第261話 新ヴェドラウイルスⅡ
「で? 俺を呼んだという訳か?」
あれから全ての医師に
そして――。
「ほ~ん。俺にはよう分からんけど確かに前見たんとちょい形状がちゃうな。まあ俺の記憶を奪ってもらったら早いやろ」
「そうだな。じゃあやるぞ?」
「あれやったら魔眼も一回奪ってみます? いちいちするんも俺も面倒やし」
「いいのか?」
「別にいいですよ。だって戻せるんでしょ?」
「スキルに関しては今まで上手くいっていたけど、100%上手くいくわけではないからな」
俺がそう言うとレンさんは間を空けて――。
「うん。止めてとこか。奪われてそのまま返ってこやんかったら困るし」
「そうだろ? とりあえずはヴェドラウイルスの情報だけでいい」
「了解や。いつでもええで」
レンさんにそう言われて俺は
「もうこれ何回かやられているけどホンマに凄いよな。奪われたと思ったら元通りになってるねんもん。不思議やわ~」
「そんな事言い出したらこっちの世界は不思議な事だらけだろ。科学で解明できない事象が多すぎる」
「確かにそうやな。で? 俺が見たウイルスはどないや?」
レンさんにそう言われて俺は少し考え込んだ。
「正直なところ複雑だな――」
「アーツさんっていう人の知性を一度奪ったんじゃないんですか?」
「奪ったけど医学的な事全部を奪ったわけではないからな。あくまでヴェドラウイルスに関する情報だ。とりあえずこれをリーズにそのまま共有したほうが良さそうだ。それに解決策としては俺の
「やっぱりそうなんですか」
「幻覚や幻惑って滅菌Ⅴじゃ無理だし後遺症の恐れがあるからな」
俺がそう説明をするとレンさんは「ふむふむ」と頷いていた。
「何か、ナリユキさん医学の専門家ぽくなりましたね」
「よせよ。せめてオタクくらいにしておけ」
「確かにそうかも」
と、レンさんは笑みを浮かべていた。
「まあ、リーズに共有して見つけるんは、
「そういう事」
「ナリユキさんの
「まあそんな事だ」
俺達がそう話をしていると。リーズが「うっ」と唸った。目をゆっくりと開き「ここは?」と呟く。
「病室ですよ」
ミクちゃんがそう言うとリーズは身体を動かそうとしたので、「まだ寝ていて下さい」と告げた。
「申し訳ございません。他の患者は大丈夫ですか?」
「残念ながら何名かは息を引き取っています。先程の報告によると、爆発に巻き込まれた人間と、ヴェドラウイルスに感染してしまった患者合わせて50名の尊い命が犠牲となりました」
リーズは「クソッ!」と拳でベッドの布団を叩いた。しかしリーズはもっとショックが大きいだろう。自分さえいれば犠牲者数を減らせたかもしれないのに! と思うと非常に悔しいだろう。
「記憶は曖昧ですが、熱が酷くて体中に湿疹が出て来てしまい倒れたのを覚えています。そこから事態は急展開したのですね?」
「はい。命を落とす人間が増えてしまいました。ただリーズさんが悔しがることは無いと思います」
「そんなことありません。気の緩みがヴェドラウイルス感染に繋がってしまったわけですし」
「いいんだって。とりあえず無事でよかったよ。菌は完全に死滅しているしな」
俺がそう言うと、リーズは「えっ?」といった感じの表情をしていた。
「治ったんですか!?」
「そうだぞ? 俺とミクちゃんは滅菌Ⅴというスキルを
「そうでしたか。ありがとうございます」
リーズはそう言って俺に向かって頭を下げてきた。
「看病していたのはミクちゃんだからミクちゃんに言ってくれ」
するとリーズは「はい」と返事をするなり「ありがとうございます!」とミクちゃんに言うと「どういたしまして」と笑顔でミクちゃんは応えた。
「気分はどうだ? 気持ち悪いところとか無いか?」
「いえ、特に問題ありません」
「じゃあ新しいヴェドラウイルスが魔眼で見るとどうなっているのかを共有するけどいいか?」
「ええ。勿論」
起きて早々に仕事を頼むのは酷かもしれないが、
「見解は?」
「そうですね……」
リーズは顎に手をついてそう唸った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます