第433話 いざ、ゾーク大迷宮Ⅱ
「やっと着いたな」
「アヌビスはまだ息を切らしているけどな」
「この女が、ヒーティスはどうするのじゃ!? まだ何も決めていない! とかほざくから余が先に行ってあげたのだろう」
「な! 妾は国主として当たり前の心配事をした訳じゃ! 何が悪いのじゃ!」
「余をこき使いしおって。この借りは高くつくぞ」
アヌビスはそう言ってアスモデウスさんの事を睨めつけた。
「知らん。妾は頼んでないしのう」
「ああ?」
「何じゃ? やるのか?」
そう言って魔眼を持つ者同士で睨みあって火花を散らしている。
「ほう。魔族じゃないのになかなか使いこなしているようじゃな」
「魔王の癖に
いやいや。マジこんなところで喧嘩をするのは止めてくれ。
「はいはい。分かったから2人共落ち着いてくれ」
俺がそう言って仲裁に入ると、「フン」と鼻を鳴らして互いに目を逸らし、明後日の方向を向いていた。
「理由はしょうもないのにな」
と
というのが一連の流れだ。結局、アスモデウスさんの代役はヒーティスのギルドマスターであるゼパルさんになったらしい。そのサポートを行うのがアスモデウスさんの付き人のエリゴスさんだ。
彼女はゼパルさんと実力は変わらないらしいが、適切な指示をするのが上手では無いらしく、決断力が鈍いため、自分の代役は出来ないとの事らしい。それを言われると少し合点がいく。確かに、初めてアスモデウスさん達と会った時の
ヒーティスの主要戦力はその2人となるため、応援としてベルゾーグとアリスのコンビを行かせたので問題は無い筈だ。ベルゾーグも女性にはあまり興味を抱かないから、ヒーティスの誘惑に負けて、マーズベルに戻りたくない! とか言い出さないと思うしな。
そんなこんなで今に至るという訳だ。本当にしょうもない。絶対に2,000年以上生きている者同士の喧嘩じゃない。
「それで? この井戸のなかに入れば良いのだな?」
「ああ。そうだ」
「そう言えば、この辺りはドルドッフ族がいたのではなかったのか?」
そう言って辺りを見渡したのはアヌビスさんだ。ドルドッフ族――確かこの辺りで魔物を従えている民族だったな。こういう知識も全てコヴィー・S・ウィズダムの本のお陰だ。今じゃ、完全に敵なんだけどな。この世界に最初に読んだ本はどこの国に行っても役に立つ。
「ドルドッフ族は余の指示に従うのでな。今は別のところで狩りをしている筈だ」
「狩りって久々に聞いたな」
「確かに久々に聞いたね。まだ国になっていないときのマーズベルみたい」
「確かにオストロンでも狩りはしないな。ヒーティスもそうだが、食料は普通に流通していて、お金があれば誰でも食べることができるようになっている」
「ここは文明がまだまだ遅れているからな。特にこんな山奥にいる民族だ。狩りで食料を調達して生計を立てているのは容易に想像できるだろう」
確かに俺達の世界でも発展途上国では自分で狩猟して食べるという地域があるくらいだもんな。俺達みたいに、誰かが狩猟してくれた食料を食べるという文化は無い。
「それでは行くぞ。準備はいいな?」
「気を付けろよ。ゾークはどんな魔物か分からないからな」
「おう。ありがとうな」
俺がそうお礼を言うと、アヌビスが「無茶だけはするな」と声をかけてくれた。
「行くぞ」
そう言って一番始めに飛び降りた
多分だけど100m程落下した。そうして俺達の前に現れたのは入り口の扉――は無かった。残っているのは扉の金属片だ。
「何だこれは――扉があったようにも思えるが見事に破壊されている」
「そうじゃな。マカロフ卿達かのう?」
アスモデウスさんがそう首を傾げていたので、俺はうんと頷いた。マカロフ卿の記憶ではゾーク大迷宮の入口の扉はワイズが破壊していた。
「そうです。ですので、現在は地上と
「――それは修復が必要じゃのう」
「ワイズも確かコヴィー・S・ウィズダムが造った生体兵器だったな。あんな荒々しい奴を監視するのは大変だろう?」
「相変わらず暴れているようですね。そろそろ諦めて大人しくなってほしいもんですよ」
「苦労するな」
そこからしばらく歩くと天井の高さまで約10メートル。そしてその高さまである巨大な扉に1と大きく刻まれている扉が現れた。カルベリアツリーのダンジョンとは違い、ここは天然だ。マカロフ卿達がここをクリアしているので敵はいない。
「行こう」
俺はそう言って扉を開いた。
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