第204話 マーズベル満喫Ⅱ

 ラーメンを食べ終えると、辺りの花屋に寄ったりなどマーズベルを堪能してもらった。次第に夕方になっていたので俺達は屋敷の温泉に入っていた。


 以前のものとは違い、露天風呂は民家や自然の景色を見ながらお湯に浸かれるようになっている。屋敷そのものは3階建てとなっているが、屋敷の敷地内に温泉を2ヶ所設置しており、1ヶ所目が日本庭園をできる温泉。そして、もう1つは高さ20m程に位置する景色を見るためにだけに造った温泉棟のここだ。


 ここ自体はそれほど大人数は入れない。それに俺の許可なしでは入れないようにしている。男性風呂と女性風呂と家族風呂の三ヶ所を設けている。


「ええ湯やな~アハハン♪」


 この通り関西弁で替え歌をするほどは満喫してくれたようだ。


「まさかナリユキさんと裸の付き合いするとはな」


「同じ転生者なんだから不思議でも何でもないだろ。ほら無くなっているぞ」


 俺がそうそうやって徳利とっくりを差し出すと、レンさんは御猪口おちょこを差し出した。


「ありがとうございます。このぽん酒ホンマに美味しいですわ」


 レンさんはそう言いながら日本酒をガバガバ飲んでいる。既に一合無くなっているから飲みっぷりが半端じゃない。


「酔いは回っていないか?」


「大丈夫大丈夫。俺酒まあまあ強いから」


 レンさんはそう言って手元にある日本酒を口に運んだ。


「ぷは~。何やこんなゆっくりしておいてええんやろうか」


「いいんだよ別に」


「そうか。それにしても温泉もめちゃくちゃ気持ちええな~」


「そりゃあ檜風呂ひのきぶろだからな」


「何でも手から出せるってのは便利やけど、水をここまで引っ張ってくるのは難しかったんとちゃいます?」


「そうでもないよ。マーズベルは源泉が何かと多いから掘り当てる事ができるから、水を循環させる装置さえ上手くいけば何とでもなる」


「成程な。確かにマーズベルは水に恵まれていますもんね」


 そう俺とレンさんが話をしているときだった――。


「やめてください~」


「ええんやん。うわ柔らかっ!」


「ほら、べりーちゃんも触ってみたらどうですか?」


「本当にいいの? うわ柔らかっ!」


「でしょ?」


 と、という何ともピンクな声が聞こえて来た。


「俺こっちの世界来てからヤッてへんからムラムラするわ」


「やめとけ」


 レンさんはすうと深呼吸した。


「見に行ってきていいですか?」


「いい訳ないだろ!」


 俺がそう言うとレンさんは「ケチ」とぶっきらぼう吐き捨てた。


「俺もあそこ混ざりたい」


「混ざったら乱交パーティーが開催されそうだな。つかやっぱり冒険者パーティーだと手は出さないのか?」


「だってそういう雰囲気なれんからな~。ナリユキさんはべりーちゃんとしてるからええんやん」


 レンさんの発言に俺は飲んでいた日本酒が喉に引っかかってむせた。


「ゲホッゲホッ」


「何やしとんのかいな。羨ましい」


 レンさんはジトリと俺を睨んできた。


「ノーコメント」


「何や。男らしないな~。それにしても気になるな。ネオンちゃんのおっぱい」


「やっぱりネオンさんGくらいあるよね。私より大きいもん」


 これはミクちゃんの声だな――。


 俺はレンさんの反応が気になったので見てみると――。


「さてどうやって夜を誘おうか。いや、処女やからな~」


 と、目をギンギンにさせて隣の女性風呂を眺めていた。


森妖精エルフは貞操観念がガチガチだからなピュアピュアな女性が多い」


「ネオンちゃんに関しては子供の作り方すら分かってへんからな」


「可愛いじゃん」


 俺がそう言うとレンさんは立ち上がった。


「俺はやる!」


 そう何かを決意した表情を浮かべていた。


「おいまさか――」


 俺が呼び止めようとすると、レンさんは身体向上アップ・バーストを使って男性風呂と女性風呂を仕切っている木の柵を跳び越す。


 すると、レンさんの顔に木の桶がめり込んでいく。


 木の桶と共にそのままレンさんは落下した。


「アンタ最低!」


 アズサさんの怒号がレンさんに向けられたが、頭の上にヒヨコがピヨピヨと飛んでいるので多分聞こえていない。


「どうだ見れたか~?」


「ネオンちゃんのおっぱい――最高」


 見れたらしい。気になるのはミクちゃんの胸だ。


 俺はレンさんの顔面を引っ叩きレンさんを起こした。


「ミクちゃんの裸は見たか?」


 俺はむりやり笑顔を作ってレンさんを睨めつけた。


「み……見てませんって!」


 レンさんは冷や汗を流しながら慌てて弁解した。


「本当に?」


「ホンマですって!」


 俺の顔がそんなに怖いのか。レンさんはこれでもかと言うくらい焦っている。


「万が一ミクちゃんの裸見ていたら殺すからな」


「怖い怖いっ! 絶対に見ませんって! 俺が見たんは、アズサとネオンちゃんだけ」


「よしっ」


 自分で言っておいて何だが、「よし」とは何だろう。


「さてお酒の続きを飲もう」


 俺は御猪口おちょこで日本酒を飲んでいた。


 ここから見える景観は絶景だ。新緑の森に、俺達で作り上げた民家やお店。そして横に広がるマーズベル湖と存在感を放つリリアン・クロック。


 こんないい景観がもし壊されることになったら――。


 そんなマイナスの事を考えていた。森妖精エルフ達の結界は完璧だ。上空からのアルティメットスキルをも耐え凌ぐことができる程強固なものだ。でももしリリアンに潜入していて暴れる者がいたら――。


 内側からの攻撃になるので被害は甚大になるだろう――。


「まだまだ考慮すべき点は沢山あるな」


 俺は日本酒を流し込むと、再度自分の御猪口おちょこに日本酒を注いだ。

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