第216話 クセの強い冒険者Ⅰ
「これはこれは、貴方様がナリユキ・タテワキ閣下ですね。お噂はかねがね」
そう満面の笑みを浮かべているカルカラの貴族達と握手を交わした。まあ他国とこんなタイミングで交流するとは夢にも思わなかったが――。
そのなかでも俺の目についたのはこの2人だった。
「初めまして。私はストーク・ディアンと申します」
そう挨拶をしてきたのはストーク・ディアン公爵だ。公爵の刺繍が入っているのと、鑑定士でこの人が相当身分が高いことは分かる。金髪のオールバックが特徴的な白人男性だ。若い時はもっとイケメンだったんだろうな――今もイケメンだけど――とか思いながら握手を交わした。
「マーズベルの国主のナリユキ・タテワキです。宜しくお願い致します」
俺がそう言うとディアン公爵はニッと笑みを浮かべていた。正直なところ、外面の笑顔なのか、本当に俺と会えて嬉しいみたいな笑顔なのかは分からなかった。
「初めまして。私はオリヴァー・アードレッドと申します。宜しくお願い致します!」
そう割と元気な挨拶をして来たのはオリヴァー・アードレッド公爵。何だろ、何かチャラい。金髪で甘いマスクを持っているピアスをしているこの人は、英国スターのような雰囲気が出ている。
「アードルハイムでのご活躍はどこの国に足を運んでも耳にしますからね」
「あれ? そうなんですか?」
「そりゃあもう凄いですよ!」
と、食い気味に俺の手を両手を包み込むように握りながら、上下にブンブンと振り回すアードレッド公爵。
「無礼だぞアードレッド公爵」
「興奮でつい――申し訳ございません」
ディアン公爵の指摘で、アードレッド公爵は俺から手を離すなり謝罪をしてきた。
「で、大丈夫なのでしょうか? ヴェドラウイルスのほうは」
「正直手の打ちようが無いですね。マーズベルで採れる薬草で何とかするしか無いようです」
「大変ですね――」
「とりあえず、徹底的に調べるしか無いと思っております。そこで何とか感染を防止させないと」
「20年前のような悲劇を見るのはゴメンですからね……くれぐれもお身体を労わってあげて下さい」
「ありがとうございます」
俺がそう言うとディアン公爵は笑顔で再度俺に握手を求めて来た。俺は差し伸べられた手をがっしりと掴み握手を交わした。
「それではの皆の者。ナリユキ殿よ。ヴェドラウイルスに関してはワシも調べておくから、何かあれば連絡する。くれぐれも気をつけてな」
「ありがとうごますます」
アーツさんはそう言って、カルカラの貴族達と一緒に馬車で去って行った。
それから2時間後。アマミヤとランベリオンはログウェルの調査に向かった。そして俺はというと、クロノスが人間、
「こちらになります」
俺はクロノスと一緒にギルドのスタッフに案内されて部屋に到着した。
「今更だけど部屋何部屋あるんだよ。客室ってそんなに使わないだろ」
「ここのフロアだけですよ。あとのエリアはまた違う部屋になっておりますから」
「ふ~ん」
そう言ったが、流石東京ドームくらいの大きさだ。もはや何でもアリなんだよな。
「さあ入ってください」
俺はクロノスにそう促されて3回のノックを経て入室した。
黒革のソファの下座に座っていた3人は俺を見たが興味はあまりなさそうだった。
「アンタがナリユキ・タテワキか?」
そう問いかけて来たのは真ん中に座っている銀髪の前髪で右目が隠れている男だった。肩が露わになっている黒い服を身に着けている。そして、全身に黒いタトゥーが入っているようだ。鑑定士で視る限りこの人は人間らしいが、歳は俺と変わらないくらいの好青年だ。
「俺はナリユキ・タテワキだ宜しくな」
俺がそう問いかけても「ああ」と無愛想に返されるだけだ。やりづらい!
「皆、自己紹介してもらるかな?」
「我は
「俺はカルディアだ」
そうぶっきらぼうに話しかけて来たのは先程の銀髪の男。カルディアという名前――ファーストネームが無い事から――。
「ああ。クロノスには言っていなかったが、俺は魔族と人間のハーフだ。だから名前がカルディアって名前だから」
成程ね――じゃなくてこの人は人の心が読めるのか?
「無駄な詮索はしなくてもいい。俺は人の心が読めちまうんだ」
カルディアはそう吐き捨てるように言った。確かにクセが強い。何でこの3人が冒険者やっているのか分からん。
「
最後は
「早速話を聞こうか。俺達にこなせない任務などない」
カルディアのその発言には自信の2文字が刻まれていた。
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