第123話 騒動Ⅳ

 私はレンさん達と別れた後は、ティラトンというbarでラングドールさんと落ち合うことになった。今日はランチは休業らしいので、他の人の目を気にせずお話することができる。


「レンさん達と会ったようですね」


「ええ」


「彼等は上手くやっていましたか?」


「やっていると思いますよ。ただ、解放するのはやはり手こずっている様子でしたね」


「そうでしたか。やはり行き当たりばったりな作戦は良くないですね」


 ラングドールさんはそう言いながら顔をしかめていた。


「何にせよ時間があまりありません。そう――」


 バンっ!


 ラングドールさんがそう話している時に、お店の扉が破壊された。


 前の看板には閉店中の札があるのにも関わらず、その札とは関係なしの強引な手だ。


 ゾロゾロと帝国兵が数十人入って来るなり、花道をつくると何者かがコツコツと足音を立てながらゆっくりとお店に入って来た。


「ここが反乱軍のアジトね。そして貴方は、帝国軍第5騎士団。騎士団長ヴェルナー・リベリア・ラングドールでもあり、反乱軍の副団長でもあるみたいね」


 そう言って入って女性だった。長い黒髪を後ろで束ねたポニーテールの女性。白くて綺麗な肌はまるで雪のよう。ぱっちりとした二重と、凛々しさのある釣り目の彼女は、和風美人と呼ぶに相応しく、品のある美しい女性だった。同じ女性の私でもうっとりしてしまう――。そんな女性だ。


 そんな女性が鎧を着ており、ただならぬオーラを放っているのだから、和のジャンヌ・ダルクと言える。




■名前:ミユキ・アマミヤ

■性別:♂

■種族:人族

■称号:氷の女王

■勲章:☆☆

■MP:25,000,000

■強さ又は危険度:S


■パッシブスキル

精神作用無効Ⅴ:あらゆる精神的ダメージを無効にする。

不眠Ⅴ:睡眠をとらずに活動することができる。

斬撃無効Ⅴ:あらゆる斬撃攻撃を無効化する。

凍結フリーズ:対象者を一時的に氷漬けにして、20秒間動きを止めることができる。

氷耐性Ⅴ:氷属性の攻撃を95%カットする。

状態異常無効Ⅴ:状態異常に関するあらゆる現象が無効となる。

鑑定士Ⅴ:対象者のプロフィールやスキルを全て視ることができる。

自動回復Ⅴ:体力が減少する度に自動回復を行う。回復速度は状況により異なる。

究極の阻害者アルティメット・ジャマー:アクティブスキル、鑑定士の効果を完全に無効化する。

排除リジェクト:対象者にダメージを与えながら吹き飛ばすことができる。


■アクティブスキル

悪の破壊光アビス・ディストラクション:巨大で邪悪なエネルギー光を放つ。

身体向上アップ・バースト:自身の身体能力を向上させる。尚、所有者の実力によって上昇率は異なる。

氷の壁アイス・ウォール:氷の壁を出現させることができる。

氷河の樹グレイシア・ツリー:巨大な氷の樹を出現させることができる。

雹剣雨ヘイル・レイン:半径1km以内に、剣状にした雹を雨のように降らせることできる。

猛吹雪の吐息ブリザード・ブレス:猛吹雪の吐息を吐き出すことができる。

恵みの雨グレース・レイン:半径50km以内に雨を降らせることできる。雨にかかった者は体力が50%回復し、邪悪な心を持っていた場合、その邪悪な心を浄化することができる。


■ユニークスキル:完全なる運命パーフェクト・ディスティニー:物事をプラスの方向に変えることができる。


■アルティメットスキル:絶対零度アブソリュート・アイス:如何なるスキルも通用しない氷で対象者を必ず閉じ込める。




 この人日本人の転生者だ。氷属性の中心のスキルを持っているなんて珍しい。


「やはり私の情報も流されていたか。まさか君がここに来るんてね。帝国軍第2騎士団。騎士団長ミユキ・アマミヤ」


「私は冷酷にこなせるから適任なのよ。こっちに来てから心は冷え切っているもの」


 このアマミヤさんが冷徹と言われている第2騎士団長? てっきり男の殺し屋だと思っていた。


「私がそう易々と捕まると思っているのか?」


「逃げたければ逃げるといい。しかし私は何処までも追いかけるわ。任務をこなすためならどんな手段も使う」


 すると、ラングドールさんは剣を抜いてアマミヤさんに斬りかかかった。


「ラングドールさん! その人に剣術は効きません! 斬撃無効のスキルがついています!」


「何!?」


 ラングドールさんは慌てて剣を振り下ろすのを止めた。一方はアマミヤさんは驚いているようだった。それは至極当然の事だろう。ステータスが弱く、鑑定士Ⅲのステータス人間に何故スキルがバレたんだということだ。


究極の阻害者アルティメット・ジャマーで見えない筈だけど見えているのね。ということは、今見えている貴女のスキルは出鱈目なのね。この国にそんなスキルを持った人間はいないから、貴女達が報告を受けた第3騎士団の支部基地を破壊した3人組ね。手間が省けたわ」


「まさか一瞬でそこまで考察をされるとは」


「見くびらないで。歴は浅いけど同じ騎士団長よ。少し考えれば分かることだわ」


「それもそうだ」


 ラングドールさんがそう言った後、部下の帝国兵達に自前の小太刀を向けた。


「貴方達、隠し扉を探しなさい」


「はっ!」


 そう帝国兵が返事をしていたので、私達は帝国兵達の前に立ち塞がった。


「残念だけど、私達がいる限りはここは通れないよ。通させはしない」


「ほう。いい女だな。まあ俺達は優しいからゆっくり可愛がってあげるさ」


 1人の帝国兵がそう言うと、他の帝国兵もニヤニニヤとやらしい笑みを見せていた。


「私に任せて」


「はい」


「はいよ」


 私がそう言うと、ノア君とアリスちゃんは各々返事をしてくれた。


「舐めるな!」


 そう襲い掛かって来た帝国兵達。私は林のように静かに構えて呼吸を整えた後。


「風林一閃」


 風のように素早く放つ居合斬りを繰り出して、数十人の帝国兵を一斉に薙ぎ払った。


 すると、アマミヤさんが氷の壁を出現させて、吹き飛んでいく帝国兵を食い止めた。


「流石に歯が立たないわね」


 そう吐き捨てた言葉は、自分の部下を何とも思っていないような冷たい言葉だった。

 

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