第417話 カルベリアツリーのダンジョン再々攻略Ⅲ
あれから2時間程の時間が経過していた。流石にこんなに強い敵との長期戦は集中力が削られる。下手をすると死んでしまうような斬撃や、アクティブスキルが飛んでくる。それが
「流石にここまで粘られるとは思ってもみなかったぞ」
ぜぇぜぇと息を切らしながら俺を見てくる龍騎士。
「負けるわけにはいかないからな」
俺がそう言うと龍騎士は俺に向かって黒刀を向けてきた。
「認めてやろう。貴様は人間でありながらZ級の強さを秘めている事を――!」
――まじ? 実際分からないんだよな。龍騎士はMPの使い過ぎで、狙い通りに動きが鈍くなっている。だけど俺もそれは同じだ。元々俺はMPが少ない人間だから、
いずれにせよこの世界のシステム上、戦闘が終了しない事には戦闘値が上がっているかどうかの確認はできない。なので、ミクちゃんとランベリオンは勿論、念波動を持っているアリシアも感心して見守ってくれている。強くなっているのが分かっていれば、それに関する何らかの発言をしてくれる筈だしな。
俺の動きを少しでも元に戻すなら、
そう思っている時だった。
「今のMPで全力を尽くす。もし、貴様が俺の技を受けて立っていたなら貴様の勝だ」
そう言われて俺は理解できなかった。体力は知らないが、確かに俺と龍騎士のMPは互いに2割~3割くらいしか残っていない。そのMP全てを使い果たすスキルを放つ気なのだろうか?
「疑問に思っているようだな。結論から言うとこれでは埒が明かないとみた。ならば、MPが残っているうちに、俺自身が得意とするスキルで貴様を倒そうと思っただけだ」
これまで龍騎士から眼力で威嚇は何度も受けた。しかし今回は初めて会った時のような実力の格差で生まれる恐怖感では無く、「絶対に殺す!」といった怨念のようなものが込められていた。
「ナリユキ様! 逃げて下さい!」
そう声を上げたのはアリシアだった。第六感が多種多様な種族のなかでも、軍を抜いて優れている
「ここで仮に逃げたら3人共殺されるんだぞ?」
「だったらミク様とお逃げください! 私とランベリオンが何とか時間を稼ぎます!」
「アリシアがここまで言うのは異常だ。ナリユキ殿、我とアリシアに任せてくれないか?」
「絶対に嫌だ。いいから任せろ」
俺がそう言うと、3人はそれ以上何も言わなくなった。ミクちゃんも何か言いたげではあったけど、顔を左右にフルフルと振って、俺の顔を見た後に目を瞑り拝んだ。
「神様……どうかナリユキ君に力を……」
そう強く祈っていた。それと同時に、龍騎士の黒刀が黒と青が入り混じったオーラを纏っていた。確かに持っているMPを全て刀に集中させたようなパワーを感じる――。
「大それた事をしているように見えるが、スキルのモーション自体は非常にシンプルだ。いくぞ」
「いいだろう」
俺がそう言うと龍騎士は「
避け切ることができない――!
完全に俺の首を斬ろうとしているのは分かった。だから俺は避け切りたかったが、顔を反らすのが精一杯だった。
結果。俺は体の半分を失う事になる。いつもならここから体が自動で再生を行うのだが、
俺はそのまま床に倒れ込んだ。ミクちゃんも、ランベリオンも、アリシアも俺の身体が残っていたようで安堵していた。それは俺の身体がいつも通り、元に戻るだろう――というところからくるものだろう。しかし、実際には俺の身体は元通りにならない。それどころか……。
「な……ナリユキ様のお身体が……」
「き……消えている……?」
アリシア、ランベリオンの順でそう声を漏らした。ミクちゃんはその異変に気付き俺の方へ泣きながら駆け寄ってくれた。
でも俺は何故か声が出ない。だからできる事としては奴に一矢報いるのみだ。
俺は右手を龍騎士に向けた。
声は出せないけどスキルは発動できる。俺が得意なアクティブスキルの一つ
駄目だ……意識が……。
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