第332話 楽園Ⅰ
「地下の空間にこんな幻想的な空間があるんだ――」
「凄いですね――」
「この世界にはこんな光る樹があるんだね~」
私とアリシアさんでアヌビスについて行きながら感心していると、アヌビスは「そういうことか」と呟いていた。
「何がそういう事なの?」
「ん? この光る樹は人工的に創られたものだ。もっと言えばここの樹の数百本全て樹で出来ている」
「それ本当――?」
まあ嘘は別に言わないと思うけど――。
「MPには2種類あるんだ。それは自然に宿るMPと人に宿るMPだ。お主もアリシアも光と聖属性が得意なら、結界に触れた時に脈のようなものを感じることができるだろ?」
「あ! 確かに!」
「それで私達はそこに結界があるか。どのような結界かを判断しておりますもんね」
アリシアさんが私の顔を覗きながらそう言って来たので私は「はい」と返事をしながら頷いた。
「その脈と人間の脈と自然に出来ている樹や水、火などのMPでは脈が少し違っていてな。魔眼で視ればそれは一目瞭然だ」
「成程。じゃあレンさんもそれに気付いているって事?」
「あやつは人間だ。MPの消費量は余の何十倍の筈だから、ちょっとちゃうな? まあええかくらいにしか思っていないと思うぞ」
何でそんなに関西弁習得できているの? 謎なんだけど。
「普段は眼帯で意図的に見えないようにしていますからね」
アリシアさんの言葉にアヌビスは深く頷く。
「そうだ。そうでもしないと魔眼が常時発動してしまって疲れるからな。戦っている最中にMP切れで死ぬ可能性だって0%じゃない」
「ということはこれを出した人は相当なMPの量を持っている人物だね」
「ユニークスキルにMPを加えることによって、より強力なユニークスキルを放つことができるんだ。流石に、ここまでの数をMPを消費して創ったのは考えられない。もし創っていたいたなら、余からすれば頭がおかしい」
「何気に酷い言い草」
「何とでもいえ――お、見えて来たな」
アヌビスはそう言って奥に見える城を指した。城と言ってもよく西洋風ではない。私達の世界でいう小田原城のような外観と色をしている。そんなお城の周りを平屋の家が囲んでいた。そしてさらにその周りには20m級の光る樹がまるで壁のように並んでいる。
「もしかしてあれが
「そうだろうな。余の
「大丈夫かな? 私一回このまま
「そうだな。そうしてくれ」
「それなら私が――」
アリシアさんがそう言ってきたので、私は首を左右に振った。
「アリシアさんは狙われているのです。アヌビスと一緒にいて下さい。というか一度帰って報告したほうがいいですね」
「そうだな。ここにいても狙われるだけだ。帰った方がいい」
すると、アリシアさんは「そうですか……」と残念な表情を浮かべていた。
「私達なら大丈夫です。それより自分が狙われているという自覚をしたほうがいいですよ?」
「分かりました。私は一旦戻り一度ナリユキ様にご報告致します。ご武運を」
「ありがとうございます」
私がそう一礼をするとアリシアさんはニコッと笑みを浮かべて、
「これでひとまずは安心だな。余はこの辺りで待っておくから行ってくるがよい」
「分かった。じゃあちょっと待っててね」
「ああ。気を付けろよ」
「ありがとう。アヌビスも大丈夫だと思うけど気を付けてね?」
「
そうニッと柔らかい表情をアヌビスは浮かべていた。マカロフ卿と同じ会った時の棘がここ最近無くなってきている。やっぱり味方になるとそうなるのかな? とか思いながらランベリオンさんの顔を思い浮かべて目を瞑った。
「ん? ミク殿か」
「ミクちゃん」
そう言って反応してくれたのはランベリオンとアマミヤさんだった。目を開けると4人は、気絶している黒いローブを着た人間の前に立っていた。人数はちょうど4人。
「どういう状況?」
「戦闘をして尋問をしていたのだ。しかし自害しおってな」
「
ランベリオンさんもアマミヤさんも非常に苦い表情をしていた。やはり
「ご主人様は見かけたか?」
「一度、
「流石ご主人様だ」
と、メルム・ヴィジャは安堵していた。
「それにしても困ったものだ。こうも情報が入らんとはな」
フーちゃんはフーちゃんでそう唸っていた。確かに行き詰まり感が凄い。
「場所は悪くないと思ったのだが――」
言われてみればそうだ。床も壁も土となっているこの部屋は、何故か中央に4つの松明が置かれているのみだった。RPGで言うと絶対に何かあるはずなんだけどな――。
私は4つの松明の中心の位置を調べてみた。天井を見たり、床を触ってみたりと――しかし何も起きない。
「駄目でしょ? 私はあまりゲームとかやったこと無いけど、こういうときって何かしらの
「何かありそうなのに何も無いっていうのは歯がゆいな」
フーちゃんもそう呟きながら辺りを見渡していた。ランベリオンに関しては死体をゴソゴソと漁って、何か持っていないかを探しているようだった。
「何も持っていないな」
「だろうね――」
そう言いながら私は辺り再度見まわした。
土の壁――。
「一か八かいけるかも!」
私が手をポンと叩くと、皆は首を傾げて私に注目していた。
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