の人選ミスにより、多大なご迷惑をおかけいたしました。誠に申し訳ございませんでした。今後このようなことが起こらないように、努力いたしますので、どうかお許しください」
そういって、ガレーナさんが謝罪の言葉を述べて、セレンさんと二人で頭を下げた。
問題の十人は、現在勾留中で、罰則が確定するのを待っている状態だそうだ。
ただ、一人、私を斬りつけた人物については、冒険者資格の剥奪と、鉱山での強制労働五年は確実らしい。
謝罪が終わり、報酬の話になった。
元々、フルールの街と冒険者ギルドの共同依頼だったので、一人につき金貨十枚だったのを金貨二十枚にしたそうだ。
これには、だんまりだった全員が喜んだ。
これでやっと、大規模調査関連が終了したことになる、っと思っていたら、私達四人は残された。
「後日、フルールの領主から、使者を向かわせるとの連絡を貰いましたわ。そこで、皆さんが確実にいらっしゃる時間を教えていただきたいのです」
ガレーナさんがそう言うと、
「東の草原の討伐依頼って、まだしばらく取り下げられないんですよね?」
リステルが聞き返す。
「そうですわね。一向に被害の減少が見られないので、しばらくはこのままだそうですわ」
「なら、早朝と、夕方頃に、ギルドには顔を出すことになりますよ。まぁ今日から二~三日は休ませてもらいますけど」
それは、昨日、寝る前に話し合ったことだった。
ゆっくり休んで、また討伐に出かけようと言う話になった。
ただ、私はもう、戦わなくていいよって言われた。
邪魔だとか、そんな意味ではなくて。
元々私が戦い方を覚えたのは、キロの遺跡へもう一度行くためだった。
結果は……残念な結末を迎えてしまったが。
だからもう無理して戦わなくていいのだと、みんなが言ってくれた。
でも、私は断った。
今までずっと一緒にやって来たんだ。
急に家で一人、待たされるのは嫌だ。
何よりも、一人になると、気分が沈んで戻ってこれなくなる気がして、怖かった。
だから私は、冒険者として、みんなと一緒に活動することを決めた。
「わかったわ。瑪瑙がそう言うなら、これからも一緒に戦いましょう!」
ルーリも、
「ハルル、瑪瑙お姉ちゃんと一緒で嬉しい!」
ハルルも、
「無理はしちゃだめだからね? とりあえず、二~三日休んで、活動再開しましょうか」
リステルも、私の言葉に喜んでくれた。
こんなやり取りがあって、当面は、東の草原の魔物討伐をメインに活動することになった。
「それにしても
「人にもよりますね……。流石に今回みたいな人選だった場合、私達は放棄して帰ることにします」
リステルがはっきり言い切った。
「わかりました。まだ、協議もしていないので、どうなるかはわかりませんが、調査の依頼が出た場合は、私とセレンが信用できる者のみで構成するようにいたしますわ」
ガレーナさんがそう言うと、
「うう。今は冒険者の出入りが激しいから、探すのに一苦労しそうです……」
セレンさんががっくりとうなだれた。
「ですが
「それもそうですね!」
嬉しそうに言う二人だが、
「飛んでいなければ、私達四人でどうにかなるかもしれませんが、飛んでた場合、瑪瑙が本気で魔法を使わなくちゃいけなくなるので、そうなるとフルール諸共吹き飛びますよ?」
ルーリが冷や水を浴びせる。
「……そう言えば、聴取内容に、長方形の遺跡が、球形に吹き飛んだと書いてありましたわね」
「私も直接、調査隊のメンバーから聞きましたが、大げさな表現とかではなくてですか?」
さっきまで嬉しそうだった二人の笑顔が、ピクピク引きつっている。
「遺跡吹っ飛んだの、ほんと!」
ハルルが嬉しそうに言う。
「街に来ないことを祈りますわ……」
「ですね……」
そして、私達は応接室を出たのであった。
今後の活動方針は決まっているのだけど、情報収集もかねて、掲示板を確認しようとした。
すると、
「あのー、リステルさんで間違いないでしょうか?」
っと、リステルが三人の女性に声をかけられた。
また絡まれているのかな? っと思い、警戒しんだけど、
「コルト?」
とリステルが聞き返すと、
「ああ! お嬢様! ご無事で何よりです! 心配したんですよっ!」
っと言って、コルトと呼ばれた女性はリステルに抱き着いた。
……ちょっともやっとした。
ルーリもハルルも、その様子を見て、むすっとしてる。
「ちょ、ちょっと離れてコルト! 瑪瑙もルーリもハルルもそんな顔しないで! 前に話した三人よ!」
「ふーん。とりあえず、立ち話もなんだから、家にいきましょう?」
「ちょっとルーリ機嫌直してよ! この三人はそんなんじゃないんだから。前にちゃんと話したでしょ?」
「ふふふ。ごめんなさい。あんまりに親しそうだったから、嫉妬しちゃったわ」
「むー。一番大事なのは、あなた達三人だっていつも言ってるじゃない」
そう言う私達をみて、
「コルト。衆目を集めるんだから、やめろ!」
「ちょっとくらい良いでしょシルヴァ! 本気で心配したんだから!」
「まーまー。とりあえず、ゆっくり話せる場所につれてってもらいましょー?」
「カルハはマイペース過ぎる!」
向こうは向こうで仲がよさそうだ。
そんなわけで、落ち着いて話すために、私達はギルドを後にし、三人を家の客室に案内するのだった。
「それにしても、クリスティリアお嬢様が、フルールに根ついているなんて、思ってもいませんでした」
「コルト! 今はリステル様だ!」
綺麗な金色の髪のコルトさんが、光沢のあるグレーの髪のシルヴァさんからゲンコツを貰っている。
そんな二人は見えてませんよーと言う感じで、私が淹れた紅茶を飲んでいる、赤銅色の髪のカルハさん。
「すごーい! あなた、紅茶を淹れるのとても上手ねー」
「ありがとうございます」
「もー! 相変わらず三人は賑やかなんだから! 話が進まないよ! ここにいる三人には、私の事は話しているから、クリスティリアでもいいけど、私はリステルの方が気に入っているから、リステルって呼んでくれた方が嬉しい」
少し時を遡ろう。
私が三人組の男に、腕を折られることがあった後、リステルが隠し事があると言っていたのを覚えているだろうか?
その隠し事を話してくれたのは、ラルゴ湖から帰ってきた、その日の夜だった。
「ごめんね。ちょっと勇気だすのに時間がかかっちゃった」
そう言って、話してくれたこと。
リステルの本名。
クリスティリア・グラツィオーソ・ハルモニカ。
ハルモニカ王国の、王族である。
現国王は、叔父の父にあたるらしい。
幼くして、クリスティリアに魔法の才能があるのに気づいた、クリスティリアの母クオーラは、自分の護衛の中から、一流の剣士であるコルト、宮廷魔術師にも匹敵するほどの魔法使いシルヴァを教育係に任命したそうだ。
クリスティリア自身も、魔法だけではなく、剣術にも才能を見せ、すぐに天才と呼ばれている魔法剣士であるカルハも、教育係に任命されたそうだ。
十二歳になったころ、縁談の話がいくつもいくつも持ち込まれるようになった。
美醜関係なく、中には下心さえ隠さない、醜悪な男が何人も現れ、徐々に男が怖くなっていった。
ずっと断っていたのだが、その時、事件が起こった。
一人の男が、クリスティリアの寝所に入り込み、寝込みを襲いかけたのだ。
恐怖のあまり、魔法で殺しかけたが、駆け付けた母クオーラとクリスティリアは、とんでもない事実を知ることになる。
今回の事件の首謀者は、国王と自分の父であった。
自分達の地位を安定させるため、娘を売った。
国王も、自分の父も、クリスティリアを政治の駒程度にしか見ていなかったのだ。
そのことが決定打となって、クリスティリアは男嫌いになってしまった。
母クオーラは、教育係の三人を、護衛もかねて、クリスティリアの側仕えを命じ、徐々に、冒険者としての活動も教え込み、ある日、王城から逃がした。
母クオーラに少しでも迷惑をかけないため、自発的に城をでる旨の手紙を残し、旅に出た。
これが、クリスティリアの、リステルの隠し事だった。
聞いたときは、あんまりな内容に驚いたものだ。
リステルが時間を確認していた魔導具を見してもらうと、間違いなくハルモニカ王家の紋章が入ったものだと、ルーリが言っていた。
なんでも、この魔導具は母から貰った大切なものであるため、捨てるのも、置いていくのも忍びなかったそうだ。
この話は、もちろんハルルにもしてある。
私達がずっと、リステルと呼んでいるのは、クリスティリアと言う名前は、父が決めた名前と言うのが原因だ。
城から逃げて冒険者になる時の偽名を考えた時、クオーラに、
「お母様なら、私にどんな名前を付けたのですか?」
「私が決められたのなら、リステルって言う名前にしたかったわ」
と言う事から、偽名をリステルにしたそうだ。
要するに、自分の本名が嫌いだからだ。
そして、いつか来るであろうこの三人の事も、聞いていた。
捜索するという建前で、リステルの行動をのんびり追跡しているので、フルールに根つくと、いずれ遭遇するだろうと。
「それにしても、お嬢様がフルールに根ついてるとは思わず、クラネットまで行ってしまいましたよ」
コルトさんが言う。
「クラネットの冒険者ギルドで、銀髪赤目のリステルと言う名前の冒険者は来ていないと聞いたときは流石に肝を冷やした。はぁ。ん、美味いな」
シルヴァさんは、安心したと言わんばかりにため息をついて、紅茶を飲んでいる。
「道中なにかあったのかなーって、コルトちゃんすごーく慌てて泣きそうだったよねー」
のほほ~んと喋ってるカルハさん。
「ところで、リステル様。どういった理由で、フルールに根ついたんだ?差し支えなければ、教えてもらいたい」
シルヴァさんが真剣に聞いてくる。
「ねぇ瑪瑙。瑪瑙のことを話しても良い? この三人は私の小さいころから一緒にいてくれて、信用できる人達だから。もちろん瑪瑙が嫌なら、絶対に言わないよ?」
「うん。いいよ。リステルの信じてる人だったら、別に言っても構わないよ。それにもう……ううんなんでもない」
もう帰れないもんって言いそうになって、慌てて言葉を濁す。
「……瑪瑙」
そして、リステルは話し出した。
遺跡の調査の依頼を受けて、ルーリに出会い、キロの森の遺跡で、私が異世界から現れた事、ハルルがパーティーに加わったこと。
私達と一緒にいる内に、一人ではもういられなくなってしまったこと。
今が凄く幸せだと言うこと。
「異世界……。本当なんですか? メノウさん」
「証明できるものはありませんが、事実です」
「帰りたいとは思わないのか?」
「唯一の手掛かりである遺跡を、壊してしまいました」
「壊したって、何があったのかしらー?」
「つい先日、街とギルドの共同依頼でキロの森の調査をした際、
「「「
おー綺麗にハモったなー。
そこからまた、説明が始まった。
「それは、とんでもない目にあいましたね」
と、コルトさん。
「リステル様もハルルさんも凄いが、ルーリさんとメノウさんの魔法も素晴らしい才能を秘めていそうだ」
「メノウちゃんって魔法剣士の才能もあるみたいねー」
「弟子でもあるお嬢様が、こんなにも成長しているなんて、私はとても感動しています!」
各々感想を話した後、シルヴァさんが、
「メノウさんは、これからどうするんだ?」
「……みんなと一緒にいることができたら、それでいいかなって思ってます」
「諦めるのか?」
「当てがないのに、どうすればいいんですか? それとも、何かご存じなんですか?」
「……すまない。何も知らない」
「シルヴァ。それ以上言うと私は本気で怒るよ」
リステルが庇ってくれる。
「研究都市ならどうかと思ったんだが……。流石に保証はできない」
「あーあそこかー。でもここから行くとなると大変だよー?」
「シルヴァ、カルハ。研究都市って何?」
「あ、お嬢様はしらないんですね。ハルモニカ王国より、ずっと北にある国、オルケストゥーラ王国にある、首都オルケストゥーラの別名ですね。あらゆることを研究していて、そこにある、マエストーソ学園は、研究の最先端と言われている場所です」
「もしかすると、そこで何か研究がされているかもしれないと、思ったんだが」
「もしかしたらで行ける距離じゃないよー? シルヴァちゃん。あとちょっと無責任かなー?」
「すっすまん。メノウさんの気持ちは察するに余りある。何か力になってあげられたらと思ったんだが」
「皆さん、見ず知らずの私に、ありがとうございます。あ、お茶のお替りお持ちしますね」
そう言って、席を立つ。
そんな場所があるの?
もしかしたら帰る方法があるかもしれない?
みんなについて来てもらう?
ダメ。
そんなことに付き合わされない。
……一人で行く?
行くのなら、一人で行くしかない。
どうする?
どうすればいいの?
ぽたぽたと、涙がこぼれていた。
後ろから、左右から、ぎゅっと抱きしめられた。
「シルヴァ。瑪瑙はあなたが思ってるより、ずっと繊細なの。今も必死で行くか行かないか考えて、きっと、一人で行こうって思って苦しんでるんだよ?」
「瑪瑙。行くなら一緒よ。ずっと一緒にいるって約束したじゃない」
「ハルルも一緒に行く」
どうやら私の考えなんて、みんなにはお見通しらしい。
「ありがとうみんな」
ああ、リステルが、一人旅できないって言った意味がわかってしまった気がする。
なんて愛おしい仲間なんだろう。
私が、諦めてしまえば、この世界を受け入れてさえしまえば……。
また、日本の情景がフラッシュバックする。
帰りたい。
帰れない。
「瑪瑙お姉ちゃん。無理しなくていいんだよ?」
「ハルルにもみんなにも、隠し事はできないね」
私は涙を拭い、紅茶を淹れて、みんなと客室にもどる。
「すまいない。軽はずみなことを言った」
「いえ、そういう知らない都市があるって言うのを知れて良かったです」
「そこって、行くとしたら、どれだけ日にちがかかるの?」
「お金を考えなければー、四か月くらいかかるかなー?」
「フルールからずっと北へ行き、ハルモニカ王国をでて、フラストハルン王国に入り、そこから海路で、ガラク皇国へ行き、また海へ出た先が、オルケストゥーラ王国の最南端になりますね」
「四か月は、あくまで路銀を集める心配がない状態での事で、まぁ普通に半年以上は見た方がいいだろうな」
「瑪瑙。いこっか! 私たちみんなで」
リステルが言うと、みんな、うんうんと頷く。
「……言ってくれるのは嬉しいけど、ちょっとそこまでって距離じゃないんだから。安易に考えちゃだめだよ」
「まさかお嬢様もついて行くつもりですか?」
「瑪瑙が行くなら私は行くよ。始めはハルモニカ王国内を旅する予定だったけど、もうどうでもいいかな?」
「リステル。叙勲の話忘れてない?」
ルーリが話しかける。
「リステル様、叙勲とはどういうことだ?」
シルヴァさんが目を丸くして、聞き返す。
「ほら、さっき話した、
リステルが何かを思い出したように叫んだ。
「確かにそれは叙勲まちがいないでしょうねー。でもそれって、王城で叙勲式があるんじゃないかしらー?」
「とりあえず、先に領主に会うことになってるし、叙勲が確定したわけじゃないから……」
「オルケストゥーラ王国に行くとしても、当分先になりそうだな。その前に一悶着はありそうだ」
シルヴァさんがやれやれと肩をすくめた。
「ところでお嬢様、領主に会う云々は置いておいて、今後の主だった予定は決まっているんですか?」
「ちょうど今、東の草原の魔物が大量に増えていて、そこの討伐を続ける予定かな?」
「ふむふむ。今から出発されるので?」
「ううん。ちょっと色々あって、三日ほど休養してから、活動再開しようかと思ってたんだけど、コルト、それがどうしたの?」
「久しぶりに、お嬢様の腕が鈍っていないか、確かめたくなりまして」
「ああ。そいつは良い。久しぶりに、リステル様の魔法の上達具合をみてやろう」
「あっそれだ! シルヴァ、瑪瑙に魔法を教えてあげてよ!」
突然話をふられるとドキッとするんですが!
「メノウさんに? 確かに聞いた話だと、魔法の才能はありそうだが……」
「それがね。瑪瑙は今、四属性を上位下級までを無詠唱で威力も範囲も強力に発動できるの。私とルーリが教えてあげられるのは、上位下級の一部の魔法のみだから、教えてあげて欲しいの」
「ちょっと待ってくれ! 確かにさっき才能を秘めているかもとは言ったが、四属性を上位下級まで無詠唱で強力化できる?! 本気で言ってるのか? リステル様」
「ちなみに治癒魔法も使えるよ! あと、カルハも稽古をつけてあげて欲しい」
「あらまー。才能は確かにありそうだけど、そこまでなのー?」
「
「「なっ?!」」
リステルの言葉に、今までのほほ~んとしていたカルハさんの笑みが一瞬で崩れ去った。
シルヴァさんも驚愕と言った感じの表情をしていた。
「それなら、剣術も見たほうが良ですね」
「お願いできる?」
「お嬢様がお望みなら。お嬢様の腕が鈍っていないか見るついでです!」
コルトさんがニヤリと笑うと、シルヴァさんの目がキランと輝き、カルハさんは……またのほほ~んとした笑みを浮かべていた。
「それでは、明日からということで……」
「それはダメ。きっちり三日は休んでからよ」
リステルがきっぱりと言い切った。
「理由をお聞きしても?」
「……さっきはあえて言わなかったけど、実は瑪瑙が殺されかけたの。それに、精神的にも思いつめてる。私達も、かなりショックだったの。ちょっとだけ瑪瑙と一緒に日常を過ごさせて」
「リステル……。私はだい……ううん。そうね。ちょっとゆっくりしたいかな?」
大丈夫じゃないのはみんなにバレバレ。
だったら正直に言っちゃおう。
「想像以上に大変だったようだな。それにしてもリステル様、雰囲気が変わったな」
「そうねー。雰囲気が柔らかくなったわねー」
「お嬢様は、良い巡り合わせにあったようですね」
「私達は、いつ良い人に巡り合うんだろうか……」
シルヴァさんが、肩を落として呟いた。
「行き遅れ街道まい進中だよね、私達」
「あらあらー。二人に近づく悪い虫は、私が叩き斬ってあげるわ……うふふふふー」
カルハさんの、のほほ~んとした笑みから一瞬黒いオーラが見えたのは、きっと気のせいだ。
「リステルお姉ちゃん達に男が近づく?首刎ねる?」
ハルルちゃんも何か怖いことを言ってる。
うちの子に悪いことを教えないでください!
「じゃあ、四日後の早朝に、冒険者ギルドで待ち合わせしましょう」
「わかりましたお嬢様。ゆっくり休んでくださいね。まあ初日は様子見になるでしょうけど」
「あのっよろしくお願いします!」
私達は頭を下げる。
「そんなに気を張らなくていいわよー。リステルちゃんのたってのお願いだしねー」
「こちらもよろしく頼む。どれほどのものか楽しみにしているぞ」
そう言って、三人は家から去っていった。
「さて。突然のお客様だったけど、今からは休日よ!しっかり楽しみましょう!」
ルーリが宣言する。
「おー」
ハルルが手を上げて答える。
さて、みんなで何をしようか?
買い物は行くとして、この世界の娯楽は良くわからない。
よくよく考えたら、今までずっと頑張りっぱなしの日々だった気がする。
ちょっとぐらい休んでもいいよね?
みんな元気にしてるかな?
そんなことを思う心だけは、ずっと休まらない。
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