そして、花火が消えた
足許も気にしないで走っていました
きっと星も月も霞んでいました
正直ぬくもり以外はどうでもよかったのです
ただただ打ちあがる大輪を眺めては
歓声をあげるほかには言葉もなく
きみの手だけをしっかり離しませんでした
線香花火の儚さに自分の人生を見た
ぼくの手から小さな夕日が落ちます
無常すら感じないこんな斜陽もいいなと思った
火薬の匂いがきみの残り香のようで
似合いはしないけれど蘇るのです
夏の夕べはきみのいろんな匂いがしてきます
草いきれのなかにひとりきりです
いつから気づいていたのでしょうか
すべては過去になり誰もが終わりを迎えることを
夢中だったことや楽しさや涙も
かけがえのないとはこういうことか
ぼくの足は木の根のように高台に立ち尽くします
そして花火が消えた
目蓋を閉じて脳裏に描くけれど
風がぼくから香りを奪い去ってゆきます
そして、花火が消えた
20210801
深夜の二時間作詩
第120回「そして、花火が消えた」で終わる作品
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます