第239話 休息Ⅰ
「ナリユキ様! ご無事でしたか!?」
そう言って飛んできたのはクロノスだった。本当に皆に迷惑をかけてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいだ。なにより、ミクちゃんが俺の胸のなかでいっぱい泣いてくれたのは生きていてよかったと思った。正直なところ、クロノスや兵士の生首が入っていたのを見せられたときは本気で死にたいと思っていたからな。
「大丈夫だ迷惑かけたな。他の兵士も大丈夫か?」
「問題ありません。本当にミク様と
見た時に直ぐに分かったがミクちゃんは
「本当に2人共ありがとう」
俺がそう言うと、ミクちゃんもマスクを外している
「さて帰りましょうか」
「そうですね! それにしてもナリユキ君
「不思議だろ? それだけあの枷の効果であるスキルを発動できないっていう概念が強いって訳さ」
「いつでも逃げることができたのによく耐えたな。やはり魔物の国の主の器だ。マーズベルでここまで器の大きい人間はいないんじゃないか?」
「ミクちゃんやランベリオンも同じことしていましたよ。他の人は分からないですけどね」
「私はどうか分からないけどランベリオンさんはそうだね」
ミクちゃんは自分がどう行動するかを考えていたがランベリオンに関しては同意していた。
「では兵士達のところへ向かいましょう」
「ああ」
俺達はクロノスの案内でお城か1km程離れた小屋についた。
「ご無事でなによりです!」
「数々の非礼申し訳ございません。クロノス様からお話はお伺いしました。いつでも逃げることができる状態だったにも関わらず我々の為に犠牲になったと」
兵士達にはそうやって握手を求められた。俺からすれば巻き込んでしまった事は本当に申し訳ないと思っている。あれが幻覚で本当に良かった。しかし、あの幻覚はどうやって発生していたんだ? 俺はいつの間にかメリーザに幻覚をかけられていたのか? それともあの部屋に何らかの仕掛けがあったのか? 全然身に覚えがないんだけど――。
「それではとりあえずは大丈夫そうだな。余は戻るぞ?」
「ええ。ありがとうございます」
俺がそう言うとミクちゃんもクロノスも、兵士5人も
「さて、ログウェルってことはアマミヤとランベリオンがいるんだよな?」
「多分そうだと思うよ?」
「なら進捗状況聞いてみるか」
「そうだね!」
「と――その前に――」
今はどうしても連絡したい人がいる。感謝の気持ちでいっぱいな人がもう1人――。
《今大丈夫か?》
《問題ありません。無事に逃げることができたようですね》
そう。俺が感謝を伝えたいのは俺の為に涙を流して俺の腕を治してくれたメリーザだ。
《お陰様でな。腕ありがとうな》
《いえいえ。しかし次に会う時はて本当の敵同士になるかもしれませんね》
《元から敵同士だけどな。マカロフ卿の事について何か教えてくれ。そしてヤバくなったら俺の元へ来い味方として全力でもてなすよ》
《その言葉ありがたいです》
《その代わりと言ったら何だけど1つ聞きたいことあるんだけどいいか?》
《ええ。答えられる範囲でしたら――》
メリーザは少し戸惑いながらそう応えてくれた。
《ヴェドラウイルスをまいたのはコードか?》
《ヴェドラウイルス? ヴェドラウイルスってあのヴェドラウイルスですか?》
おいおいちょっと待て。何でメリーザが知らないんだ? 一体どうなっていやがるんだ?
《知らないのか?》
《はい。もしやマーズベルでヴェドラウイルスの感染者が出ているのですか?》
《そうなんだ。だから元々アンタは敵だけどもし良かったらヴェドラウイルスの情報を収集してくれないか? 一体誰がその計画を立てたのかを――Qという男が事の発端だ。その男がイーサンという男に瓶を飲ませてマーズベルに調査をさせたのが原因だ》
《分かりました。できることはやってみます。貴方はしばらくこの国に?》
《どうか分からん。また何かあったときは連絡するさ。無理なときは応答しなくてもいい》
《解りました。くれぐれも気を付けて下さい》
《ありがとうな。メリーザも気を付けてくれ》
《ええ。では》
そう言って俺達の会話は終了した。横でその内容を聞いていたミクちゃんが俺の顔をじっと見つめている。
「ものすごくメリーザと仲良さそうだったけど」
うわ。可愛いけどめちゃ怒っているな。ふくれっ面なってる。
「メリーザは俺を助けてくれたんだ。マカロフ卿に腕を斬り落とされたときに元に戻してくれたんだよ。んで、そん時にやりすぎです! って言って反抗したからマカロフ卿の拷問はそこで終了。腕を再生してくれた挙句に逃げて下さいという提案までされた。少なくともメリーザは自分の中にある正義で動いているんだ」
「そうなんだ。まさか敵まで味方にするとはね~」
ミクちゃんはそう言ってニヤニヤとした笑みを浮かべている。
「俺もメリーザの以外な正体に吃驚だよ。さあ小屋の中に戻ろう。外はやけに寒い」
「うん。そうだね」
俺はミクちゃんにそう言って小屋の中に戻った。
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