第221話 冥府の化身Ⅲ
マジかよ。全然ピンピンしていやがるじゃねえか――。
アヌビスはムクリと起き上がり息を切らしていた。当然体はボロボロだが驚異の再生速度で元通りだ。俺と同じで体力は自動で回復するらしいのでこれじゃあキリがない。
「そのスキル厄介だな。それは確か銃というものだろ?」
「そうだ」
「ここまで余に手傷を負わせる人間がいたとはな」
そう言ってアヌビスは俺に手を向けて来た。俺は一気に距離を縮めようとしたが。
「遅い」
俺は魔眼のスキルで使用できる
「こうなっては何もできまい」
アヌビスは地面にひれ伏している俺に対して手を伸ばして来た。動きたくて動けない――大方手を伸ばして来るスキルなんてアヌビス場合決まっている。そして俺なら容赦なく使う。そう
手がギリギリまで伸びて来たときに俺はある作戦を思いついた。
「
「どこに――!?」
俺が向けた目標というのはひれ伏している地面――。
次の瞬間俺の視界は一気に真っ白になった。
結構えげつない範囲の爆発を起こしたから俺の足と腕は吹き飛んでしまった。しかしながら、痛覚無効のお陰で痛みを感じず問題なく再生している。顔と胴体を残して吹き飛んだ足と腕は見事に本体である俺の身体にくっついていく。
「頭のいかれた人間だ」
アヌビスは、四肢が全て吹き飛び、顔も半分無くなっているという喰らいっぷり。どうやら俺よりひどい有様になっていたらしく、地面に向かって
「だってその作戦しか思いつかなかったからな。じゃあ今の間に攻撃するぞ」
俺がそう言うとアヌビスは俺の顔をギロりと睨めつけて俺を
「ってえな――」
俺は気付けば民家に吹き飛ばされていた。住民は完全に避難しているので問題は無いのだが――どうせ生き残ったら俺が全部建て替えてやるから好きに暴れてもいいが――。
10m程先のアヌビスを見ると既に奴は立っていた。俺はアヌビスに向かってデザートイーグルを放ったが、鉛弾はアヌビスの心臓に向かって行っているところだった。
最後に残っていたアヌビスの両手は完全に再生してしまい、アヌビスはその銃弾を手で止めようとしていた。
「よっしゃ!」
俺がそう言うとデザートイーグルの弾はアヌビスの手を貫通して、アヌビスの腹部に命中した。手で受け止めようとしたらしいが、威力を舐めていたようだ。しかし、手で止めたことによって軌道が変わってしまったので、心臓には届かなかった。まあ十分だろう。
「これからは銃弾には気を付けたほうがいいな。本人の戦闘値が高いこともあるが200%アップというのは相当なものらしい」
アヌビスはそう言って冷静に俺のスキルの分析をしている。正直、お互いが鑑定士でスキルを把握しているのに、こんだけ殴り合うのもなかなか珍しい事だ。
よし――。
俺は手からボルトアクション式のスナイパーライフルのL96A1を取り出して、2倍のACOGサイトを付けて撃った。勿論狙うのは頭――。
しかし突如として姿を消したアヌビス――。
「まさかっ!?」
俺がそう思った時にはもう遅かった。アヌビスは
その瞬間。俺は腹部にじんわりと痛みが広がっていた。金色の杖に仕込み刀を用意していたらしい。今までスルーだったけど、痛み無効ってのは苦しめる痛みであって耐えれる痛みは効くんだな――。アヌビスはそれを知っていやがる――。自身を苦しめるっていう曖昧な表現がこれか――。
俺がアヌビスの杖を持って――。
「オラアアア!」
無理やり抜いてやった。抜くときの痛みは苦しめる痛みらしいので全くもって痛くなかった。
「どうだ」
俺がそう言って笑うと――。
「ほざけ!」
俺はアヌビスの飛び蹴りを、先程の傷口のところに思いっきり喰らってしまって、数メートルとばされてしまった。勿論、どこの誰か分からないこの家のテーブルやら椅子やらをグチャグチャにしてしまったのは言うまでもない。
「今のは痛くねえ――けどダメージは思い切り喰らっているな。体力の消耗がやたら激しい」
俺は息を切らしながらそう呟いていた。壁にもたれ掛かっている俺にゆっくりと近付いて来る。
「流石にきつくなってきたか?」
そう問いかけて来たアヌビスも息を切らしているので、互いに憔悴し切っているのは明白だ。寧ろ、俺なんかより銃弾を浴びまくっているアヌビスの方が喰らっているダメージは大きいだろう――。
「アンタも息を切らしているじゃん」
「ほざけ」
そう言ってアヌビスは俺に向かって金色の杖を投げて来た。咄嗟に出した防弾チョッキでその杖の攻撃を防ぐ。
「妙な衣服をガードに使ったか――」
「返すぜ」
俺はそう言って杖をアヌビスに投げつけた。アヌビスが杖をキャッチしたと同時に俺は立ち上がってAA-12を再度取り出して連射した。
「これで近づけないだろ!」
俺の銃弾の嵐にアヌビスは顔を必死にガードしていた。弾切れになると、再度風穴だらけになったアヌビスの身体は再生していく。
いい感じだ――。
アヌビスの呼吸は先程とは比べものにならない程乱れていた。
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