第364話 出発準備Ⅰ

 俺とミクちゃんは一旦フォルボスのところへと戻った。


「もう戻ってきたのか」


「ああそうだ。結論から言うと冒険者パーティーと合流することになったぞ」


「本当か!? その冒険者パーティーは強いのか?」


「1人が5,000前後で、他の3人は4,000~5,000の間のようだ」


「それは心強いな」


「それにマルーン共和国はどうやらミロクという人物が建国した国の1つらしい。そのミロクという人物は創世ジェスと深く関わりを持っているから、創世ジェスについて有力な情報を得ることができるかもしれないんだ」


「ではマーズベルから何人か派遣するのか?」


「勿論、幹部クラス1人は最低でも割こうかと思う」


「俺としては黒の殲滅軍ブラック・ジェノサイドでもいいぞ? 奴等は世界を回っているから東の国の土地勘もあるはずだ」


「おう。俺も同じことを考えていた所だ。3日後の15時に集合だ。今日の夜には出発できると思うから準備をしていてくれ」


「俺はいつでもいけるがな。しかし、体が鈍っているから少し動きたい」


「ああ。それならいいぞ。リーズには自分の口から伝えておけよ」


「分かった」


「じゃあまた後で来るわ」


 俺がそう言うと「ああ」とフォルボスは頷いていた。


「じゃあ次だな。ミクちゃん大丈夫か?」


「勿論だよ」


 俺とミクちゃんは一度館に作戦を練った。ミクちゃんを除いて、現状マーズベルにいるのは、ランベリオン、アマミヤ、ノア、ミーシャ、ベリト、アリシア、ベルゾーグ、アリス、フィオナ、メイ、レンさん、アズサさん、ノーディルスさん、ネオンさん、マカロフ卿、メリーザ、レイ、スー、フーちゃんだ。まあ、転生者が多いパーティーだから、回復士ヒーラーは1人くらいはいると思うけど、やはりうちからも回復士ヒーラーは派遣した方がいい。機動力があるレイと、他の黒の殲滅軍ブラック・ジェノサイド数名。うちからは――。


「ヤバい。凄い悩むんだけど」


「ミクちゃんは絶対無理だし――というかヒーティスについてくるだろ?」


「うん。絶対に1人にしたら枯れるくらい搾り取られるよね」


「俺もそう思った。多分睡眠薬とか入れられてるぜ」


「絶対に嫌だな~。しかも魔王だし」


「そうなんだよ。ってそんな話をしている場合じゃない。消去法で選ぶしかないか」


「そうだね。そうなるとアリシアさんは絶対に駄目だね」


「アマミヤは最近離れていて子供達の面倒がみれていないからパスだろ」


「ノア君は自由過ぎるからアウトだね」


「ミーシャは実力的に、メイは人見知りなところを考えると無理」


「レンさん達は私達の国での防衛協力が任務だから無理だよね」


「そうなってくると、ランベリオン、ベルゾーグ、ベリト、フィオナ、アリス、フーちゃん辺りになってくるな。フーちゃんに頼むのもどうかと思うけど」


「じゃあ、一度本人達にヒアリングするのはどうかな?」


「それいいな。けどよくよく考えたら、ランベリオンは有名人だから無理だな」


「じゃあ、ベルゾーグさん、ベリトさん、フィオナさん、アリスちゃん辺りに聞いてみよう!」


「おう!」


 と、言う事で俺とミクちゃんは、刀で素振りをしているベルゾーグに話を聞きにいった。


「てな訳で協力はしてもらえそうか?」


「指示なら全然いくぞ」


「お――おう」


 そうか。よくよく考えたら断る理由無いもんな。


「進んで行きたい感じではないよな?」


「それはそうだ。拙者のスキルはマーズベルを守る為にある。ナリユキ殿も何かあったときに、拙者のユニークスキルがあったほうが便利だろう?」


「それはそうだな」


「ベルゾーグさんのスキルって強力だもんね~」


 ミクちゃんがそう言うとベルゾーグは少し嬉しそうだった。「そうだろ?」って言わんばかりの表情をしていやがる。


「次行くぞ」


「うん」


 次は防衛の仕事を全うしているベリトに会いに行った。最近では、リリアンのシンボルである50m級の時計塔、リリアン・クロックで待機していることが多い。


「お戻りなられておりましたか。アスモデウスとは会えましたか?」


「会って来たぞ。それで悪いけど、もしマルーン共和国に行って欲しいって言ったら、ベリトの気持ちとしてはどうだ?」


「そうですね――」


 困惑した表情をみせながらもベリトは考え込んだ。とは言っても8秒ほどだ。


「私の気持ちを述べて良いのですか?」


「ああ」


「それなら行きたくないというのが私の意思です。理由としては、ナリユキ様が大切にされているこのマーズベルを守りたいからです。勿論一番はナリユキ様を最優先で守りたいですが、ナリユキ様の隣は、私では無くミク様なので」


 ベリトがそうニッコリと微笑むとミクちゃんは顔を紅潮させていた。朝の事――思い出しているんだろうな。


「分かったありがとう。そのまま仕事を続けてくれ。いつも有難うな」


「ご期待に沿えず申し訳ございません」


「こっちこそごめんな。意見を聞かせてくれてありがとう。ミクちゃん、次はフィオナの所だ」


 俺がそう言って転移テレポートしようとしたときだった。


「疑問だったのですが、何故念話で連絡しなかったのですか?」


 ベリトがそう訊いて来た。


「だって皆遠慮するだろ? だから今回の場合は声の情報だけじゃなくて、表情の情報も欲しいなって思ったんだよ」


 俺がそう言うと――。


「流石ナリユキ様。私の考えが浅はかでした」


 と、めちゃくちゃ反省していた。まあいつもの事だからいいけどさ。


「次行こう」


「うん!」



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