第328話 乱入者Ⅱ

「勝てない相手ではない」


 アヌビスがそう言って飛び出してQキューに向かって杖で攻撃を始めた。


「アヌビスか。しかし、相当弱っているようだな」


 Qキューはビームサーベルでアヌビスの攻撃を受け止めていた。表情を見るからにまだ余裕のようだ。


「余が貴様なんぞに力負けするわけがないだろう!」


 グッと力が強くなったアヌビス。次第にQキューの余裕の表情は消えていた。


「馬鹿力め――!」


 キイン――という金属音が鳴り響くと共に、Qキューは大きくのけぞった。


「覚悟しろ!」


 アヌビスはそう吐き捨ててQキューの腹部に杖を一突き――。Qキューは見事に数メートル吹き飛んで後ろの壁に激突していた。


「流石だな」


 Qキューはそう血の唾を吐いた。どうやら内部へのダメージが相当大きかったらしい。


「物理攻撃無効のスキルを持っているのに――やはり超越者トランセンデンスのスキルは相当厄介だな。それにこの神聖な我々のアジトをここまで荒らされてはな」


 Qキューはそう言って周りを見渡していた。特に見ていたのはRアールが空けた大穴だ。


「――まあこれは多分Rアール破壊の滅殺光ディスラクション・レーズだな」


 Qキューはそう言いながら姿を消した。刹那、アヌビスの前に現れてはビームサーベルで斬りかかっていた。


「何度も同じ戦法で来る意地は嫌いでは無いぞ! しかし貴様の相手は余だけでは無いぞ?」


 アヌビスはそう言って私にアイコンタクトを送って来た。今の間にQキューの裏を取って聖剣セイバーで斬りかかるのもありだけど――。


 私が取った行動はアヌビスに強化バフをかけることだった。パワー速さスピード、MP、などの全てのステータスを底上げした。


「そんなものか!?」


 アヌビスはそう言ってQキューを押しのけた。まあ私が強化バフをかけているからね――。


 そして隙が出来たQキューにアヌビスが斬りかかろうとしたとき――Qキューの掌からレーザーのような攻撃が発射された。


「アヌビス!」


 私がそう言って叫ぶと「大丈夫だ」とだけ言って魔眼の回復ヒールで自分の体を回復していた。


「頑丈だな。身体に数ミリの穴は空いたはずなのに」


「余にアクティブスキルを入れた事は認めてやるが、これで貴様は余の獲物となった。後悔するがよい」


 Qキューが放った謎の攻撃はアヌビスの腹部に穴を空けていた。アヌビスにあんな穴を空けるくらいだから、死属性や闇属性の攻撃では無いとは思うけど――光属性だとしたら私が全く知らない攻撃という事にもなるし。


「それにしても見たことがないスキルだな」


「それはそうだ。我々にしか使えないスキルがいくつもあるからな」


「確かにそのようだな。破壊の滅殺光ディスラクション・レーズが一番いい例だ」


 そう言って繰り出されるQキューのビームサーベルの攻撃の嵐。アヌビスはそれを見切って全て金色の杖で受け止めていた。ただただ、キンキンという金属音連続で鳴り響く。


 そして私はタイミングを見て斬りかかりたかったけどそれがなかなかできない。QキューRアールと同様でなかなかの手練れだ。私をしっかりと警戒しながらアヌビスと戦っている。単純な戦闘値ではアヌビスのほうが上のはずなのに、この余裕っぷりはハッキリ言って異常だ。


 アヌビスが魔眼の効果を使った。


凍結フリーズ


 その瞬間にQキューは氷漬けになってしまう。


「ミク・アサギ。余のアクティブスキル系統の強化バフをかけるとよい」


「分かった」


 アクティブスキルの威力やスピードの強化バフをかけると、アヌビスは満足気な笑みを浮かべていた。


冥光の安楽死インフェルーメン・ユーサネイシャ


 アヌビスの手から放たれた無音の黒い光には、禍々しい邪悪さが込められていた。


 見事に氷漬けにされているQキューに直撃した冥光の安楽死インフェルーメン・ユーサネイシャ。直撃したのであればQキューは死んだはずだけど――。


 と、思い氷の中を見てみると、あろうことにもQキューの姿が無くなっていた。


「逃げられたな――」


 アヌビスがそう辺りをキョロキョロとしていた――一体どこに――?


 いた――!


 そう思うと私の足は無意識に動いていた。アヌビスの背中を斬ろうとしていたQキューのビームサーベルを、私はレイピアで受け止める。


「やるな」


「いきなり出てくるとはね――もしかしてステルス機能でも付いているの? 姿は全く見えなかったけど」


 ビームサーベルを受け止めたら姿を現したQキュー。どういう仕組みか分からないけど、誰かと接触を行うと姿が現れるらしい。


「よく見破ったな」


「なかなか凄いでしょ?」


 と、余裕をかましていたけど、実は内心焦っている。身体はRアールのほうが大きいのに、Qキューのほうが力強いんだけど!?


「ナイスだミク・アサギ!」


 アヌビスがそう声をかけてくれたと思ったら、アヌビスがQキューの頭を蹴り飛ばした。


 パリン! と何かが割れる音がしたので、仮面が割れたのだと推測している。頑丈そうな仮面も、アヌビスの蹴りにかかれば割ることができる――さぞ強力なのだろう。


 蹴り飛ばされたQキューは再び壁に背中を打ち付けていた。もはや、Qキューは何度背中を打ち付けたら気が済むのだろうと思うくらいに、壁に激突している。


「流石に2人は厳しいか」


 あれだけの攻撃を喰らったのに平然としているQキューは正直化物だ。


「まだ立つことができるのか――?」


「私は防御面には自信があるんだ」


 そう言って歩いて来たQキューは仮面の右目の部分が割れており、特徴的な青い目が妙に冷たかった。





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