第420話 黒龍復活Ⅰ

 俺達はメシアを連れて一旦マーズベルへと戻った。案の定、幹部連中達は移動をしていた。


「マーズベルが新国として誕生したのは知っておりましたが、まさかこれほどとは思いませんでした」


「気に入ってくれたか?」


「はい! ダンジョンの外に出るなんて初めてなので嬉しいです!」


 と、メシアは喜んでいたけど、絶対に外の世界を見てみたいという感情があっただろ。まあ戦闘値は6,800と、やたらと強いので仲間に入れた訳だ。


「確か、俺の天眼には千里眼オラクルアイってのがあるんだよな。試してみるか」


「何か見るの?」


「ああ。洞窟の様子を見てみる」


 天眼の能力の1つ、千里眼オラクルアイって黒龍ニゲル・クティオストルーデが封印されているあの水晶を確認してみた。


「何か光っているな」


「光っているってどんな感じに?」


「水晶が紫色に光っているんだ」


「それは、もう間もなく黒龍が復活する合図でしょう」


「あと、どれくらいで復活するんだ?」


「それは分かりません。しかしもう間もなくでしょう。48時間以内には復活するかと――」


「成程な」


 できることなら龍騎士のユニークスキルも手に入れたいところだったが、それは流石におこがましいか。


「メシアは流石に現在の黒龍がどんなスキルを持っているかは分からないよな?」


「そうですね……残念ながら……」


「だよな。そもそもカルベリアツリーのダンジョンが出来て何百年ってレベルだよな?」


「そうですね。ですので、青龍と黒龍がどのような戦いを繰り広げていたかは分かりません」


「まあ仕方ないよな。でも、今の世界情勢は分かるんだろ?」


「そうですね。しかし、本当に必要な情報しか入手しておりませんよ。情報量が多すぎて頭がパンクしてしまいますから」


「それは間違いないな。じゃあ、今はどこの国が戦争しているとかも分かるのか?」


「勿論です。現時点でも戦争によって命を落とされている方はいます。非常に残念な事ではありますが――」


「そういう人達も救う事ができたらいいのにな」


「それはなかなか現実的では無いと思いますよ」


「まあそうか。戦争を支援するのもどうかと思うしな。皆平和に行こうぜ! っていう条約を作ることができれば国同士が争うことも無いけど」


「確かにそうですね……とりあえず向かいましょう。青龍に私を呼び寄せるように頼んでもらえないでしょうか?」


「おう。そうだな。ミクちゃん、青龍リオさんのところへ行くぞ」


「分かった」


 俺とミクちゃんは手を繋いで転移テレポートイヤリングを使って青龍リオさんのところへと移動した。


「思ったより早かったな。天眼も手に入れて強さは以前と桁違いのようだ」


 青龍リオさんに俺はそう声をかけられた。


「妾も驚いているとことじゃ。ついにZ級になってしまっては、魔真王サタンを使っても魔界で互角に渡り合えるのは、2人だけじゃな」


「ベリアルとルシファーですか?」


「その通りじゃ。そもそもじゃが、この世界、魔界、地下世界アンダー・グラウンドを含めても10人もおらんかった筈じゃ。青龍リオはもうZ級じゃないしのう」


「それはいいだろ。国を統治していて戦う頻度が少なったのだから仕方あるまい」


 青龍リオさんはそう言って少し拗ねていた。人型化ヒューマノイドの姿だから少し可愛く見えるのは気のせいだろうか?


「おめでとう。現在この世界のZ級と言えば、ナリユキ殿と黒龍ニゲルと、あとはミロクくらいだろう。そのなかの1人になった訳だ」


「でも、黒龍ニゲル・クティオストルーデに勝てるという訳では無いですよね?」


「確かにそうだな。S級の強さの幅がやたらと広いように、Z級もある程度は幅があるからな」


「そう考えると戦闘値のMAXは10,000とかですかね?」


「いや、多分上限は無いと思うぞ?」


 青龍リオさんの発言で俺は一気に不安になった。仮に黒龍ニゲル・クティオストルーデの戦闘値が9,000とかだったら太刀打ちできない――けど、復活と言っても弱くなっている可能性もあるわけだよな? 頼むから弱くなっていて欲しい――。


「そうそう。こんな話をしている場合じゃない。カルベリアツリーのダンジョンに仲間になった森妖精エルフと魔族の混合種のメシアという人物が仲間になりました。戦闘値は6,800くらいなので、強力な味方です。そのメシアをここに連れてきて欲しいのです」


「いいだろう。知恵の略奪と献上メーティスで情報を共有するがよい」


「ありがとうございます」


 俺は青龍リオさんにメシアの情報を共有した。「成程な」と頷いた後、強制転移フォース・テレポートでメシアを呼び寄せた。


「初めまして。メシアと申します。この度はこの貴重な場にご参加させて頂きましてありがとうございます」


 俺の近くにいる青龍リオさんとアスモデウスさんにそう挨拶を行うメシア。


「アリシアを見ているみたいじゃの。強い女性の森妖精エルフは聡明で礼儀正しい」


「確かにそうだな。君のような強い力を持つ者が一緒に戦ってくれるのは光栄だ。どうかよろしく頼む」


 青龍リオさんがそう手を差し伸べたので、メシアは「お任せください」と意気込み握手を交わした。


「余の名前は青龍リオ・シェンランだ」


「妾はアスモデウスじゃ」


 そう挨拶を交わした後、今度は俺の幹部達を紹介した。特にアリシアとは同じ種族だからか、意気投合をして談笑をしていた。メシアのコミュニケーション能力が高く、とてもじゃないがダンジョンに籠っていたとは思えない社交性を持っていた。ノアとも会話をしていたようだが、メシアは外の世界がいかに楽しいかをノアに聞かされていた。



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