第139話 救出Ⅰ
煙が晴れると致命傷を負っているアマミヤがいた。俺のロケットランチャーを喰らって、鎧は所々損傷している。当然の結果と言えば当然の結果だ。それに念波動の数値もアリシアと同じくらいだろう。
だが、それにしても手応えがない。
「戦うの止めようぜ」
俺がそう手を差し伸べると、アマミヤはゆっくりと手を伸ばしてきた。
「格好いい事言ったけどやっぱり全然駄目だわ。MPの使い過ぎみたいね」
その意味はすぐに分かった。
俺とアマミヤが触れようとしたとき。
「ゲホッ!」
俺は血の気が引いた。アマミヤはその場で吐血した。俺の服にもその血は付着したのだが、その血の量は明らかに異常だった。
「アリシア!」
そう呼びかけて呼んでみたものの、アリシアはガープと戦闘をしていた。それもガープの方が念波動の数値は上――。当然苦戦を強いられている。
「やっぱり……。駄目なのね。あの子達を助けなきゃいけない……。だから帝国に歯向かうものは……」
アマミヤは血を吐きながら、小太刀を杖に立ち上がろうとしていた。
しかし、そんな弱り切った体で立てるはずもない。腰を上げたと同時に、アマミヤはバランスを崩して地面に倒れこんだ。
そんな折にミクちゃんと目があった。
「アマミヤさんが鍵を持ってるよ!」
アマミヤはその言葉にビクッと反応した。あの反応はミクちゃんの鍵をアマミヤが所有している可能性が非常に高い。
俺はアマミヤに駆け寄り、まずは腰辺りに触れた。
「あっ……。駄目」
そう言いながら俺の手を払いのけようとするが力は全く入っていない。それにさっき言っていたあの子達ってのも妙に引っかかる。
俺はアマミヤから鍵を取り出すと、ミクちゃんの方に走って行った。
途中――。マカロフ卿とガープが、「させるか!」と雄叫びに似た声を放ちながら向かってきたが、レンさんがそれを食い止めた。
何とマカロフ卿もガープも氷漬けになったのだ。
「魔眼ちゅうのは凄いな。あらゆる属性のスキルを1ずつ使えるらしいわ。これは見ての氷や。数十秒止めたらいけるやろ!」
アリシアも唖然としていたが、一瞬で状況を把握して俺の方に向かって走って来た。アリシアは一瞬のうちにアリスの氷を溶かし、俺はミクちゃんの手と足の錠を外した。
「戦う必要ない! その姉ちゃん連れて
レンさんの指示は俺が考えていたものと全く同じだった。
アリスは戸惑いながらもミクちゃんに引っ張られていた。
そして、アマミヤのところへ、俺、ミクちゃん、アリシア、アリス、レンさんが集まり、アマミヤごと
着いた場所はケトル島の海岸だ。
「何で私だけ……」
アマミヤは少量の血を吐きながらもまだ喋ろうとしていた。
「無理するな。ミクちゃんさっそくで悪いが
「はい。任せて下さい」
ミクちゃんは懸命にアマミヤに対して
「ど――。どうなっているの?」
「俺の魔眼で視たら分かったんやけど、この姉ちゃん――。心臓に黒いモヤみたいなんがかかっとるわ」
「人間なのに魔眼って珍しいですね。そのモヤは恐らく呪いだと思います」
「呪い?」
アリスの回答に俺とミクちゃんは同時に反応した。
「はい。この女性の方は、何らかのスキルで縛られていて、何らかの条件に引っかかると、心臓に損傷が与えられるようです」
一体どういうスキルだよ。まあまあチートスキルじゃねえか。クソ――。呪いとなると厄介だぞ。
「
「そうですね。残念ながら」
ミクちゃんはそう言って肩を落とした。
「なら、
俺がアリスの方を向くとアリスは首を横に振った。
「どうしましょう」
アリシアがそう呟くと、レンさんが不思議そうな顔をしていた。
「どうしたレンさん?」
「いやちゃいますやん。普通に
すると、俺もアリシアもポンと手を叩く。そうだそうだ。アリシアにはどんなものでも、スキル効果を無効化にするんだから、アマミヤの呪いもスキルの可能性が高い。と――。言うことは無効化にできる!
「レンさん天才!」
「いや、何で気付けへんねん。意外とテンぱったりするもんなんですね。この世界ではスキルという概念で出来るとんやから、呪いっていうニュアンスやけど正体はスキルでしょ? じゃあその
そのレンさんの発言に、アマミヤは涙を浮かべていた。彼女が何を考えているのか分かる。期待と不安と安堵が同時に押し寄せているんだ。
俺がアリシアに向かってしゃくると、アリシアはコクリと頷き、アマミヤの右胸にそっと手を置いた。
アリシアの右手から放たれる神々しい光――。それは反して、アマミヤの胸から禍々しい邪気のようなものが飛び出して暴れている。悪魔のような叫び声が鼓膜の奥まで響くようだ。耳栓しているにこれは――。
案の定――。耳栓スキルを持っているが、反対に異常聴覚を持つアリシアとアリスは辛そうだった。
悪魔――。もしかしてマーズベルにサインを送ったのはアマミヤだったのか!?
しばらくすると、アマミヤの顔色は元通りに戻って来た。先程の邪気のようなものも無い。
「成功したのか?」
「はい。彼女に施されていたスキルは無効化しました」
「よっしゃあああ!」
俺は久々に大いに喜んだ。それは大型案件の新規契約の獲得時の比ではない。
周りを見ると、ミクちゃんとアリスは泣いていて。アリシアとレンさんは柔らかい表情を浮かべていた。
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