第386話 アルボス城の調査Ⅰ

 カルディアから一通り話を聞いた。Lエルと名乗る人物の名前の本名はレガトゥス。人間と森妖精エルフのハーフらしく、神樹セフィロトという名前の特殊なスキルを使うらしい。50m級の巨人を創り出すことができるんだから相当なMPを消費するだろう。それにその巨人は本体のレガトゥスより強いらしく、魔真王サタンを発動したカルディアと同等らしい。よくまあそんな化物と戦っていたよ。


 神樹セフィロトというスキルが純粋に気になる。森妖精エルフなら誰も習得できるスキルらしいからな。ただ力に目覚めないと使えないとのことだ。アリシアですら持っていないスキルを持っていない――となるとミロクとの関連性が気になる――。


 続いてはIアイという人物もいたらしい。本名はイグニス・フランベールという人間だったらしい。Iアイも十分強かったけど、Lエルが別格だったようだ。とりあえずは本名が割れて、2人の素性が分かったから調べる必要がある。マーズベルに戻ったら調査をしなければ。


 俺とミクちゃん。それにカルディア達で、アルボス城の跡地へと向かった。激しい戦闘のなかで幻の存在とされていたお城が見事に崩壊してしまっている。それに地面も陥没しており、完全に地図を書き換えなければならない。


「この中から手がかりって本当に見つかるのか?」


「流石にこれ全部探すのは難しいよね」


 俺とミクちゃんもそう苦笑いを浮かべていると――。


「大丈夫だ。問題無い」


 カルディアがそう言い放った。勿論、問題無いの意味が分からない。


「俺の魔眼の念力サイコキネシスで振り分けたらいいんだ。ミク・アサギ。俺に強化バフをかけてくれ」


「何の強化バフをかければいいですか? MP増強くらいしかできないですけど」


「それでいい」


 カルディアの指示に従い、ミクちゃんはカルディアに対してMP増強の強化バフを行った。


「まあ見ていろ」


 俺はカルディアにそう言われてじっと見ていると、念力サイコキネシスで城の瓦礫を全て宙へ持ち上げた――。


「おいおい。念力サイコキネシスって一つを宙に持ち上げるスキルじゃなかったのか?」


 俺は思わず苦笑を浮かべた。俺達の上の空はお城の瓦礫で埋め尽くされていたからだ。


「今回、魔真王サタンを完全にコントロールできたお陰で魔眼のスキル効果がアップしたようだ」


 カルディアはそう言って瓦礫と物の2種類に分けた。


「瓦礫と物に分けたから、物の中からヒントになりそうなものを手あたり次第に探すぞ。俺は魔眼を使うからそれっぽいものはどんどん見つけていく」


「魔眼ってこういうときにも役立つのね」


「探す任務で優秀な成績をあげていたのが分かる気がする」


「この中から手がかりを探すって何日間もかかりそうだけど魔眼なら直ぐに終わりそうだな」


「そうだね。とりあえず探していこう!」


 ミクちゃんと気合いを入れて物を探し始めた。


「女性に瓦礫を漁らせるのは酷だよな――ミク・アサギ。俺は今から本やノートなどの書類を見つけるから、そこに何が書かれているか確認してもらえるか?」


「いいけど――ナリユキ君いいの?」


「勿論いいよ。てか、カルディアは女性に優しいんだな」


 俺がニヤッと笑みを浮かべると「五月蠅いな。黙っていろ」って怒られた。何気にスカーみたいなあたりされたの初めてなんだけど。スカーとカリブデウス曰く、俺の事尊敬しているって話じゃなかった? 


 そんなこんなで、ミクちゃんは書類関係の確認という作業に入った。


「本当に感謝するぞナリユキ殿」


「ん? 何だよ今更」


「身体の傷を治してくれたのにこうやって手伝ってくれていることをだ」


 俺が小物――といっても像やら家具やらをえいさほいさとどけているいときだった。スカーが俺にそう話しかけてきた。


「別にいいよ。それに元々三人には協力してもらっているし、大したお金も渡していないのに、大きな怪我を負っただろ? 何か俺が申し訳ない気持ちになっているだけだ」


「そう言ってくれるのは有り難い。本当に器の広い人間だな」


「よせよ」


「拙僧達も創世ジェスを追うなかで、どんどん彼等の事についてもっと知りたいという欲が出ている。それに、カルディアが魔真王サタンを使ってでも止めることができなかった、レガトゥスという人間と森妖精エルフのハーフも気になるところだ。あれだけ強い森妖精エルフは聞いたことがない」


「そうか――人間と森妖精エルフのハーフってのは珍しいのか?」


「まあ珍しいだろうな――それにハーフはこの世界において、トップクラスの個体値を持つと言われている。カルディアのように、人間と魔族のハーフ。レガトゥスのように人間と森妖精エルフのハーフといった、魔族、森妖精エルフ、天使族、竜族と、個体値が高い種族の血を半分持っているだけで、生まれた時からの戦闘センスやMPは圧倒的に高いのだ。それに加えて人間の成長速度が加わると、他を圧倒する実力を持っているのは当然といえば当然だ」


「成程な」


 俺はスカーの話をそう聞いていたが、スカーはこのパーティーにおけるランベリオンみたいな存在なのだろう。優しい心を持っているし、この世界についてやたらと詳しい。それに冷静になところもある。


 そう話をしながら手を動かしている時だった。


「ナリユキ閣下。そのテーブルの下にある引き出しに本があるから取って欲しい」


 カルディアにそう言われて木製のテーブルをどけてみた。そして出てきた引き出しの中にあったのは、ぐしゃぐしゃになった赤い表紙の本だった。見るからに怪しいなコレ。ちょっと覗いてみよう。



 

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