第327話 乱入者Ⅰ

「気付いたようだな」


 Rアールは得意気な笑みを浮かべてそう近寄って来た。


「このビームサーベルには様々な施しがされていてな。斬撃無効のパッシブスキルが付いている人間でも斬る事は可能だし、傷の治りを遅くさせることも可能だ」


 それは流石に面倒くさいな。あのビームサーベルに絶対切断みたいな効果があるのか――。まあ痛みは結構引いているから何とか大丈夫だけど。


「攻撃しないと思っていそうだが?」


 Rアールはそう言って私に掌を向けて来た。透明のエネルギーがみるみる膨れ上がっていく。一体何のスキルだろう――。


「喰らえ。烈風波れっぷうは!」


 そう言って飛ばして来たのは風の塊のようなエネルギー波。名前を聞いた限りではスキルではなく殺戮の腕ジェノサイド・アームの効果のようだ。


 私は咄嗟に右の方向へ飛んで逃げた。ダイビングをしながら避けたけど、それでも風に切られたのか、足に切り傷を負った。


 ゴオオオオ――! と風が吹き荒れるような音と共に、ドガン! と、とてつもなく鈍い音がしていた。右後ろを見ると私の後ろにあったコンクリートの壁に穴が開いていた。どこか殺戮の爆風撃ジェノサイド・ブラストに似ている所がある。


 よく見てみると、烈風波れっぷうはで空いた穴は気が遠くなるほど貫通していた。パッと見た感じだと何百メートルという世界だ。


「そうだろう?」


 Rアールはそう言って烈風波れっぷうはを連射してきた。正直、こんなものに当たってしまったらシャレにならない。その避けている隙に2人のRアールがビームサーベルで襲い掛かって来た。逃げようとしたところを捉えられてしまった。


 そして私は烈風波れっぷうはに直撃してしまった――。


 重い衝撃と共に襲い掛かってくる痛み。全身が切られたかのような威力はまるで鎌鼬にあったかのようだった。


「マズいな――」


 アヌビスは魔眼を使って私を見ていた。体にちょっとした温もりを感じるから、魔眼の効果を使って回復ヒールを使ってくれているんだろう。それでも痛みがあるのはやはりこの技にもビームサーベルと同じような効果があるようだ。


「余は十分に回復した。少し休んでいるとよい」


 アヌビスがそう言って不敵な笑みを浮かべていた。


「余には本物が見ている」


 すると、3人のRアールが黙って構えた。その構えという行動アクションをしたと同時にアヌビスが一瞬にして姿を消した。


「終わりだ」


 アヌビスは1人のRアールの前に現れるなり、そのRアールの体に触れた。


「何!?」


「いつの間に!?」


 3人が並んで立っているなか、両脇のRアールがそう言って驚いていた。本物はアヌビスの圧倒的な移動速度に呆然としているようだった。


消失ブラックアウト


 アヌビスが唱えたと同時に、Rアールの存在そのものが薄れていった。同時に2人のRアールは消えてしまい、残っているのは本物のRアールが1人となっている。


「どういう事だ! 何故スキルが発動しない!」


 そう言ってRアールは今までにないくらい焦りを感じていた。


「残念だったな。このスキルは相手を消し去るスキルだ。大丈夫だ死ぬことはない。この場から退場してもらうという事だ。もっとも、どこに行くかは分からないがな。そもそも、この世界なのか、魔界なのか――またまた地下世界アンダー・グラウンドなのか――行ってからのお楽しみだ」


 アヌビスがそう言うと「クソオオオ!」と怒号を散らしながらRアールはこの場から姿を消した。


 その場からRアールが消えたと同時にアヌビスは意識を失いそうになっていた。前に倒れそうだったので私が受け止めてあげると、「すまないな」と感謝を述べられた。


「このスキルは相手を強制退場させる技だ。消失ブラックアウトと唱えてからはスキルも発動できなくなる。だから、奴のユニークスキルは消えたのだ」


「成程――ナリユキ君このスキル覚えられるかな?」


「さあな。多分今は無理だ」


「何で?」


「あいつMP70,000,000も無いだろ?」


「――それ私も無いんだけど」


「じゃあ無理だな。知性・記憶の略奪と献上メーティスで奪われても奴が習得することはない」


「そもそも。このスキルを覚えている人って数少ないよね?」


「そうだな。さて残りの奴等も始末するか」


 アヌビスは首をコキコキと左右に振って準備を整えていた。戦況を見る限り今の所はいい勝負をしているようだ。決して負けてはない。どちらかと言えば攻めている――が、相手もなかなかしつこいようだった。


「さて行こう!」


「ああ」


 そう気合いを入れ直したと同時に、私達が来た方向から足音がした。


Rアールはどこにいった? それに随分と暴れているではないか」


 そうやって近付いて来た黒いローブに身を包んだ金色蛇の仮面の男。このボイスチャンジャーのような男はまさか――!?


Rアール様の代わりにQキュー様が来たぞ!」


 と、大盛り上がりを見せていた。そうか――コイツがQキュー――!


「私の駒がやられたと思えば、次はマーズベルの戦力か。随分と私と縁があるようだ」


 と、明らかな皮肉を言われていた。


「まさかこんなところで会うとはね」


「君は確かミク・アサギだったな? 噂通りに強そうだ。それに何故かアヌビスもいるわけか。Rアールが倒されていても可笑しくはない状況だ。しかしRアールのようにはいかないぞ? 私はな」


 そう言って次はQキューが襲い掛かってきた。何としてでも、この人を止めなければ――!



 

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