第167話 ペンタグラム・サミットⅢ

「今回は新国、マーズベル共和国とアードルハイム帝国についてだ。まずはマーズベル共和国の国主ナリユキ・タテワキ。自己紹介をお願いする」


 俺はそう言われたので席を立ち深呼吸をした。


「マーズベル共和国、国主ナリユキ・タテワキと申します。この度はこのような貴重な場に、ご招待を頂けたこと、誠に感謝しております」


「次は、付き人ミク・アサギ」


 すると、ミクちゃんは戸惑いながらもふうと深呼吸をして口を開いた。


「マーズベル共和国の国主、ナリユキ・タテワキ様の補佐を務めさせて頂いておりますミク・アサギと申します。普段はマーズベル共和国の中央都市、リリアンにある医療施設の長と、国防衛を任されており、ナリユキ・タテワキ様の付き人として、様々な役目を担わせて頂いております」


「其方、なかなか面白いのう。近、中、遠、全てのレンジが得意な上に、防衛、強化バフ回復ヒールまでできるとは、それに洗脳も解ける――。これほど優秀な女性は見たことが無い。妾の側近になってほしいくらいじゃ」


 アスモデウスさんはそう言ってミクちゃんを艶めかしい目で見ていた。まるで狙った男を落とすときのような――。


「アスモデウス。ちょっかいをかけるな。ミク・アサギはマーズベル共和国の貴重な戦力だ」


 そう言ったのはレンファレンス王だ。何か知らんがカバーをしてくれた。


「いえいえ。そう言って頂けて光栄です。アスモデウス様ありがとうございます。レンファレンス王、お気遣い頂き誠にありがとうございます」


 ミクちゃんがそう言って一礼を行うと、アスモデウスさんは柔らかい笑みを浮かべていた。


「自己紹介はそれくらいでよい。次にナリユキ・タテワキ閣下よ。お主はどのような経緯でマーズベル共和国を築き上げたのだ」


「私は、一人でも多くの人に豊かな人生を歩んでほしいと思い建国に至りました。どうせやるなら国を造りたいと――。そこで協力してくれたのは、ランベリオン・カーネルでした。彼は洗脳されてモトリーナの村を襲っていたのですが、そんなときに私とミク・アサギが協力して彼を倒しました。そこから仲良くなり、マーズベルの土地を好きに使ってもよいと言われて建国しました」


「手から何でも出せるスキルだったな?」


「はい。そのスキルを使って家をどんどん建てていきました」


「成程。よい、座れ。これから立つ必要はないからな」


「かしこまりました」


 俺はそう言われて席に着き、ミクちゃんは元の場所、俺の後ろの壁際で立っていた。


「カーネル王はマーズベル共和国と国交を結んでいるのだったな? 他国から見てマーズベルをどう見る?」


「マーズベル共和国は、皆様がご存知の通り自然が豊かです。ましてや、マーズベルの鉱山、鉱脈に関しては、戦争の火種になるほど貴重な素材があります。その他にも貴重な資源が多いですが、今まではその魔物達を統べることができる人間はいなかったので放置の状態でした。ですので、ナリユキ・タテワキ閣下が統べる今のマーズベル共和国は非常に価値のある国です。また、ナリユキ・タテワキ閣下の指示で、魔物が人を襲う事はありません。かつてとは違い非常に穏やかな場所となっております」


「それは何故だ?」


 と、俺の方を向いてきた青龍リオ・シェンランさん。


「森の主、雷黒狼王ベオウルフのベルゾーグを、ここにいるミク・アサギが倒し、仲間に加えたことと、森の管理人、森妖精エルフの族長、アリシアが仲間に加わったことで、森の全権は私が握っているからです」


 すると、俺、ミクちゃん、ルミエール、クロノス以外の表情が変わった。相当驚いているらしい。


「アードルハイム帝国を潰せるわけだ。今の話だと敵に回すと非常に厄介だ。主要人物を全て教えてもらおう。恐らく皆が知っている人物だと思うが――」


 青龍リオ・シェンランさんの言葉に、付き人達は固唾を飲んでいた。対して、アスモデウスさんは、どこかワクワクしたような表情を見せている。ヴェストロさんはふうと溜め息をついていた。


「こちらにいるミク・アサギ。先程出ていた飛竜ワイバーンの王、ランベリオン・カーネル。カルベリアツリーのダンジョン700層のボス、ノア。森妖精エルフの族長、アリシア。獣人ミーシャ。雷黒狼王ベオウルフのベルゾーグ。人魚姫マーメイドの姫アリス。先日、お騒がせした魔族のベリト。闇森妖精ダークエルフのフィオナ。そして、新たに加わったアードルハイム帝国軍第2騎士団団長、ミユキ・アマミヤ。以上が我が国の主要戦闘員です」


 俺がそう言うと、付き人達は目を丸くして驚いていた。


「絶対に喧嘩を売ってはいけない国だな」


「戦力偏りすぎじゃの。少し羨ましいのじゃ。ミユキ・アマミヤは聞いた事が無い名前だな」


「何だアスモデウス知らんのか。彼女もまた転生者だ。☆を2つ持っている氷の騎士。絶対零度アブソリュート・アイスを使用できる手練れだ」


 青龍リオ・シェンランさんの説明で苦笑いを浮かべるアスモデウスさん。絶対零度アブソリュート・アイスってエグいアルティメットスキルなんだな。


「しかし、一番強いのは誰がどう見てもナリユキ・タテワキだな」


「そうじゃの。お主も気付いていると思うが、妾と青龍リオは鑑定士Ⅵのスキルを持っておってな。ユニークスキルが3つあるじゃないか。1つはガープが持っていた知性の略奪と献上メーティス。いつの間にか記憶まで共有と強奪できるみたいだがそれは置いておこう。それだけで大問題じゃが、その 悪魔との機密契約イビル・コントラクトというスキルは、まさかアードルハイム皇帝のものか?」


 アスモデウスさんの質問、俺に一気に剣幕な表情を浮かべていた。レンファレンス王も知らなかったはずだが、今更驚くことはない。みたいな表情を浮かべていた。


「そのようなスキルが彼にあるのであれば一大事です。一刻も早く倒さねば!」


 そう言ってアスモデウスさんの付き人をしている魔族の女騎士、エリゴスが刀を抜いた。彼女は桃色のショートカットの髪をした可愛いらしい女性だ。


「まあ待て。其方はナリユキ・タテワキ閣下のステータスが視えとらんじゃろ?」


「しかし!」


 と、エリゴスは俺に向かって剣を突き付けて来た。


「彼は物理攻撃無効、斬撃無効、スキルバリアーにスキルリターン、洗脳無効に自動回復、自動再生、痛覚無効。オマケに手から何でも出せるスキルもあるし、銃撃に特化したパッシブスキルまで付いている。こんな人間の限界値を超えた化物にどう立ち向かのじゃ?」


「そ――それは――」


 エリゴスはそう言いながらアスモデウスさんの方を見る。


「妾達が束になっても死人が出るだけ。それに彼の側近にはミク・アサギがいる。スキルの相性などを考えると、妾達が不利なのは明白じゃ」


 まあ確かに俺達の方が有利だわな。


「大変、失礼致しました」


 エリゴスは落ち込んだ表情を見せながら引き下がり、元の位置についた。


「妾の部下がすまんかったのう」


 アスモデウスさんが頭を下げると、エリゴスも頭を下げて詫びていた。


「別に構わない。それより、悪魔との機密契約イビル・コントラクトをどのように使うつもりだ?」


 青龍リオ・シェンランさんからそのように問いかけられた。







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