第126話 騒動Ⅶ
「マカロフ卿こっちは終わったわよ。お蔭さまで私のMPは残り僅かね」
「そのスキルがあれば対個人戦は無敵なんじゃないか? ナリユキ・タテワキにも勝てそうだ」
「そうなの? まあいいわ。残りのあの日本人は任せたわ」
「何だ知っていたのか。それにしても仕事が早いな」
「そうかしら? 長期戦になりそうな相手は先手必勝するほうが手っ取り早いのよ」
ちょっと待って? どういう事? 何でアマミヤさんがあんな隙だらけで、マカロフ卿と話しているの?
私は
クレーターから抜けだして私は絶望した。
アリスちゃんが凍っている……。
全身の力が抜けて私の活力という活力は抜けきってしまった。なんで――。
「メンタルブレイクってやつだな」
「2人もやられてしまったら当然の事ね」
「2人? 他にもいるのか?」
「ええ。お蔭で本当にへとへとなの。他の人間が
「確かにそうだな。まあそこは転生者補正ってやつだろうさ」
ここで戦わないといけないのに、私は全身の力が入らなかった――。手と足、そして先程のダメージで一旦自動消滅した
「ほら、見ろ。完全に戦意喪失しているようだ。お嬢様よ良く聞け。大人しく捕まれ」
「大人しく言うことを聞けば酷い仕打ちをするような部屋には連れて行かないわ」
そうか。ここで私が捕まればアードルハイム帝国の拷問部屋に連れていかれることになるのか――。でも――。どう考えてもこの2人を相手にして勝つ方法が見当たらない。ここで、アリスちゃんの氷を持って、
「大人しく言う事を聞けば、アリスちゃんとノア君を元通りにしてくれるの?」
「そんな訳ないでしょ。特にあの少年を元に戻したら脅威になるじゃない」
「あの少年ってあれか? 緑色の髪をした奴か?」
「そうよ。マーズベルに行った時にいたの?」
「ああ。念波動の数値は5,200だ」
「――。冗談キツイわ」
「ナリユキ・タテワキも同じ数字だったな」
「
「知っているのか?」
「ええ。地球にいたときの知り合いというか――。先輩だったから」
先輩? 本当にナリユキさんとこの女性はどういう関係なのだろうか?
「成程な。さてお嬢様。ラストチャンスだ。大人しく捕まれ」
私が捕まれば計画は大狂いのなるのではないか? それだけが心配だった。
ふと、見上げて視界に入ったマカロフ卿の顔――。彼の瞳はどこか悲しさを持ち合わせていた。
そして思う。彼は悪い人じゃないのかもしれない。
私は不思議と両手を差し出していた。これは意識してではない。無意識のうちだった。
「あら。案外素直なのね。どういう風の吹きまわしかしら」
アマミヤさんはそう言いながら私に手枷と足枷をした。これで私はもう何も抵抗することはできない。この手枷と足枷を外す方法は、自力で何とかするか、無難に鍵を探すかの二択になる。
「そんなことはいいだろう。お嬢様も馬鹿ではない。なにせナリユキ・タテワキの側近だからな。とは言っても俺からすればまだまだ甘ちゃんだがな」
「元軍人が言うと皆がひよっ子に見えてしまうわ。いずれにしても連れて行きましょう。裏ルートからでいいはね?」
「そうだな」
そう言って私とアリスちゃんは馬車に乗せられて運ばれることになった。
そして気になったのは裏ルートという言葉。一体何を考えているのだろう。じゃない! 1つ肝心な事を聞いていなかった!
「少し聞きたいんだけど、ティラトンのbarを襲ったのは?」
「貴女が気にする必要はないわ。と言っても貴女にはもうスキルを発動することができないから、何もすることができないんだけど」
まあそうだよね。教えてくれないよね。
「ラングドールさんはどうなるの?」
「彼は大方死刑ね。貴女はあくまで転生者。彼はこっちの世界の人間。元々干渉することが無い次元から来た私達が、彼の命を気にかける意味なんてないのよ。所詮他人の命なのだから、今は自分の命を大切にしなさい」
言っていることが意味が分かるようで分からない。自分の命を大切にしなさいなんて、どういう意図があってそんな事を言うのだろう。マカロフ卿もアマミヤさんも一体何を企んでいるのだろう。考えれば考えるほど沼になりそうだ。
「ラングドールが死刑って聞いて驚かないんだな」
「予測はできていたからね。それに私の印象では彼は死を恐れていない。やれること全力でやった。例え死んでも誰か繋いでくれる。そう考えているような気がするから」
「凄いわね。貴方今いくつ?」
「22だよ」
「よく見ているわね。肝心なところで鈍感な
その言葉にふと疑問を抱く。私の印象だとなりゆき君は凄く優しくて気配りができて、尚且つ腰が適度に低い謙虚な男性だ。私とアマミヤさんの印象に大きなズレが生じているだけだろうか。
いや……。この人は私が知らないなりゆき君を知っている。そう考えただけで知りたいという欲と、嫉妬が半々ほどの割合で沸々と込み上げてきた。
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