第144話 激突Ⅴ
「クソ。この私がこんな小娘に」
「何を言うてるねん。アンタみたいな実力の人間が、うちに勝てる訳ないやん。大人しく降参しいや」
「降参などできるものか! 私はアードルハイム帝国軍だ! 帝都を出る輩がいれば処罰するのが我々の使命なのだ!」
「んじゃ寝とき!」
アズサ殿はそう言って、ラドクルスの頭をもう一度小突いた。
「ぐぬうううう」
そう唸りながらこっちを睨めつけるクラッツとイーナ。
「ええい貴様等! この女を八つ裂きにしろ!」
クラッツの号令で、敵兵の視線が一気にアズサ殿に集まった。我が
「うわあ。久しぶりに見たけどノーディルスの
アズサ殿はそう言いながら少し苦笑いを浮かべていた。
「さあ、どうする?」
ノーディルスはそう言ってクラッツとイーナをヒョイと持ち上げた。さっきまで飛んでいたのに、いつの間に後ろに回ったのだろう。ここまで何でもありなアンデッドいるのか? もはや我の中ではレン殿の魔眼より、ノーディルスのスペックのほうが気になる。如何せん
「放せ! 俺達をどうする気だ!」
「どうもしないさ。降参すればそれでいいんだ。ただ、降参しないというのであれば、貴様等の臓器を潰すまでだ」
ノーディルスは2人を抱えながら、その鋭利な指を心臓付近にトントンとノックするように動かしていた。
「俺はいつでも貴様等の命を奪える。しかし、少しばかりだが、仲間だった時間があったから見逃してやってもいいという選択肢を与えている。さっさと俺達の前から姿を消せ」
ノーディルスがそう言って少し力を入れると、2人は気絶してしまった。
「骨の無い奴等だ」
それを見ていた他の敵兵は、恐れおののき撤退を始めた。
「何や、もう終わりかいな」
と、残念そうに呟くアズサ殿。まあ、正直なところ兵力はいくらあっても、我等の個々の実力が圧倒的に上だからな。
そう敵兵が撤退していき、我等は勝利を確信し歓声を上げていた。
我等は引き返し、ラングドール達がいる場所へと戻っていた。すると、ラングドール達の部隊が他の何者かの部隊と戦っているではないか。勿論、ラングドールも剣を抜いて好戦していた。
「どういうことだ?」
咄嗟に我はノアを探した。彼が最終防衛ラインにいるなら問題ないはず。
すると、あの男が何故かいたんだ。ノアがいれば兵力数なんて関係ないと思っていたが、戦っている相手は葉巻を咥えたロシア人――。マカロフ卿だった。
「テメェ等――。一体何を企んでいるのか教えてもらおうじゃないか」
「絶対言わないもんね」
「頑固なガキだ」
マカロフ卿は手に持つスペツナズナイフに気を取らせて、ノアの腹部を思いっきり蹴っていた。勿論ノアに全くと言っていい程ダメージはないのだが、ノアは自分が後退させられたことに驚いていた。
「オジサンやるね」
「化物を相手にするのは骨が折れるな。メリーザ。俺に
「はい!」
知らない名前が出て来た。メリーザと呼ばれる女性はどこに? と、探していたが、そのメリーザと呼ばれる女性はマカロフ卿の近くにいた。
姿を見て我は驚きを隠せなかった。金髪の長い髪に、翡翠の首飾りをしている耳の長いとても綺麗な女性だ。マカロフ卿はこんな大物を味方につけているのか。
「ノア! メリーザはアリシアと同等以上の力を持つ有名な
「そう言うんだったら加勢してよ! ほら
我は
「させません!」
メリーザが持っているレイピアが我の頬を掠めた。硬質化のパッシブスキルが発動しているのにも関わらず、我の皮膚に傷を付けるのは、ミク殿と同じようなスキルを有しているのだろうか。案の定、鑑定士で視てみたが、我のスキルレベルでは、
頬から伝う血を我は拭い、ナリユキ殿から譲り受けた炎が出るジェネラル・ワイバーンの刀だ。
「ランベリオン・カーネル。邪魔をするなら遠慮なく斬りますよ」
「残念ながら我のテンションは最高潮でな。ちょうどうぬのような強敵と戦いたかったのだ」
「それは光栄です。それにしても美しい刀ですね。緋色とはまた趣があります」
「これは我の親友が作ってくれた大切な刀だ。そして」
我が刀を振ると同時に噴出する炎。これにはメリーザも驚いて大きく一歩下がった。
「それが、貴方の炎なのか、刀から出ている炎かで大分変ってきますね」
「それは受けてみたら分かるぞ」
「そんな危ない橋は渡れません」
「ほう。全属性に強いと聞いたことがあるが?」
「貴方のスキルで
「まあそうだな」
「もしその炎が貴方の炎なら、振り回す度に炎が出てきていると考えるとたまったものではありませんね。しっかり
見極めるから」
そう言ってメリーザは突きを放ってきた。第2ラウンドの幕開けである。
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