第365話 出発準備Ⅱ

 次は森で魔物を狩っていたフィオナだった。


「あたしは全然良いですよ。女性ばかりなんですよね?」


「ああそうだ」


「マルーン共和国――東の国は行った事がないので是非行ってみたいです。他は誰がいるんですか?」


「めちゃくちゃ乗り気だな。他はまだ決めていないんだ。皆の希望を聞きたかっただけだからな」


「そうでしたか。あたしは全然行ってもいいので、いつでもお声がけ下さい」


「分かった。そうするよ」


 俺がそう言うとフィオナはニコッと笑みを浮かべた。


「さんきゅーな。じゃあ最後はアリスだな」


「そうだね。フィオナさんまた来るね!」


 俺とミクちゃんはフィオナと一度別れてアリスの所へ向かった。アリスはマーズベル湖の水辺で、魚たちに餌を与えていた。そんな中で声をかけて状況を説明した。


「全然いいですよ! フィオナさんも良いって言っているんですよね?」


「そうだ」


「やったあ! 私は世間知らずでマーズベル以外の文化は分かりませんし、カーネル王国やアードルハイム帝国に行ったときも、新鮮で楽しかったので外の国に行ける機会があるのであれば是非行きたいです」


 アリスはそう言いながら目を輝かせていた。まあ人魚姫マーメイドのお姫様で外の世界を見る機会ずっと無かったもんな。カーネルやアードルハイムに行ってもまだまだ足りないか。


「分かった。じゃあ、アリスとフィオナに行ってもらう事にするよ。アリスの鏡花水月があれば何とでもなるだろ」


「確かにそうだね。アリスちゃんの鏡花水月は強力だから、簡単に任務が進むかもね」


「そう言って頂けるのは嬉しいです!」


 アリスはそう言ってぴょこっと可愛らしく跳ねた。確かにアリスがいれば任務は円滑に進むかもな。裏切り者を見つけし神官ジューダス・プリーストが便利すぎる。嘘をついている人を直ぐに見つけることができるからな。


「よし決めた。アリスとフィオナに行ってもらおう」


「本当ですか!? 必ず皆さんを救い出してみせます!」


 アリスはそう言って意気込んでいた。あとはフィオナに報せるだけだな。それとオスプレイの用意もしないといけないのか。


「アリスは適当なタイミングで館に戻って来てくれ」


「分かりました」


 アリスがそう返事をすると俺とミクちゃんは顔を合わせてフィオナの所に行った。


「そうでしたか。それは心強いですね」


 フィオナは安堵した表情を見せた。実際にアリスがいるいないで、任務の進めやすさが段違いだからな。


「キリが良いところで館に戻って来てくれ」


「かしこまりました」


 フィオナがそう返事をすると俺達は一度館に戻った。館の近くにある平原で、オスプレイを出して出発準備にとりかかった。操縦士は黒の殲滅軍ブラック・ジェノサイドの人間に任せることになる。


「メンバーはこれでいいのか?」


「ああそうだ」


 夕方に戻るって言ったから、離陸準備を進める人がいる――。ということでランベリオンとマカロフ卿を呼んで打ち合わせをすることなった。


「アリス、フィオナ、レイが要となるのか」


 ランベリオンがそう言うとレイは「任せろ」とだけ言った。本当だったらコイツ等を動かすのにも高額なお金がいるんだけどな。俺が支払っている額とログウェルが支払っていた額は全然違う。安月給で苦しくないのか? でもまあマカロフ卿がいらないって言っているんだからいいのか。


「結構遠いな。まあジェットに任せていれば安心だろ」


 ジェットと呼ばれる人物は、黒の殲滅軍ブラック・ジェノサイドで一番の操縦士らしい。戦闘機、航空機、ドローンの操作など何でも扱えるそうだ。マカロフ卿がこっちに来て仲間になった元転生者の軍人だそうだけど、元々は知り合いらしい。と、言うのも、マカロフ卿が反乱軍で活動していた頃、ジェットはNavy SEALsネイビー・シールズに所属していたらしく、マカロフ卿が乗っていた航空機を、ジェットに撃ち落された経験があるらしい。本当に奇妙な巡り合わせだよな。


「任せろマカロフ」


「そうだな。いつも通り最高のフライトを期待しているぞ」


 マカロフ卿はそう言って世界地図をジェットに渡した。


「マルーン共和国だろ? 俺にはこんな地図必要ないさ」


「問題は老眼だな」


 マカロフ卿がジェットにそう言うと、ジェットは「テメェ!」と言いながら笑みを浮かべていた。まあジェットさんは五十過ぎだもんな。


「敵だったもの同士だああやって冗談を言い合えるのは良い事だな」


「何なら俺とマカロフ卿も大概だけどな」


「確かに」


 俺とランベリオンがそう話をしていると、マカロフ卿が話に入って来た。


「後は任せておけ。大事な国交があるんだろ?」


「食べて喋るだけだぞ」


「それが重要だろ。そもそも閣下は無駄な事を嫌うだろ?」


「まあそうだな。有意義に使うさ」


「ああ。美味しいワインがあるならば輸入してくれ」


「コーヒーも欲しいだろ?」


「確かに欲しいな。まあ美味しそうものがあれば交渉しておいてくれ。あとはクスリも欲しいな」


「分かった――おい、今何か危ない事言わなかったか?」


「ん? 気のせいだろ?」


 とぼけたフリしやがってこのオッサン。今、絶対クスリって言ったよな。またブラックマーケットに売りつける気か!? まあ気にしない気にしない。聞かなかったことにしよう。


「じゃあ行ってくるな。あとは任せたぞ」


「行ってきます!」


「気を付けろよミク嬢」


「ナリユキ殿の事頼んだぞ?」


「任せて!」


 俺とミクちゃんは集まっている皆に手を振って再度アスモデウスさんの所へ戻った。 

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