第267話 来襲Ⅱ

「ナリユキ・タテワキ。貴様は許さん」


 ただならぬ怒りの感情。俺の念波動で現在のマカロフ卿の念波動の数値は6,700。怒りによって戦闘値が上がるとかどこぞの戦闘民族かよ。


 しかし、俺に向けているのはマカロフ卿だけではなかった。レイもスーも俺の事を睨めつけてやがる。そしてメリーザの姿は無かった。


「メリーザはどうしたんだ?」


 俺がそう問いかけると、アヌビスは首を左右に首を振ってマカロフ卿の顔を見ろと顎でしゃくった。アイツの目的本当に分からない。


「とぼけるな貴様がヴェドラウイルスで窮地に追いやったんだろうがっ!」


「貴様――とぼるけるのも大概にしたほうがいいぞ」


「絶対に許さないから」


 マカロフ卿、レイ、スー。そして他の兵士達も俺に向ける視線は怒りの感情が宿っており、目を反らしたくなるほど痛い。


「何がこじれてこうなったのか知らんが――貴様はそのような人間では無いと言っているのに、このボンクラ人間共は聞く耳を持たなくてな」


 アヌビスはそう言ってやれやれと溜め息つく。


「だから、今回は余と貴様の戦いではない。マカロフ卿と決着をつけるのだ。この人間は強いが頭に血が昇ると冷静さに欠けるらしい。いや、今回はあの森妖精エルフが関わっているからか」


 アヌビスはそう言いながら金色の杖をまるで手遊びのように振り回しながら飄々とそう話す。この魔物何をしに来たんだ?


「五月蠅いぞアヌビス。貴様を先に殺してもいいんだぞ?」


「やれるものならやってみろ小童こわっぱ


 そう言ってマカロフ卿とアヌビスが睨み合って火花を散らしていた。


「ナリユキ君、メリーザさんに何かしたの?」


 ミクちゃんがそう言って俺の顔をじっと覗き込んできた。


「してねえよ!」


「もしかしてメリーザの事抱いたんか?」


 レンさんにはそう茶化させる。


「抱くか! 何か勘違いをしているみたいだな」


「勘違い? とぼけるのも大概にしろ。先日貴様の手下がうちの城にヴェドラウイルスの薬品を撒いたんだろうが」


「は?」


 俺は思わずミクちゃんを見ると、ミクちゃんは首を思い切り左右に振っている。レンさん達やベリト達を見たが同様の反応だった。


「絶対に勘違いだろ」


「勘違い? そうかあくまでシラを切る気だな」


 マカロフ卿は尋常では脚力で地面を踏んで俺の方へと飛んできた。葉巻を吸っていない事を見ると、最初から本気で襲い掛かってくるようだ。


 マカロフ卿は俺の顔に向けてスペツナズナイフを突き刺して来た。俺はその刺して来た右腕の下部を左手でゴリッという鈍い音と共に突き上げる。


「ガッ……!?」


 身体向上アップ・バーストを使ってマカロフ卿の腕を折ると、俺はそのままマカロフ卿の腹部を蹴って後ろに吹き飛ばした。


「何や。ナリユキさんめちゃ強くなってへんか?」


「動作が1つ1つ小さい。まるでレンのジークンドーみたいやん」


「まさかっ!」


「別にいいじゃん見て盗んだんだから」


 俺がそう言うと、レンさんが「見て盗めるようなもんとちゃうぞ」と呟いていた。


「見て盗んだとは言え、さっきの蹴りは自重めちゃくちゃ乗っていたもんな。骨何本か折とるやろ」


「そうだといいけどな」


「やれ貴様等!」


 マカロフ卿の怒号と共に、レイとスーと他の兵士達が襲い掛かって来た。黒の殲滅軍ブラック・ジェノサイドの幹部でも無くても戦闘値が4,000程ある兵士達を20人程連れて来ていた。対してこちらは俺を入れて1,000人。数では俺達が圧倒的に上だ――。そう油断していたのも束の間――。


 後ろの方から銃声が聞こえてきた。俺の部下達の「クソ! 誰だ!」と言っているが、その声は届かず容赦なくやられている。ギイイン――という金属音を鳴らしながら、俺の兵士達を次々と蹂躙していく。


「レンさん。後ろで何が起きているんだっ!?」


「何やらミニガンを持っている奴等がいてるらしいわ。こっちは剣や刀と遠距離攻撃はスキルがメイン。銃なんか持っているやつ少ないで」


「クソ……」


 挟み撃ちにあっているのは想定外だった。


「私が行ってくる!」


 ミクちゃんはそう言って天使の翼エンジェル・ウイングを展開して後方支援へと回ってくれた。


「よそ見をしている暇は無いぞ!」


 容赦なく襲い掛かってくるマカロフ卿。折ったはずの腕が何故か回復してやがる。


「もう訳わからねんよ」


 俺は創造主ザ・クリエイターでたオートショットガンAA-12を取り出して迎い撃つ。俺が連射をするとマカロフ卿は散弾銃をいとも簡単にスペツナズナイフで弾き返した。俺はマカロフ卿の手の内が分かるが、マカロフ卿は俺のスキルを知らない。普通の剣撃や打撃なら俺には無効だ。俺が効くのは銃撃とユニークスキルだ。


 そう思っていた時だった。マカロフ卿が俺の前から姿を消した。半径2m以内なら死の領域デス・テリトリーが発動する――。


 発動した――!


 俺が死の領域デス・テリトリーに反応して後ろに振り向いた瞬間だった――。


 俺の腹部に手を当てて、ニヤリと笑みを浮かべているマカロフ卿がいた。


 そして次の瞬間、強烈な光と轟音に巻き込まれていた。俺は原則攻撃を受けても痛みを感じない。なので、受けたダメージがどれほどのものかは正直分からないがこれは相当なダメージだ。


「ほう。不死身の国主の底力だな」


 俺は地面に倒れ込みながらマカロフ卿の顔を見上げていた。どうやら俺の肩から上の部分と、それより下の部分は、マカロフ卿の復讐の時限爆弾リベンジ・タイムボムによって吹き飛ばされたらしい。


「貴様はスライムのように再生するんだったな。ならばこれで終わりだ」


 マカロフ卿の手が俺の視界を覆った。

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