第168話 ペンタグラム・サミットⅣ

「特に使うことは考えておりません。このユニークスキルは敵とみなした者のみに使う予定です。ですので、まず国民には使わないでしょう。私にはガープから授かり受けた知性・記憶の略奪と献上メーティスで、知性と記憶を飛ばせば、どれだけ強い人でも、その時は戦闘不能になるでしょう。私は恐怖政治なんてものはしたくありません。あくまで、豊かな人生を送ってほしいだけですから」


「そうか。こちらとしては、アードルハイムのような独裁者がいれば使ってほしいものだ。皆はどう思う?」


 青龍リオ・シェンランさんが他の皆に意見を求めると。


「ナリユキ・タテワキ閣下よ。国民に使わないのは真じゃな?」


「本当だ」


「――。ええじゃろ。では妾からの提案じゃ。其方のマーズベル共和国を入れて、これからは 六芒星ヘキサグラムにせんか?」


 アスモデウスさんはそう言って俺を見つめてきたが。


「ちょっと待て。そんな簡単に決めていいものではなかろう。カーネルの小僧もレンファレンスも何か言わんか」


 レンファレンス王を呼び捨てって――。半端ねえなヴェストロさん。


「その話を私からしようと思ったので問題はありませんよ」


「無論問題ない。マーズベル共和国には是非発展してほしいからな」


「むう。青龍リオよ。どうするのだ?」


 ヴェストロさんが青龍リオ・シェンランさんをそう言い放った。


「この時点で2VS3だ。それに余の意見としては是非加入してほしいからな。ナリユキ・タテワキ閣下よ。お主はどう思っている? 加入すれば、我々と同盟と国交を結ぶこと。また、国民は勿論、観光客も種族問わず平等の生活を提供することと、対応をしなければならない。要はアードルハイム帝国のような事は規約違反になるということだ。どうだ?」


「勿論いいですよ」


「決まりだな」


 そのときの青龍リオ・シェンランの表情は、笑っていた気がする。マスクで口元が分からんから気のせいの可能性もあるけど。目元は普通だったしな。


「ではこれからは六芒星ヘキサグラムじゃのう。妾は仲間が増えて嬉しいのじゃ」


「貴様はオスが欲しいだけだろ」


「ギクッ」


「心の声が聞こえていますよ。アスモデウスさん」


「最近また女性が増えてきての。ヴェストロもカーネル坊も殿方をよこしてくれんから困っているのじゃ」


 と、言いながら人差し指同士をツンツンさせているアスモデウスさん。あれ? なんか可愛いんだけど。


「そうじゃナリユキ・タテワキ閣下よ。妾の国に男を何名か送ってくれぬか?」


「いや――あの――」


「いい加減にしろアスモデウス」


 青龍リオ・シェンランさんがそう言って鬼気迫る表情でアスモデウスさんを威嚇していた。凄い迫力だ。青色のただならぬ膨大なオーラがまるで、龍――。いや、この人龍だった。ランベリオンと一緒で人型化ヒューマノイドになっているだけだ。


「悪かった。私語は慎む」


 と、青龍リオ・シェンランさんの方に両手を向け、めちゃくちゃ焦るアスモデウスさんだった。


「それではマーズベル共和国を加えたと同時に、我々はこれから五芒星ペンタグラムを改め、六芒星ヘキサグラムと名乗る。異論は無いな?」


 その質問に対して全員が頷く。


「よし。では次だ。アードルハイム帝国の一部始終を報告してもらおう」


「それならホログラムにこれを同期させたほうが早いかと」


 ルミエールがそう言って取り出したのは、ボールペン型のカメラだ。


「それは何だ?」


「ナリユキ・タテワキ閣下が、アードルハイム帝国に襲撃する前、冒険者パーティーに調査を依頼していました。そのときに、冒険者パーティーに持たせたカメラと呼ばれるアーティファクトのようです。カメラは我々の目の水晶体のような役目を果たす代物です」


「なるほど面白い。映すがよい」


「クロノス」


「は」


 ルミエールはクロノスにそのペンを渡す。受けとったクロノスは、ホログラムの操作盤に触れるなり、俺のボールペン型のカメラを同期させていた。正直仕組みは全く分からん。だってホログラムと同期できるような仕組みは別に作っていないし。


「今から映し出されるのは、その冒険者パーティーのリーダーだったレン・フジワラが撮った映像です。何日分もありますので重要な点だけをご紹介させて頂きますので宜しくお願い致します」


 クロノスがそう言うと、全員頷いていた。


 そして映し出された映像は、酒場で揉めてラングドールと出会ったところから始まった。俺も一度見たがここに映し出されているのは、残虐なシーンも勿論ある。それこそミリタリー映画のワンシーンを見ているようで、こんな世界線があってもいいのかというような感じだ。


 そうして、ラングドールに閉じ込められて、調査していた所や、マカロフ卿と戦闘して死にかけたこと。ミクちゃん達と会った後に捕まってしまい拷問を受けたこと。そこで魔眼に開眼してガープ達から逃げた事。ベリトと共闘して、帝国兵と戦って蹴散らしたことなどだ。視点なども変えてノーディルスさんのものを映した。


 ここでは帝国軍と戦闘していたことなども映し出されているので、俺達が見ていない視点もあった。そして俺がアードルハイム帝国を壊滅させたところもあったのだ。


「これが一部始終です。ここからは、アードルハイム帝国の帝都を、ナリユキ閣下が自身のユニークスキルを使って復興させました」


 クロノスの説明を終えたが、付き人――。特に女性の表情はとても暗かった。それはアズサさんが受けた暴行シーンがあまりにも酷かったので、ミクちゃんも顔を反らしていたくらいだ。


「女性にあのような暴行を加えるとは聞いていた通り酷い話じゃの」


「しかし、アードルハイム皇帝はもういない。ここにいるナリユキ・タテワキ閣下率いるアードルハイム帝国、レン・フジワラ、アサギ・ミク、ノーディルス、ネオン、そしてアードルハイムの反乱軍の協力により、以前のアードルハイムは沈んだ。これは今までの独裁国家を変える大きなチャンスだ。アードルハイム皇帝の親族も全員滅され、アードルハイムの血は根絶したからな。アードルハイム共和国に戻すのが妥当だと思うが」


 青龍リオ・シェンランさんのその意見に全員承諾した。


「良いだろう。アードルハイム帝国のその後はマーズベル共和国が見てほしいのだがどうだ?」


「勿論構いません。自分で行ったことはきちんと責任とります。しかし1つネックになることがあります」


「なんだ?」


「我々が壊滅させたことによって主要戦力は大幅ダウンしました。ですので、恨みを持つ他国がアードルハイム帝国に攻め入り、無害な人々を虐殺する可能性もあります。ですので、アードルハイム帝国に直ぐに駆けつけることができる装置なり、連絡できるアーティファクトなどが欲しいのです」


「いいだろう。余の国が使っているアーティファクトがある。後日余が使者と共に伺おう」


「わざわざ出向いてもらわくても、今日のように強制転移フォース・テレポートを使って頂ければ――」


「ん? マーズベル共和国には行ったことがないから行ってみたいのだ。何か問題あるか」


「いえいえ。光栄ですよ。その時は是非おもてなしをさせて頂きます」


「楽しみにしている」


 青龍リオ・シェンランさんがそう言うと――。


「何だ貴様等」


青龍リオが他国に行くなんて珍しいのう」


「あの面倒くさがり屋の青龍リオがな」


 と、アスモデウスさんとヴェストロさんがそう言うと、ルミエールとレンファレンス王は頷いていた。


「――。次の議題にいこう」


 そうして青龍リオ・シェンランさんはスルーした。


 





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