第27話 レイドラムとベリトの調査Ⅳ

 レイドラムとベリトの調査を開始してから、およそ一週間が経とうとしていた。レイドラムはよくブラックマーケットに姿を現すらしいのだが、如何せんそのブラックマーケットがどこにあるのか分からず苦労した。


 しかし、やっとの思いで見つけた。どうやらブラックマーケットに侵入するのは身分証明書が必要らしいのだ。となると、ランベリオンはブラックマーケットでは無く、本当にたまたまレイドラムを見つけたらしいので、相当幸運だったことがわかる。


 と、いうのも、こっちは私を含めて合計六人で動いているのにも関わらず、街中で遭遇することはまず無かったのだ。


 ブラックマーケットに侵入するために、レンファレンス王の力を借りて身分証明書を入手した。そしてこれまた王の力なのだが、顔も変えている。王とセバスチャン曰く、この国でも私の顔を知っている人は知っているらしい。なので、警戒されないためにはこの手段を取るのが最善と言えよう。外見ではレイドラムには絶対にバレない。何故ならば見た目は完全に二十代だからだ。


 ここ、ロームホルグと呼ばれる王都から少し離れた地区にある市場。その市場の路地裏にブラックマーケットにツ繋がる入り口がある。


 どうやら民家のレンガの壁に特殊なスキルが施されているらしい。


 時間をズラして二人一組と、三人一組で入ってもらう。既にハワードも含めて、二組は潜入しているので、あとは私だけだけだ。さて――。


 私は人がいないことを確認し、少しだけ窪みがあるレンガを情報の手順通りに触れていく。窪みがあるレンガは合計六か所。そのうちの五つを触れていく。再度私は人がいないことを確認する。そして、中央にある窪みに身分証を翳した。 


 一瞬何が起きたのか分からなかった。目の前に民家があったはずが、触れた途端薄暗い天気の林に訪れたのだ。条件を満たしたことで、別の場所へ飛ばす転移系のスキルらしい。


 先程、私がいた市場は雲一つない快晴であった。レンファレンス王国全土が晴れということは事前の情報で知っている。だとすると、ここのブラックマーケットは別の国も可能性も高い。ここまで空が淀んでいると、何やらよからぬ事が起きそうでもある。


 林と言っても迷う必要は全くない。20m先に見えるあれが恐らくブラックマーケットだろう。ローブで極力顔の露出を控えた人間が出入りしているのが分かる。


 中に入ると獣人や魔族もいた。彼等、彼女等も極力顔出しを控えているようだ。私も、それに順じローブに身を包むことにした。これならブラックマーケットに溶け込んでいるはずだ。しかし油断はできん。何せあのベリトという男もいる可能性が高いからな。


 それにしても、麻薬や大麻もそうだが、武器等も一般人では所有することを許可されていないものばかりだ。銃がいい例であろう。レンファレンス王国では、銃は一部の王国軍の兵士しか許可されていない。それに幼女、幼児なども売られている。はっきり言って胸糞悪い。その対象となっているのが、大抵獣人というのも悲しい事実である。そして、驚くべきなのは魔物の卵なんかも置かれている。一から育て上げてビーストテイマーにでもなるつもりだろうか。いずれにせよ、調査でなければ手っ取り早く取り締まりたいものだ。


 そう周りを見渡していたときだった。何気なく横切ったときに思わず二度見をしてしまった。ローブに身を包んでいたので気付くのが遅れた。左目に眼帯をしている、170cm前後の50前半の男。そうレイドラムだ――。念の為に鑑定士を使ってみたがやはり合っていた


 一旦距離を置いて他の人混みに紛れる。となると――。


 やはり、レイドラムの近くには私の部下達が張り付いていた。ハワードともう一人の若い新兵は話すフリをしてレイドラムを見張っている。


 そして、三人の組は飲み物を飲みながらレイドラムを見ている。三人は軽く会釈した。私にも気付いたようだ。


 レイドラムが紙袋を男に渡すと、男は金貨を10枚レイドラムに渡していた。そして、レイドラムその金貨を受け取ると歩き始めた。向かったのは路地裏だ。


 私はレイドラムが紙袋を渡した男を三人組の部下に任せて、私単独とハワードの組でレイドラムをつけた。レイドラムが路地裏を抜けたので、私とハワード達も奴を追う――。


「いない――」


「どこに行ったのでしょうか?」


 刹那――。ただならぬ悪寒が背筋を走った。


「貴様達は誰だ。レイドラムに付きまとう者達よ」


 後ろを振り返ると、私と同じ背丈くらいの、180cm前後の男が立っていた。顔をローブで隠しているために良く分からない。そして、鑑定士も役に立たず誰かを確認することができない。阻害者ジャマーのスキルでも有しているのだろうか。


「何の為にレイドラムをつけている答えろ」


「答える必要はないだろう」


 私は男に向けて掌を向けた。


「お前何者だ? 答えないと撃つぞ」


「そんな脅しが私に効くとでも思っているのか? 撃てるならば撃つといい」


「私は容赦しないぞ?」


「ごちゃごちゃ言っていないで撃つと良い」


「何だ撃たないのか」


 それもそうだろう。私はカーネル王国のギルドマスターであり、カーネル王の盾でもある。民間人かもしれない男に危害を加えることはできん。


「残念だ」


 男はそう呟くと男は私の目の前から姿を消した。


「や! やめろ!」


 ハワードの声が聞こえたので、後ろを振り返ると、新兵が押さえられ首元にナイフを突きつけていた。



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