第120話 密会Ⅱ

 あれからナリユキさんから来た後日。俺達はべりーちゃん達と、帝都の中心部から離れたテラス席があるカフェで落ち合うことになった。正直なところネットもあるわけやないのに、よくこんな場所を見つけたもんや。


 依頼側と依頼された側での密会。まるで怪しい取引をしているみたいで少しソワソワする。


 怪しい仮面を付けた3人組言うてたけど、俺達の前では素顔を晒しているべりーちゃんやった。うん。めちゃくちゃ可愛い。多分、俺は会う度に可愛いって言うと思うわ。


 もう2人は知らんけど、緑色の髪をした少年は、ただならぬオーラを感じる。それこそ今、この国にいる人間で怒らせたら怖い人間NO1とちゃうやろうか? 一見ただの子供やけど、秘めてる力はマカロフ卿よりやばい。ちょっと念波動の数値が気になるな。


 そんで、もう1人は人魚姫マーメイドの少女やった。この子もまためちゃくちゃ可愛い。べりーちゃんがグラビアアイドルやったら、このアリスちゃんって女の子は間違いなくアイドルやな。それでも人魚姫マーメイドの姫らしいから、秘めてる力は凄まじいと思う。スキルの名前だけやと効果は良く分からんけど、俺よりか強い可能性も全然ある。


 全く――。化物バケモンばっかやな。


「急に呼び出して申し訳ございません。 転移テレポートができると言えど、リスクを冒してまでこんなところに――。こちらの2人は、アリスとノアです。よろしくお願いします」


 アリスちゃんと、緑髪の少年のノアはそう言って頭を下げてくれた。こっちも2人は俺達の事知らへんから一通り自己紹介を済ませて頭を下げた。


 べりーちゃんはそう言って深々と詫びてきた。いや、実際のところずっと牢屋にいてる必要も無いしな。つか、普通ならこのままトンズラこいてもいいんや。そう普通なら。


 でも俺は偽らんって心のなかに決めたから、自分が少しでも好いた人間と、信頼関係構築中やのに放り出すわけにはいかへん。


「いや、まあ普通やったら逃げるねんけど、そんなもんは漢とちゃうしな」


「そう言って頂けて何よりです。カメラの調子はどうですか?」


「めちゃ性能ええわ。フル稼働してるのにまだ一本目やもん。現段階でも有力な情報は結構入手できたはずやわ。でもまだ一ヶ月経ってへんからな」


「まだ半月以上ありますもんね。正直なところ一度戻ってナリユキさんに今のカメラを渡してもいいと思うのです。それを行えばナリユキさんもより具体的な作戦を練ることができると思うんです」


「確かにそれはええアイデアやな。現段階で練っている作戦とかはあるの?」


「あります。しかもナリユキさんは勝ち筋が見えているらしいですね」


「ホンマかいな。それは末恐ろしい」


「どれだけ情報を集めても最終的にはこの作戦になるだろうって言っていますからね」


「そうなんか――。なあネオンちゃん来る途中に来た島には 転移テレポートで行けそうか?」


「流石にそれは無理ですね。それこそアリシア様レベルでないと――」


 ネオンちゃんはそう申し訳なさそうに言ってた。まあ、そう簡単に 転移テレポートで行き来を繰り返すほどイージーなゲームやないわな。


「なら従来通りの作戦ですね。私達3人とレンさん達4人は別々の行動をとるほうが絶対にいいでしょう。そのうえでレンさん達が捕まっている人々の解放。そして私達は、レンさんの 偽装フェイクで顔とステータスを誤魔化して潜入する。そんな感じでどうでしょう?」


「俺は問題無いけど」


 俺がそう言って、アズサ、ノーディルス、ネオンちゃんを見ると、「問題ない」の一言を得た。


「べりーちゃんってやっぱりしっかりしてるな~。私と比べ物にならへん」


「同じ女性として憧れます」


 アズサとネオンちゃんがそう言うたから、べりーちゃんはこれでもかと言いたくなるくらい喜んでた。んで、照れてた。


「可愛いお二人にそう言ってもらえるの嬉しいです」


 そう言えばそうや。べりーちゃんはゲームも上手いし、恋愛相談コーナーでは女性目線も男性目線も冷静に分析していたから、男女ともに人気やったな。


 まあ、このなかで一番可愛いのは明らかにべりーちゃんなんやけどな。


「じゃあレン。3人に偽装フェイクをかけてやれ」


「おう」


 俺は席を立ってまずはべりーちゃんの後ろに立って。めちゃくちゃ緊張する。


「俺は触れたものに頭に思い浮かべたモノに変えることができるスキルや。やからべりーちゃんの首と、ステータスを変えるために、頭に触れなあかんねんけど大丈夫か?」


「勿論いいですよ。髪はかきあげたほうがいいですか?」


「そっちのがいいね。触れたものやから、髪の毛があると髪の毛にも顔ができることになる」


「それはそれで面白いですね」


 べりーちゃんはそう笑いながら髪の毛をかき上げてくれた。その瞬間、髪の毛の香りが俺の鼻を刺激した。そして、露わになった白いうなじは、造形美のような美しさと色気を放った。年上の俺が年下のべりーちゃんに色気を感じるとは思わんかった。だってエロいと色気は別物べつもんやん?


「レン。今、すんごいおもろい顔してるで」


「うるさいわ。ちょい黙っとけ。べりーちゃんいくで」


「はい」


 何やろ。ただ首元を触るだけにめちゃくちゃ緊張する。手汗をしっかり拭いてべりーちゃんの首元にそっと触れた。どうせ変えるんやったらもっと大人っぽくしよう。綺麗なお姉さんって感じで。


 そう思って触れて偽装フェイクが完了すると、アズサ、ネオンちゃん、アリスちゃんの反応は大興奮していた。触れられた本人は鏡を見るまで変化は分からへんから終始戸惑ってた。


 俺は俺でべりーちゃんの首に触れたことが大興奮すぎてっ……。うん――。語彙力無いです。


 感触が残った手をもう一度拭って、べりーちゃんの頭に手を置き偽装フェイクを発動。これで無事にステータスを誤魔化すことができた。


「アズサ。鑑定士」


「うん。今なら見えるし名前も適当になってる。適当言うても、ストロベリーをもじった名前やけど」


「え? 名前は何になったんですか?」


「ロトス・ベリーさんや。ちゃんと覚えておきな。自分の名前やのに、ミク・アサギなんて言うたら怪しまれるで」


「ありがとうございます。即興なのに可愛い名前貰って」


「ええんや。関西人は良い嘘も悪い嘘も得意なんや」


「うち関西人やけど、嘘下手くそやから適当な事言わんといて」


「めんど」


「小声でめんど言うたやろ今」


 アズサはそうやって眼光を飛ばしてくる。うん面倒やわ。


「レンさんのお名前はライアーですもんね。嘘ってことですか?」


「そのまんまやろ? でも覚えやすいから意外と気に入っているんや」


「そうなんですね」


 笑顔が眩しい。やっぱり天使や。


「んな次はアリスちゃんやな。バンバンいくで」


 俺はアリスちゃん、んでノアの2人を偽装フェイクした。これで3人も嘘まみれや。

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