第189話 四龍と龍騎士伝説Ⅰ
「カルベリアツリーのダンジョンに龍騎士がいたのか?」
「ええ。とても強くて、私、ミク、ランベリオン、アリシアで立ち向かったのですが惨敗でした。それにやられたときは首を切られたのですが、気付いたらダンジョンの外に放り出されていたのです。しばらく気絶はしていたようなのですが」
「その現象に関しては正直分からんな。龍騎士というのは、余と共闘した勇敢な戦士のことだ。余もあまりこの件については話すことがないから伝説として扱われているが実話だ。それに伝説という程大それたことではない」
「そうなんですか?」
「うむ。世界平和を守っただけの話だからな」
「いや、十分大したことですよ」
「余の称号は確認しただろ?」
「ええ。四龍の頂点ですよね?」
「そうだ。頂点といっても余以外の三龍がいなくなったから、余が頂点に君臨しているだけ。実際には黒龍が一番強い。その黒龍を龍騎士が封印してくれたのだ」
「成程――。戦闘値が8,000だったんですけど実際はどうなんですか?」
「ちょっと低いな。余と共闘した龍騎士は8,500くらいあったからな」
いやいや。強すぎるだろ。どんな次元の戦いだよそれ。
「もはや別次元ですね」
「よく言う。お主もこの世界に間もないだろうが。今の調子だと世界一強い生物になっても問題ない」
「そう言って頂けると嬉しいです」
まあ確かにそうかもしれない。この世界に来てまだ一年も経っていないけど戦闘値は7,000と他の種族と比較しても群を抜いているような気はする。
「龍騎士はどんなスキルを使っていたのだ?」
「私の鑑定士でもスキルは確認できませんでした。なので見えない剣技を披露されとしか――」
すると、
「どうかされましたか?」
「鑑定士Ⅵで見れないというのは原則考えられないので、その龍騎士のユニークスキルの可能性もあるな。剣速は早かった?」
「まあ見えなかったので」
「だろうな。龍騎士の剣速を見極めるには余が持っている天眼のような、洞察力に長けたスキルが必要になる。このスキルの中の1つである
マジか――。
「いや、1つだけ方法ありました。800層にはニーズヘッグという天眼を持った龍種がボスでした」
「ではそのボスを天眼を入手できるまで狩り続けるということだな。流石、悪戯好きの先代のカーネル王とコヴィー・S・ウィズダム殿が作り上げたダンジョンだな。なかなかの鬼畜だ」
と、笑みを浮かべている
「実際、龍族とは相性が悪いんですよ。空を飛べないので」
「そうか。空を飛べる種族は何種類かあるがなかなか厳しいが遠距離攻撃で銃で撃墜できるだろ?」
「それが
そう説明すると
「それは骨が折れるな。そうだ少し話は逸れるがナリユキ殿に見せたいものがある。この際、四龍と龍騎士にまつわる話をしておきたくてな」
「時間は全然あるのでいいですよ」
「そうか。ならついて来てくれ」
俺はそう言われたので
「もうすぐ着く」
そう言ったので前方を確認すると、太陽光が遮られていない開けた場所があった。逆光が眩しくてつい目を瞑ってしまう。
水のせせらぎの音がすることから、川があるのは容易に想像できた。それにめちゃくちゃ涼しい。マイナスイオンを全身で浴びているかのようだ。少し神経を研ぎ澄ますと小鳥のさえずりも聞こえる。そうだ。マーズベルの森林でミクちゃんとお散歩デートしよう。
そう思っていたらゴオオオという音がしていた。その正体は恐らく激流の音だろう。それに雨のようなザアアアっという水面を強く打つような音がしている事から、連想されるのは滝だ。
「着いたぞ。あそこに見える滝の裏にある」
――出た。隠れ家的なやつだ。漫画とかだとあの裏に悪人のアジトだったり財宝があったりするんだよな。
獣道が終了して、眼前に広がるのはそれはもう自然の大神秘だ。ちょっと予想を遥かに上回っていた。
悠々と聳える山から降り注ぐ大量の水。高さ900m程のところから落ちているらしいので、前の俺達の世界で言うところの、世界最大の落差と言われている、ベネズエラにあるエンジェルフォールと似ている。
肌で感じる大自然のエネルギーをまるで滝の如く浴びている。
「すげ~」
「ここはオストロンの名所でもあるからな。名前はドラグーンフォール。国民が余に因んでそう名付けた」
「流石、神様」
「褒めても何も出ないぞ」
俺は冷静に考えた。まさかと思うが――。
「もしかしてさっき言っていた滝浴びって……」
「ああ。あそこでやっている」
「いやいや。異次元すぎるでしょ。どんだけの負荷がかかるんですか! 普通死にますって」
「余は水を司る龍だ。何ら問題は無い」
「そうですか」
もう何かやること規格外だな。凄すぎて意味が分からん。
「こっちだ」
「よし乗っていいぞ」
「よし」
「何で勝手に――。あ……」
俺は気付いてしまった。水面を見ると流れ緩やかだったのが、突如として流れが激しくなる川。それにより小舟が勝手に滝つぼの方へ向かって行った。
「どういう事ですか――?」
「気付いたようだな。余は水を司る龍なのだぞ?」
流れが激しくなってきたせいか、小舟は大分揺られているので、しっかり舟の端を手すり代わりにしないと振り落とされそうだ。
「そろそろだな」
すると、驚くことに滝が真っ二つに割れてしまい、水のアーチができた。真っすぐだった滝が流れを変えて、一本道から二本道になったようだ。当然、その滝は両端に辺に飛んでおり、虹がかかっていた。
そして薄暗い洞窟の中へと入って行く小舟。
俺は滝のアーチを潜るという異次元な体験をした。
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