桜、散る。

白に近い花弁が映えていた。

逆に息苦しいほどに澄んだ空は、

まるで心の投影だった。


あたたかくなり始めた日差しが、

かすかな風とともに花房を撫でながら、

プラチナで満たしている。


卒業の指す真意をぼくは知っている。

なぜならきみの口癖だったから。

自分のための予防線。


断絶を、祝福のオブラートで包み込む。

別離をきれいなものとしていたいのだ。

きみはやがて、ぼくをも卒業していく。


紅雨の時期には思い出す。

なにも言えないまま迎えた黄昏。

噂も届かないきみのこと。


紙吹雪のように、

桜、散る。





20210411

深夜の二時間作詩

第106回『桜、散る』で終わる作品

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