第463話 アスモデウスの助力Ⅰ
「実際にこうして見るとかなり不利な状況じゃのう」
妾とシトリーは、
「そうですね。しかしながら勝手に助力して本当に功を奏するのでしょうか? とてもじゃありませんが、上手くいくようには感じません」
「まあやってみるだけやってみよう。今、地上ではナリユキ閣下と
「そうですか。地上もアスモデウス様にとっては大切な場所ですもんね」
「そうじゃのう。かけがないの無い存在じゃ。魔界も地上もな」
「アスモデウス様が地上に長く住まわれているので、それほど心地良い場所なのだと思います」
「色々あるが、この魔界と違ってずっと戦争している勢力は無いからのう。まあ軽い争いはあるじゃろうが、今の妾達が見ている程の規模は無い」
そう。魔界の世界は地上のように温くない世界。弱肉強食の世界じゃ。そして人間のように成長という概念はほぼ無い。素質は生まれながらにしてある。なので、どれだけ頑張ろうが報われない魔族は多い。この魔界という世界はそれほど残酷なのじゃ。しかしながら最近の魔族は変わってきているという。争いを好まない魔族が増えてきているようじゃ。その反面、今こうして争いが行われている。
王に忠義を持つ者。王に恐れている者。家族を守る者。様々な理由があってこの場にいる。覚悟が無い魔族だっていない訳ではない。そんな中、多くの痛み訴える声が聞こえる。様々な思惑があるものの、死にたくて死んでる魔族は誰一人としていない。どれだけ才能がなかろうが、皆必死に生きているには変わりないのじゃ。
「やはり妾としてはこの戦争を終わらせたくなったのう」
「どうしてですか?」
「簡単じゃ。ルシファー軍の士気をみろ。殺戮を楽しむベリアル軍と、不利な状況で士気が下がる一方のルシファー軍。こんなにも魔界で起きた他の王達の戦争で、心が痛くなるのは妾は初めてじゃ」
「――正直なところ私には、他人がどうなろうと別に構わないのでその痛みは分かりません。地上で生活をすれば分かってくるものなのでしょうか?」
「そうじゃな分かる時がくる。まあ、どのみち黒龍を倒さねば話は進まない。シトリー。妾に協力してくれ。奴等の部隊をいくつか潰す」
「仰せのままに」
妾はシトリーがそう返してくれると、早速ラーゼンに上空を飛び回ってもらった。ここは上空200m。目の前の戦闘に必死なこやつ等は、妾達の存在に仮に気付いても攻撃を仕掛ける事はできない。
数秒間飛び回って、部隊が苦戦しているルシファー軍を探す。心苦しいところはあるが、ほぼ壊滅している部隊を助けてもあまり意味は無い。ルシファー軍が3。ベリアル軍が7くらいのところが丁度よいと踏んだ。
「魔王じゃが、今回に限っては英雄気取りでいこうかのう」
「魔王が英雄って初めて聞きますよ。むしろ英雄は魔王の敵です」
「それはそうじゃ」
軽い談笑をした後、早速ラーゼンに指示をして1つの部隊同士の争いに割った。妾が近付くだけで、戦闘はピタリと止まり、妾に視線が集まった。
「ま……魔王アスモデウス!」
そう、何名かのベリアル軍の戦士達がそう妾に声をかけてきた。そして、妾の登場によってルシファー軍の戦士達 数名の表情が一気に曇る。慎重に事を運ぼうとしているのは、傷だらけの部隊長くらいだ。
「これはなかなか酷い有様じゃのう。流石魔王ベリアル軍じゃのう」
「俺達を嘲笑いにきたのか?」
魔王ルシファー軍の部隊長が妾にそう問いかけてきた。
「皮肉っぽく聞こえたのは申し訳ない」
そう言うと怪訝な表情を浮かべる魔王ルシファー軍の部隊長。対する魔王ベリアル軍の戦士達は、眉をひそめて妾の事を注視していた。
「其方達の力になろうと思ってな」
妾がそう発言すると魔王ベリアル軍に緊張が走った。正直なところMPを使って一気に壊滅させる事はできる。しかしそれだと恐らく意味が無いのじゃ。あくまで共闘をして同じ死線を潜り抜けてこそ効果を発揮する。
「どうじゃ?」
妾がそう部隊長に問いかけると、少し渋った様子だった。流石ルシファー軍の部隊長と言ったところか、自らの軍で何とかしたいという
「部隊長! ここは協力してもらいましょう!」
「現状、我々は不利です! 魔王アスモデウスが力を貸してくれるであれば受け入れるべきです!」
そう何名かの魔王ルシファー軍の戦士達が部隊長に向かってそう訴えた。
「何が望みだ?」
部隊長が妾にそう問いかけてきた。
「こやつ等がいる前で発言するのは、其方等にとって不利益だと妾は思うのじゃ。なので、今どうするかだけを考えてほしい」
そう。仮に魔王ベリアル軍の前でルシファーを借りたいという交渉をすると、ルシファーが仮に助力してくれた際に、魔王ベリアル軍が魔王ルシファー軍の領を荒らす事を危惧した。それだと助けた意味がない。
――まあ何とも甘い考え方になったものじゃのう。
「分かった。今は力を貸してほしい。申し出は俺ができる範囲で受け入れよう」
「なあに。別に無理な要求をする訳じゃないしのう。それに失敗したとしても咎める事はしない」
「一体どんな要求なのか気になるがそれだと有難い」
まだ、どんな要求かも言っていないのに、失敗を咎めないと言っただけで、部隊長の表情は少し柔らかくなった。少しだけ警戒心が薄れたようじゃ。
「シトリー。其方はこやつ等が動きやすいように動いてやれ。アクティブスキルはそんなに使わなくても良い。あくまで共闘を演じるのじゃ」
妾がそう小声でシトリーに指示を出すと、「かしこまりました」と一言。
「さあ、遊んでやるかのう」
妾がそう言って一歩踏み出すと、魔王ベリアル軍の戦士達が一歩後退りを行っていた。
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