第164話 お迎えⅡ

「水晶を通して念話のように通話することができるパッシブスキルを持った者がいると聞いたことがあります」


「それって俺達も入手できるものなのか?」


「できますね」


 すると、ルミエールが「あっ!」と大きな声を出しながら手を叩いた。


「そういえばカルベリアツリーのダンジョンで、700層~800層の間で出てくる魔物に、そういうスキルを持っている魔物がいると文献に残されていた!」


「都合いいな」


「カルベリアツリーは色々なスキルを得ることができるからね。でも、適正は恐らくミクさんの方がいいかな。ナリユキは入手できないかもしれない」


「確かに。でままあカルベリアツリーのダンジョンはなかなか潜れないな。お金稼ぎはできるけど」


「クリアされたらまたうちから金貨が――」


 と、頭を抱えるルミエール。いや、別にいいじゃん。


「まあその件に関しては保留にしておくよ1週間に1回ほど部下に様子を見に行かせる。あと、結界も張っておいた方がいいな」


「それこそ、第2騎士団長だったミユキ・アマミヤでいいんじゃないか?」


「確かにそうだな。アマミヤはある意味最強だし」


「そうなのかい?」


「ああ。アマミヤの絶対零度アブソリュート・アイスは対象者を必ず閉じ込めるっていうアルティメットスキルだ。ノアとアリスはそれで閉じ込められて、ミクちゃんは一度マカロフ卿とアマミヤに捕まったんだ」


「成程。それは確かに強い」


「ノア様を封じ込めるなんて凄いですね」


 クロノスがそう言って感心していた。今の俺なら分かるがクロノスの念波動の数値は4,800。ミクちゃんより少し弱くて、ベリトより少し強いくらいだ。


「アマミヤの念波動の数値自体は4,700ほどでアリシアと同等レベルだ。しかし、絶対零度アブソリュート・アイスのせいで、対個人戦の初対決なら、鑑定士Ⅵが無ければ勝てる相手は早々いないだろうな」


「成程。でもノア様がやられるって不思議ですね」


「ミクちゃん曰く、いきなり絶対零度アブソリュート・アイスを放ったらしい。遠慮という概念が無いんだよな。負けると思ったら、いきなりMPを大幅に消費して、相手を封じ込める」


「なかなか凄いね」


 ルミエールはそう言いながら少し顔を引きつっていた。遠慮がない人間が一番怖いからな。


「マカロフ卿はどうしたんだい?」


「マカロフ卿は行方不明だな。あっちにはメリーザっていう森妖精エルフがいた」


 俺がそう言うと、クロノスの顔が強張った。


「メリーザですか――。アリシアと同等レベルの森妖精エルフですね。なかなか手強いですよ」


「らしいな。それに小さい少年が降って来たと思ったら、突然視界を奪われて、その隙に逃げられたんだよな」


「成程。マカロフ卿も戦力を揃えているってことだね」


「しかも相当手強い感じですね」


 ルミエールもクロノスも神妙な顔つきをしてそう呟いていた。


「いずれにしても問題は山積みだね。少しずつ処理をしていかないと」


 そう色々と話していると、ノックの音が聞こえた。


「失礼致します」


 そう言って入って来たのはミクちゃんだった。


「やあミクさん。お邪魔してるよ」


「お邪魔しております」


 ルミエールが言った後にクロノスがそう続けた。


「ご無沙汰しております。ゆっくりして行ってください」


 ミクちゃんはそう微笑んだ後、俺の隣に座った。


「お邪魔します」


「どうぞ」


 ルミエールはミクちゃんにそう微笑みかけていた。


五芒星会議ペンタグラム・サミットを開催するんですか?」


「ああ。今回の件に関しては絶対に集まらないといけないからね。それにナリユキ・タテワキという存在も、もっと知ってもらわないといけない。マーズベルを建国した張本人だからね」


「確かにそうですね」


 俺は特に心配はしていなかったが、ミクはどこか不安気な表情を浮かべていた。


「大丈夫だよ。私達はマーズベルの味方だ。変な事は起こらないさ。確かに今回の件は議題になるけど。マーズベルが安全な国で且つ、非常に高い国ということをアピールするつもりでいる。そして――」


 と、妙に真剣な表情になるルミエール。


「マーズベルには五芒星ペンタグラムに入ってもらうつもりだ。まあ名前は変えるけどね」


 そうとんでもない発言をするルミエール。


「そんな勝手な事考えていいのかよ」


「これは私が考えているだけであって正式な決定は他の国のトップの意見も聞く。もし、マーズベルが五芒星ペンタグラムに入ったら、その時点で他国との同盟を結ぶことになる。なので、貿易などもできる関係性になる訳だ。そもそも、マーズベルのワインや鉱脈は、前も言ったように需要が高いからね。マーズベルは一気に人気国になり、知名度がグンと上がると踏んでいるよ」


「確かにそれは生産性いいな」


「でしょ? それに同盟って形だから、当然困ったときは互いに助け合う事もできる。デメリットは特にないな。私からすればいい事づくしだから。クロノス何か思い当たる?」


「ありません」


 クロノスは少し考えた後そう言った。やっぱり自国を独占し、好き放題やりたいトップだけが加入しないのだろうか。いや待て――。そもそも全世界にそれくらいの国があるかも分からないな。


 そう考えていると、また部屋をノックする音が聞こえた。


「お料理お持ち致しました」


「入っていいぞ」


 俺の声で入ってきた従者サーヴァント。日本酒と同時に持ってこられたのは、竹を長細いお皿にして、小鉢を5つ入れた前菜だった。












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