第264話 ヴァース島Ⅲ
「そうは言っても……」
「簡単には見つからないものね」
私とランベリオンは息を大きく切らしていた。
マーズベルも強い日差しが私達の体力を大幅に奪っていた。それに私はまだいいとして、ランベリオンはこの島に来るまでにずっと飛び続けていたこともあり疲労
この島の島民というか魔物は基本的には仲がいいらしく、高い知能を持った言語を話す魔物はジャックさんと普通に会話をして、
中でも一番驚いたのは喋るジャミングキメラがいたことだ。ライオンのような頭を2つ持つ、黒翼を生やしたのがジャミングキメラだが、驚くべきなのはその大きさだ。普通であれば体長は5m程だが、そのジャミングキメラは体長が12m程の特殊個体だった。ここの魔物はどこかもかしこも巨大な魔物ばかりだった。
「ミユキ殿。氷は出せぬのか?」
「ランベリオンが求めているような氷はないわ」
「氷を頭の上に乗せていい氷だな~アハハン~♪ とやりたいのだ。でなければ暑すぎて溶けてしまう」
「何で貴方がその曲知っているのよ。一体どんな人と友達だったのよ」
「まあ色々だ」
「色々って――」
そう私達が話をしていると、ジャックさんがデカイ猪のような魔物を肩に担いでこっちに寄って来た。
「いい食料を見つけたぞ」
そう言って私とランベリオンが座っている岩の前に下ろした猪の魔物を鑑定士で視ていると、アボ・ボボスという魔物だった。体長は約8mの巨大な猪だ。
「慣れない土地だから疲れたろ。これを食べよう」
「ぬ? 肉か? それは我に任せるがよい」
ランベリオンがそう言うと、ジャックさんはニッと笑みを浮かべてその場を離れた。
ランベリオンは
「ありがとうございます」
「構わん構わん。ランベリオン殿、そのアボ・ボボスを人間サイズに分けてくれ」
「ああ」
ランベリオンに渡された部分はほんの一部だけど、それでも50cm程の身をくれた。カロリーどれくらいあるんだろう。私バテている状態でこんなに食べられる自信無い――。
「じゃあ食うか」
ランベリオンはそう言っていたので、元の姿ではどれくらいのサイズの食べるんだろうと思って見てみると――。
「え……」
私はそう声を漏らした。ランベリオンが持っているサイズは、横の長さで3m程あったからだ。
「いや、ちょっと普通に引くわ」
「我は
「4,000でも十分多いけどね」
「そうであったか。まあたまにはよいではないか。本来の姿で食べるのが何が悪い」
「いやそうだけど――。本当に不思議ね
「そうだろ。奴は20m程あるからな。よし頂くぞジャック殿」
「ああ」
ジャックさんはそう言って左胸に手を当てて、何やら分からない言語で話すと食べ始めた。まあ、巨人族の「いただきます」なのだろう。
勿論、私とランベリオンは「いただきます」をして食事にありついた。一口かじった感想は口の中に広がる濃厚な
脂とジューシーな歯応え。そして、何故かお肉に少しの塩味を感じれてとても美味しい――けどハッキリと言う。全部は食べれない。
「美味しいな」
ランベリオンはそう言ってバクバクと食べていた。それはもう元の姿だから、3mの肉だろうが一口で私が食べている部分くらいの大きさを食べていた。
「暑いのによく食べられるわね」
「これほど上等な肉が出てきたら食べたくなる。
「それなのに人間を襲わないって不思議ね」
「我が単純に人間には友達が多いだけだ。カーネル王と仲良くしている裏で人間を食べているということを想像するとどうだ?」
「確かに嫌ね」
私はそう言って思わず苦笑いを浮かべてた。
「だろ? 倫理的な問題だ」
「成程ね」
私はそう言ってお肉をかじると、ジャックさんが私の顔を伺ってきた。
「ミユキ殿。味はどうだ?」
「とても美味しいですよ。ただ全部を食べることはできないですね」
「全然いいさ。女性で俺より全然小さい体しているからな」
「それにしても次はどこを探すのだ?」
「そうだな。とりあえず
「私はそれでいいわ」
私がそう頷くとランベリオンも「ミユキ殿がそう言うのならば」と言っていた。
「ではそれで決まりだな」
ジャックさんがそう言った時だった。ゴゴゴゴという地鳴りが響いた。地面を見ると、ピタリと地面の中で何かが止まった。見間違いなければ、地面の下の何かは横幅だけでも数メートルはある――。いや下手するともっと大きいい。
「ウオオオオオン!」
という鳴き声で地面の中から現れた巨大なナニカが突如として私達の前に現れた。
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