第495話 最強の美女転生者の挑戦状Ⅴ

「ユニークスキルは使わないのかしら?」


 デアからそう問いかけられたので俺は首を左右に振った。


「使ったらコピーされるんだろ?」


「どうかしら?」


 そうデアは白を切った。デアからすれば俺の創造主ザ・クリエイターを目撃したいはずだ。しかし、俺が使わない事にはデアも能力を真似できない筈。それに能力を使わなくても何とかなりそうだしな。


「お望み通りいくわよ」


 デアはそう言って俺に冥覇斬めいはざんの斬撃を何個も飛ばしてきた。冥覇斬めいはざんもMPの消費量が多い筈なのに、デアが桁違いのMPを持っている事と、冥眼の抑制コントロールの効果のお陰で、冥覇斬めいはざんが消費するMPなど、デアからすれば少量だった。何なら、悪の破壊光アビス・ディストラクション燦爛の光線シャイニング・レイ龍の咆哮ドラゴン・ブレスなどのアクティブスキルよりも圧倒的に少ない消費量なんじゃないか?


 俺はふうと深呼吸をして飛んでくる斬撃を、黒紅煉刀くろべにれんとうで全て弾き返した。


「またっ――! それに冥覇斬めいはざんを弾くなんて常識外れだわ!」


 デアはそう言って六芒星の黒い魔法陣を出現させ、禍々しい結界を展開させた。冥覇壁めいはへきと呼ばれる防衛アクティブスキルだ。


「残念でした」


 俺はデアの頭に向けて天を穿つ者エンデュアーを放った。これまた随分とMPを込めたもんだから、デアの上半身は吹き飛んだ。何気に初めて入れた一撃だ。


「どうだい? 天を穿つ者エンデュアーの一撃は」


 俺がそう問いかけると上半身を瞬時に再生させて、ぜえぜえと息を切らしたデアの姿があった。


「やるわね。天を穿つ者エンデュアーで斬撃を無効化する未来が視えていたのに――」


「それは残念だったな」


 俺がそう不敵な笑みを浮かべると、ミクちゃん、ランベリオン、アリシアは大いに盛り上がっていた。


「ナリユキ君凄い!」


「凄いぞナリユキ殿!」


「流石です! 完全無欠だと思っていた天衣無縫オーディンに対抗できています!」


「アリシアの言う通りだけど、ナリユキ君の戦闘センスもかなり凄いよ。普通、そんな簡単に未来を欺く事なんてできない。分かっていてもできないよ普通」


「その通りだな。流石マーズベルの主だ。我が会って来た転生者のなかでも頂点に立つ、強さと戦闘センス」


 戦闘センス。そんなもんはカルベリアツリーのダンジョンで直ぐに磨き上げることができる。別に連続で成功したのはマグレだ。デアがいつ未来予知眼ヴィジョンアイを発動して天衣無縫オーディンを発動しているかなんて分かってないからな。ここで心理学とか勉強していたら活かせたかもしれないけどな。スキルで言うなら魔眼を持っていたら変わっていたかも。未来予知眼ヴィジョンアイが発動する際には、MPは消費しないものの、MPの流れが活性化する筈だからな。


「やっぱりこの勝負あれを使用するしかないか」


「そのアレってのは貴方の必殺技?」


「まあそんなところだ。俺が創造主ザ・クリエイターだけではない事を証明してやるよ」


 と、大口を叩いた割には俺の固有剣技スキル、無双神冥斬むそうしんめいざんでファイナルフィニッシュを決める場面を作らないといけない。もっと言うなら、このスキルを使ってデアとの戦闘を終わらせることができるかどうか――。そう考えるともっとダメージを蓄積しないといけないな。


「今度は俺からいくぞ」


 俺がそう言ってデアに斬りかかった時だった。俺は右薙ぎを繰り出そうとしたのに、左手に持つ天を穿つ者エンデュアーを放ちやがった。


冥覇光めいはこう


 デアはそう言って口から黒い稲妻を帯びた怪光線を放ってきた。当然俺は身動きが取れず直撃する事になる。


 体は1秒も経たずに再生するのだが――。


冥覇めいは系のスキルを喰らうと、やたらと体力の消耗が激しいな」


「ナリユキ君。恐らくだけどデアちゃんはナリユキ君に対してマイナスの邪気を攻撃に加えて戦っているよ」


 ミクちゃんがそう俺に助言すると、デアの表情は歪んでいた。どうやらビンゴらしい。


「成程な。邪気を扱えるのか。プラスも使えるのか?」


「ええ。そうよ。気付かれたからには早めに決着をつけないとね。ウカウカしていられないわ」


 デアはそう言って元の自分の姿に戻った。冥眼のスキルを全然使っていないのに本当にそれで良かったのだろうか?


「本気か。俺はもう十分なんだけど」


「私をこの姿にさせるのは貴方が最初で最後かもしれないわね」


「我、魔族における最大の力を発揮せん。我が道を阻む者総て破壊の対象となる金色こんじきの髪が白銀に染まりし時、あらゆる生物のエネルギーを我の力とせん」


 今回このダンジョンに入り、知性・記憶の略奪と献上メーティスで魔族から、魔族語に関する情報も抜き取りまくっていた俺は、魔族語学が理解できるようになった。その為、魔真王サタン発動時の詠唱の魔族語も理解できた訳だが――。


 あらゆる生物のエネルギー? それってもしかして――。


「なっ!? 我のMP吸い取られたぞ!?」


「私のMPも吸い取られています!」


「私は大丈夫だけど――あれ? 何で大丈夫なの?」


「いや、何だその悪い冗談」


 俺は思わず苦笑した。ランベリオンとアリシアのMPだけでなく、ダンジョンにいる魔物からもMPを少しずつもらっていやがる。色々な魔物のDNAが混ざった転生者らしい魔真王サタンだけどこれは流石に――。


 圧倒的なパワーを得た白銀の髪をした深紅の瞳を持つデアの姿が――。そして禍々しい邪気を放ちながら悠然と立っているその姿はまさに魔王そのもの。


「戦闘値13,000――。流石に強すぎるだろ」


「ここでさらに使うわ。龍族の強化スキル忘れてないかしら?」


「――まさか!?」


「そのまさかよ」


 デアはニッと口角を吊り上げた。デアが発動しようとしているスキル――。それは龍族のみ扱える強化スキル。逆鱗げきりんだ。

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