第186話 龍騎士Ⅱ

「珍しいね! というか凄い大所帯だ。まあ座りなよ」


「すまんな。他の皆は立っていて話を聞いてもらう事になるけど」


「全然かまいませんよ。ついて来ただけなんで」


 俺達はルミエールに個室に案内され、2人掛けの赤いソファに座らせられた。置かれているローテーブルは高級感溢れる金で出来ている。一体いくらするのだろう――。


 ソファに座ったのは、俺とミクちゃん。相手は勿論ルミエールとクロノスだった。そういや、側近はもう一人いるって言っていたけどいつ登場するのだろうか。


「話をする前に紹介しておくよ。入っておくれ」


 ルミエールがそう言うと、突如として光が人の形をして現れた人。


 長い銀色の髪に、スカートの丈が膝くらいまである純白のドレスに身を包んでいる。そして背中には天使の羽根が生えている綺麗な女性だった。 森妖精エルフと同様白い肌が特徴的だ。


「お初お目にかかりますナリユキ・タテワキ閣下。私はカーネル王の御側に務めさせて頂いております、大天使のガブリエルと申します」


 華やかな印象はアリシアと似たようなところがあるが、どこかまだ幼い気がする――。すると一つの疑問が浮かび上がる。歳は一体いくつなのだろう。


「俺はナリユキ・タテワキ」


「側近のミク・アサギです」


「貴女様がミク様でしたか。うちの国の冒険者がお世話になっているようですね。誠にありがとうございます」


 ガブリエルはそう言って頭を下げた。ミクちゃんはとんでもございませんと片手を左右に振って照れている。ミクちゃんが何故照れているのかは分かる。ガブリエルさん超綺麗だからだ。


「で、今日は何をしに来たんだい? あ、もし良かったら観光する!?」


 と、何故かウキウキなルミエール。本当にこの人王様の仕事しているのかな? ってたまに思うんだけど。


「まず一つは俺達はカルベリアツリーのダンジョンに行った」


「今回は何層まで行ったんだい……? また金貨出さないといけないのか――」


 と、酷く落ち込んでいるルミエール。クロノスがまあまあとルミエールの背中をさすっている。


「俺達は900層まで行った」


「900層ですか!?」


 そう食いついてきたのはガブリエルだった。


「そのボスは鎧を着た男ではなかったでしょうか?」


「ああ。そうだ」


「900層というと――」


 ルミエールがそう考えている時に、クロノスが割って入った。


「龍騎士ですね」


「そうだ龍騎士! けれども正直な話、900層以降の情報ってうちの国でも取り扱っていないんだよね」


「それヤバくね? 設計図の一部無くなっているみたいじゃん」


「その通りなんだよ」


「カルベリアツリーのダンジョンを造られた先代のカーネル王は悪戯好きな方でしたので、あえて情報を伏せていたのかもしれませんね。お仕えしていたのですが数百年前の事ですので。ランベリオンさんは覚えていますか?」


「我はそもそもダンジョンの情報そんなに知らないぞ」


 と、言っているが、600層くらいまで行っていたので、そんなに知らないというのは嘘になるがここはスルーしておこう。


「龍騎士は確か、古来に黒龍や白龍が現れた時に立ち向かった英雄ですね。私も書物でしか見たことが無いのであくまで伝説としか残っておりません」


「黒龍?」


「白龍?」


 俺が黒龍と言った後に。ミクちゃんが続けて白龍? と問いかけた。 


「古来龍騎士によって封印された2頭の龍です。四龍のうちの2頭なのですが、1頭は同じ四龍の青龍リオ・シェンラン様と龍騎士が共闘して戦ったと言われております。ですので、青龍リオ・シェンラン様に話を直接聞いた方がいいかもしれませんね。先代は龍騎士に強い憧れをお持ちでしたから、その龍騎士をモチーフにして造られたのが、そのボスだったかもしれません」


「成程。でも、四龍って言ったらもう1頭はどうなっているんだ?」


「赤龍ですね。赤龍は青龍リオ・シェンラン様と好敵手だったようなのですが、数千年前に青龍リオ・シェンラン様が赤龍を倒したと言われています」


「と、いう事は龍は俺より弱い?」


「いえ。青龍リオ・シェンラン様は歳もありますし、長い間戦闘から離れているので、随分と弱くなっているようです。噂では全盛期の強さはZ級だったとか――」


 ガブリエルのその発言に思わず苦笑いを浮かべる俺。いや、どんだけ強かったんだよ。


「言われた通り、青龍リオ・シェンランさんに聞いた方が良さげだな」


「お力になれず申し訳ございません」


 ガブリエルはそう謝罪をしてきた。


「で、ルミエール。今回はもう1つ報告がある」


「何だい?」


「レンさん達もよく聞いていてほしい」


「うす」


 俺は後ろで立っているレン達にそう言った後、ルミエール達に視線を戻した。


青龍リオ・シェンランさんから得た情報なんだけど、どうやらマカロフ卿がゾーク大迷宮ってところに入ったらしいんだ」


 俺の言葉に、クロノスとガブリエルは大きく驚き、ルミエールは「へえ」と薄いリアクションだった。


「ゾーク大迷宮は本当に実在していたのですね」


「本当ですね。あくまで噂程度でしか聞いたことがなかったものですから。しかもその期間は数百年という長い期間。本当に実在しているのであれば、世間に公表するべきですね。歴史的な大発見です!」


 と、強く豪語するクロノス。圧が凄い――。






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