第301話 赤髪の女性Ⅰ
「とりあえずあの川の近くで降りよう」
「そうね」
ランベリオンがそう言っていた場所は幅が1kmほどある巨大な川だった。あそこならば野宿でも食料がたくさんあるだろう。後はメルム・ヴィジャを倒す事と、
目的のポイントに降り立つと私達はさっそく川で飛び跳ねている1m程の魚を5匹程捕えた。樹を少し削って作った串を、全て魚の体に貫通させ、ランベリオンの炎でしっかりと焼いて食べた。
「タンパク質をしっかり摂っておかないとな」
ランベリオンはそう言って、焼いている1mの魚に食らいつく。
「今回の調査は一筋縄ではいかないわね」
「そうだな。まさか
「それにあのメルム・ヴィジャも相当強いしね」
「そうだな。我の見立てだが、あのメルム・ヴィジャという怪物の戦闘値は6,000前後あると思うぞ。逃げ切ることが出来ただけで奇跡だ」
「そうね。あのメルム・ヴィジャが放ったスキルってアルティメットスキルかしら? 威力おかしかったけど」
「いや、普通のアクティブスキルだろ。それに
「普通ならば
「そうだな。まあ特有のスキルだから威力も桁違いなのだろう。我等が避けたところで、果たして何頭の魔物の命が奪われたか――」
「気にしたら負けよ」
「そうだな」
そう私とランベリオンで魚を食べながら食事を堪能していたときだった。森の奥の方から何やら衝撃音が響いてきた。明らかに戦闘をしている音だ。剣と剣の金属音と共に地鳴りのような音も聞こえてくる。
「何か戦闘を行っているな」
「そうみたいね。しかもかなりの達人同士の戦いみたい」
「だな。我はまだ別にいいとしてミユキ殿は丸腰だからな」
「そうね。小太刀を奪われたままだから、どうせ出る事ができないのであれば取りに行きたいところではあるけど」
そう呑気に話をしていると、一人の女性が私達の前に吹き飛んできた。赤い髪に緋色のかんざしを付けているのが特徴的だ。歳でいうと20代くらいだろうか? 炎のような柄をした緋色の和服を身に纏い、その上からは背中の部分が羽根のようなデザインになっている羽織を着ていた。
そして手に握っている剣は、猛々しい炎を纏っていた。まるでランベリオンの刀だ。
「強そうな女子なのにボロボロだな」
そう言いながら森の奥を私達は眺めていた。現れ出て来たのは白いローブを身に纏った金色蛇の仮面を被った人だった。
「あらあら。あなた達は確か
この人も間違いなく
「これはいい収穫ね。3人まとめて収穫すればいいのかしら?」
「貴女も
「そうよ。けど、私を見たからには消えてもらわないと」
その女性は扇子を出すなり私達に向けて斬撃を飛ばして来た。
「
私がそう唱えると地面からは巨大な壁が現れた。
「へえ――なかなかやるわね。流石、新国マーズベルの猛者だわ」
「なあミユキ殿。もしかしてさっき剣と思っていたのってあの扇子の事じゃないのか?」
「可能性あるわね。鞘が1つも見当たらない」
「だよな」
私達がそう言っていると
「そうよ。この扇子は剣のように鋭く頑丈――
「確かにそうね」
自慢気に話をしてくれているので、あの扇子の切れ味が相当ヤバい事だけは分かった。
「じゃあちょっと本気を出すわね」
扇子の女性はそう言って連続で斬撃を飛ばして来た。避ける事自体は簡単ではあったけど、驚くべきなのはその威力だ。
「後ろの川を切ったな――」
私が避けた斬撃のなかの1つの斬撃が後ろの川を切ったらしい。後ろを見ると川がぱっくり2つに割れていた。まるで川のなかに谷が出来たかのようだった。
「どんな威力しているのよ。まるで斬撃が
「直撃したらシャレにならんな」
気を抜けない――やっぱり
「逃げてばかりじゃ私には勝てないわよ!」
そう、高々と声を上げながら斬撃を連続で飛ばして来る――。
「
私がそう唱えると、地面の中から突如として現れた巨大な氷の樹――その枝が扇子の女性を拘束する。
「我に任せろ!
太陽の温度とさほど変わらない温度の炎が扇子の女性に襲い掛かった。ランベリオンのスキルの
「やはり私達のこのコンビネーション技名前を付けた方がいいと思うんだけど」
「なかなか初見殺しだしな」
そう言っているうちに灰になっていくと思いきや――。
「ならない――」
「寧ろ消えてないか?」
彼女は一体どこへ――?
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