第190話 四龍と龍騎士伝説Ⅱ
洞窟の中に入って行くと、右側には岩の足場がある。そして、数十メートル先の停泊所があり、そこに小舟を停める。
小舟が停泊所に着くなり、
「いいぞ。上がってくれ」
「はい。ありがとうございます」
当然ゴツゴツとした岩の足場の為、不安定ではあるが海岸を歩いている感覚と大差ない。
ザアアアとまた音が鳴り始めたので後ろを振り返ると、滝の扉がこの洞窟を閉じた。
当然辺りは薄暗くなる。俺が辺りを見ていると、
「よし。準備は出来た行くぞ」
そう言われて洞窟内を案内される俺。ひんやりとした空気がとても心地よく感じる。それもそのはず、ここに流れている川が驚くくらい透き通った水色だからだ。マーズベルとはまた違った自然を味わえているので、これも一興ということだ。
しばらく薄暗い場所を歩いていると、巨大な黒い鉄の門が現れた。門の両脇には灰色の龍の像が置かれている。
「
と、よく解らない言葉を
門が完全に開かれると、この空間の半分を埋め尽くしている結晶体の床と壁。その中でひと際存在感を放っている8メートルほどの巨大な石板が前方に見えた。
そして、その石板に描かれているのはこれまた黒の龍だった。全体的なイメージとしてはニーズヘッグとよく似ている。
「これは?」
「黒龍の石板だ。なかなか圧巻だろ?」
確かにこんな大きい石板見たことが無い。しかし、何故この石板に黒龍が埋め込まれているのだろう。
「この龍は何なのですか?」
「これぞまさしく封印されている黒龍だ」
「そうなんですね」
あまりにも唐突な説明に、驚くどころか自分でも引くくらいの薄いリアクションを取ってしまった。
「あまりに驚かないんだな」
「ええ。まあ――。何かいきなりすぎて逆にリアクションが低くなってしまいました」
「それもそうか。これを見てもらったのは実のところ、この像を見てもらいながら伝えねばならんことがあったからだ」
「何ですか?」
「黒龍があと数年で復活する」
――。え? それはそんなにマズいのか? 実感が無いんだけど。
「そもそも何ですけど、黒龍は一体どれほど強いのですか?」
「強いという次元ではないな。S級が国を亡ぼせる生体なら、Z級は世界を亡ぼせる力を持つ。それに一番最悪なのは黒龍の気性が荒い事だ」
「龍ってだけでヤバそうですもんね」
「ヤバいっていうレベルではない。少し気に入らないことがあれば、すぐに国を亡ぼす超迷惑な龍だ。2,000年程前の話だが、この黒龍が大暴れをして世界の2/3が亡んだ。それを余達が食い止めたという訳だ」
「2,000年前ってそれまた随分前の話ですね」
「確かにな。それほど前の話なので封印が解けかけている。これを見てくれ」
「水晶体と言ったら水色を想像するだろ?」
「ええ」
「しかしこれは黒色だろ?」
「はい」
「実はこの黒いのは黒龍の邪気だ。長い年月をかけてこの水晶の封印を解こうと、コイツは足掻いていた。しかし我々ではそれを食い止める事ができなかった。何故ならば、この封印は良くも悪くも高度すぎる為、我々がいじることが出来ないのだ。その結果、黒龍が封印を解くのを待つという結果になった」
「龍騎士はないんですか?」
「その当時の龍騎士はいない――」
と、
「その余と共に戦った龍騎士は今は魔界にいる。お主がガープから譲り受けた
「はい」
「それは所有者が使ってその扉の中へ入ることができるのだが、その扉に入った世界が魔界だ。我々が住む世界にいる魔族達とは比べ物にならない程凶暴だ。強さはさほど変わんらが容赦や遠慮の概念がない。その世界に君臨している魔王の一人になってしまったのだ」
話が脱線しすぎて訳が分からんくなった。
「龍騎士が魔王? どういうことですか?」
「黒龍を封印する際に、龍騎士は黒龍の邪気に汚染されてしまったのだ。その強大すぎる邪気は、どれだけ正義感が強くて芯が強かったとしても汚染するほどのものだった。それに龍騎士は何人ものを仲間を失っている闇を抱えていた。その封印していた負の感情が爆発してしまい、奴はこの世界にいては、この世界を亡ぼしてしまうと考えて、自ら魔界へと姿を消した。魔界出身の者にその名前を言えば、全員答えてくれるだろう」
「何という名前なのですか?」
「奴はルシファーと呼ばれている」
うわあ。いかにもって名前だな。
「あれ? 魔王って何人いるんですか? ガープの記憶だとベリアルっていう魔王もいますよね」
「魔王は全部7人存在する。と言ってもアスモデウスがその一人だがな」
えええええ――。あの人魔王でもありこっちの世界の国主なの? 分からんことだらけだ。
「その中でもルシファーとベリアルは別格に強い。後はナリユキ殿からすれば知れているだろう」
「つまり、今の私じゃその2人には勝てないということですね?」
「そういう事だ。だから龍騎士がいないので我々でこの黒龍を何とかするしかないのだ。余の命に代えてでも食い止めねばならん」
そう言って石板を眺める
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