第282話 悪意Ⅰ

「どうだ? 分かったか?」


 俺の問いに「ぬううう……」と唸っていた。


「貴様……コードボスを侮辱する気か?」


「侮辱じゃない。現にメリーザから得た情報だ」


「貴様がメリーザと繋がっていた事も不服だが……」


「ヴェドラウイルスの事について言ったら俺に協力してくれたんだ。見せただろ? 俺の記憶。メリーザが進んで俺の協力者になってくれた」


「さっきの情報だけでは不足だ。洗いざらい記憶を分けろ」


 マカロフ卿はそう言って俺を睨みつけてきた。


「洗いざらいってその範囲だよ。まさか捕まっていた時の期間全て共有しろってことか?」


「そういう事だ。であれば、貴様が汚い手を使っているか否かを判断できるだろう」


「馬鹿か! どんだけ膨大な記憶があったと思っているんだ!? 簡略化された思い出とかじゃないんだぞ!? 現に俺がさっき与えた情報量でも少し苦しそうだったじゃないか!? それなら、もう一度悪魔との機密契約イビル・コントラクトで俺が嘘をついているかどうか確かめるか!? 議題は俺がメリーザを洗脳や脅しを使って強制的に協力させているかどうかだ!」


 俺がそこまで言うとマカロフ卿は少し沈黙した。


「確かに――何か狡いことを考えているような議題でも無い」


「分かったら手を引いてくれ。これ以上無意味な戦いをしたくないんだ」


 これは俺の正直な気持ちだった。何の意味も無い戦いでこれ以上――。


「脆弱だな――それで私達にどうしろと言うのだ? あくまで貴様等は潰すべき対象だ。文字通り終わりにしてやるぞ!」


 マカロフ卿は俺の体に触れようとしてきた。もう喰らわないぞ! 復讐の時限爆弾リベンジ・タイムボムは――!


 俺は全ての攻撃を正確にかわした。


悪魔の分身イビル・アバター


 さっきと同じパターンだ。マカロフ卿は合計6人になって俺の体に必死に触れようとしていた。


「いい加減にしろ!」


 俺は手を差し伸べてくるマカロフ卿の腕に触れた。ここまで怯えているのは本当のマカロフ卿ではないだろう。そう思って俺の復讐の時限爆弾リベンジ・タイムボムを発動させると1人のマカロフ卿は爆発した。完全に姿を消したのでどうやら分身で合っていたらしい。それにより、残っているマカロフ卿は一旦後ろに下がった。


「貴様――私の……」


 ここで一発本体に仕掛けておいて復讐の時限爆弾リベンジ・タイムボムを発動させるか……。いや、まだ早い。今行っても立ち上がってきそうな気がする――。


 そう思っていると、猛毒の雫ベノム・ドロップを仕込んでおいたスペツナズナイフが射出された。


 俺はそれを見切って避けた。分身であろうマカロフ卿が俺の背後に回り込んでいた。俺は上に手を上げるとマカロフ卿は「あ?」と声を漏らしていた。俺達の上に20m程の岩山を5個落とした。まるで隕石の如く降って来る岩山だ――避けざるを得ないだろう。


「ふざけるな! 自爆するつもりか!?」


 そう分身かもしれないマカロフ卿はそう言って俺から距離をとった。他の4人のマカロフ卿も舌打ちをしながら俺から離れる。


「自爆? そんな事しないよ」


 俺は落とした岩山はちょうど俺を囲うようにして落下してくる。ちょうどいいブラインドだ。俺の姿が見えなくなった時のタイミングで転移テレポートイヤリングを使ってマカロフ卿の後ろの取った。


「なっ――!?」


「遅いぞ」


 俺が手でマカロフ卿の背中に触れた後、蹴りで突き飛ばす。そして爆破――!


 どうやらこれも分身だったらしい。まあ本物なら復讐の時限爆弾リベンジ・タイムボムの性質上、仕掛けられている人間に重複して仕掛けることはできないからな。そう考えるといい実験になった。転移テレポートイヤリングはどうやら分身も含むらしい。


 そして岩山に関しては、俺が不要だと念じたので消えていた。


「もういいか。やってみよう」


 4人のマカロフ卿が俺を睨んできているところ、俺は復讐の時限爆弾リベンジ・タイムボムの効果を発動させた。俺を睨んでいる4人のマカロフ卿は横に並んでいる――。その中で中央にいたマカロフ卿が大爆発を起こした。


 まるでミサイルをぶち込んだかのような大爆発と鼓膜を突き破りそうな轟音――。


 花火のような閃光と共に真紅の炎が辺りを包み込んだ。


 仕掛けた張本人の俺ですら焦る威力だ。


 幸いにも俺とマカロフ卿の戦闘は皆と500m程離れていた。流石にユニークスキルでアルティメットスキルのように数キロにも及ぶ爆発とまではいかないので、近くにいても吹き飛ばされるくらいで大ダメージを与えるような威力ではなかった。それにカバーはネオンさんがやってくれていたので一安心だ。


 ベリトやフィオナも驚いているけど、レンさん達も相当驚いていた。威力だけで言うとアルティメットスキルとアクティブスキルの中間くらいだもんな。これがユニークスキルって最強すぎないか?


 俺がそう思っていると爆炎の中から人影が現れた。


「おいおい冗談はよしてくれ」


 俺は思わず苦笑いをした。全身火傷で上に着ていたスーツは完全にボロボロだが、闘争心はまだ消えていないマカロフ卿がいたからだ。


「ぶっ潰してやる。この森をな!」


 そうマカロフ卿は怒号を散らして掌を上空に向けた。


「一体何をする気だっ――!?」


 俺はこの時のマカロフ卿の異様な殺意と悪意――それに加えて禍々しく邪悪なエネルギーが集中していたからだ。仮にも戦闘値だけではマカロフ卿より上の俺だ――。その俺がアヌビスを見た時よりも体全身が恐怖している。悪い予感しかしない――。


 そう思うと俺はマカロフ卿の後ろに転移テレポートイヤリングを使って回り込んだ。俺がその手を掴もうとしたとき――。


終幕の宴グラウンドゼロ――!」


 マカロフ卿の手から3つの核爆弾が射出された――。

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