第87話 協力要請Ⅰ
「一番左に座っているおっとりした口調の君が3,800。次に女の子なのに強気な君が3,900。リーダーかな? 金髪の君が4,500。黒髪のクールな君が4,200。どうかな?」
「当たってるわ。で、俺達はどないしたらええんや?」
俺が立って騎士団長を睨め付けると、意外にも冷静な表情のまま「いや、そうじゃない」と首を振った。
他の3人も思ってた反応とちゃうかったからきょとんとしてる様子やった。
「私は、アードルハイム帝国軍第5騎士団。騎士団長のヴェルナー・リベリア・ラングドール。念波動での強さは4,550。君よりちょっと強いくらいだ。今ここで戦えば、最低でも重傷になるだろう」
「さよか。で? 要件はそれだけとちゃうやろ?」
「まるで話が見えてこないな」
「協力をお願いしたいんだ。その前に1つだけ約束して欲しい。ここから先の話は他言無用だ」
「そんなん。要件分からへんのに条件飲むわけないやろ。冒険者って分かったんやろ? 当然依頼主には報告するからな」
「アードルハイム帝国に来たのは、当然依頼をこなす為に来たわけだよね? 今更アードルハイムに関連するクエストを出す人なんて珍しい。多かれ少なかれガープさんが言っていたマーズベル共和国のナリユキ・タテワキという人物だろう?」
「ノーコメントや。そもそもガープって誰やねん」
「ガープはアードルハイム帝国軍のアードルハイム帝国の最高戦力と名高い有名な魔族だ。少しは情報収集しておけ」
「――悪かったな」
「ナリユキ・タテワキは相当な手練れだと聞く。今、引っ搔き回している他国のマカロフ卿と、ガープさんより念波動の数値は上らしいからね。そもそもナリユキ・タテワキの側近の女性はガープさんと同等レベルだ。それにナリユキ・タテワキと同等の実力を持つ異次元なオーラを放つ子供もいたと聞く。これはチャンスだと思ったのだ。打倒皇帝の夢が」
――。今なんて言うた? 打倒皇帝言うたよな? めちゃくちゃ良質な情報やったよな? やったでナリユキさん!
「今、絶対言うたらアカン事言うたよな? それ俺が万が一言いふらしたら」
「私も君達も処刑だろうね」
コイツ――。ごっつ大きな厄介ごと
「何でそんな大事な事うちらに言うたんですか?」
「その前に君達の依頼人はナリユキ・タテワキかな?」
「ちゃう言うたら?」
「嘘だね。一番左の可愛いお嬢さんが、ナリユキ・タテワキの名前を出した時に、目が泳いでいたからね」
「――アンタに嘘がつかれへんことは分かった。で? どないしろと?」
「君達に打倒アードルハイム皇帝の反乱軍に加わってほしい。そして、アードルハイムでのクエストが終われば一旦マーズベル共和国に戻ってナリユキ・タテワキ達を増援として呼んでもらい、卑劣な事を散々犯してきたアードルハイム帝国軍に終止符を打つんだ」
「どうにも信じられへんな。正直言うとアードルハイム帝国の人間は、俺みたいに嘘つきばかりや。そんな人間の何を信じたらええねん」
するとラングドールはどっから出してきたんか分からへんけど、何かごそごそしてる思たら、リボルバー式の銃を出すなり、左手の上に置いた。
「信用してもらう為なら、手の1つくらいくれてあげるよ」
「え? ちょ!? 待ちぃや!」
「や――やめて下さい!」
「ん? 止めないよ?」
そう言ってラングドールはにっこりと微笑むと、引き金を一発引いた。
カチッ――と音がしただけで、弾は不発のようやった。
「この拳銃には弾が一発だけ入っている。あと5回撃てるなかでどれかが本物の弾で残りは空だ。返答が無いようであれば、引き続き、引き金を引くけどいいかな?」
そう言ってラングドールは、広げた手に思いっきり力を込めて拳銃を突きつけた。
「レン! 早よせなまた撃つで!?」
「レンさん!」
女性陣にそう言われて俺は大人しく「分かった。協力する」と言うてもた。
「ありがとう。では、まずアードルハイム帝国の勢力について教えないとね。そこの黒髪の君なら分かるんじゃなかな? 偽名だけどカイン君でいいのかな?」
「ああ、カインでいいさ。で、軍事力がどうなっているかだったな。俺が聞いた話だと、アードルハイム帝国の兵士は約100万にいて、そのなかの50万人ほどの兵士がこの帝都にいると聞く。そして、そのなかで騎士団は5つあり、1人あたり8万人の兵士が部下となる。残りの10万人は皇帝直属の配下だ」
「1人あたり8万人の部下? んなアホな」
「それは思わず目眩する人数やな」
「す――凄すぎます」
そら、驚かん奴はおれへんやろ。つうことは、この国にとったら、8万人の部下を統べるほどの人物が、アンデッドの発生で駆けつけて来たから、それほど異常な事態を起こしてしまったって話やな。
「大正解。で、その8万人の部下を持つ私と同等レベルのリーダーさんは、騎士団長レベルの戦力という事だ」
「リーダーって止めてくれへん?」
「名前教えてくれないでしょ?」
「教えるわけないやろ。今鑑定士で視える偽名で呼んだらええやん!」
「ライアー君ってかい?」
「そうや」
「嫌だよ」
――。このニコニコした顔は絶対引かへん奴や。
「分かった。で、自分は今どのくらい強いねん? 他の戦力はどないなっとるねん」
「自分? 私の事かな?」
「あ、そうや。すまんな分かりづらくて」
そうや、関西では自分って相手のを指す言葉が、他やったら自分は自身のこと指すから分かりづらいに決まっとるな。
「そうだね。この国で3番目の強さかな? 1番強いのはガープさんっていう魔族だよ。そう、騎士団唯一の魔族なのさ」
「魔族やのに、よう騎士団入れたな」
「まあ強いからね」
「でもそんな猛者ばかりおるのに何で反抗できへんねん」
「アードルハイム皇帝は物凄く強いスキルがあるんだ」
すると、凄い目をして間を置いた。俺達と対面で喋っているはずやのにまるで遠く見ているような――。どこか虚しさや悲しさをみせるそんな瞳やった。
「互いのルールを決めて、そのルールを破った者は、死ぬという恐ろしいスキルだ」
俺達4人は固まった。まさに独裁国家のトップを象徴するかのようなスキルやった――。
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